JP2004043950A - 白色粉体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基体粉体上に無電解メッキ法により金属銀膜を形成した白色粉体において、該金属銀膜の形成前に、該基体粉体を酸性無機チタン酸塩含有水溶液で前処理したことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は白色粉体およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、明度(白色度)が極めて高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができ、製造工程も簡易で低コストを実現できる白色粉体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、これまでに金属あるいは非金属基体粉体上に無電解メッキ法を利用し金属銀膜を被覆させ、白色粉体あるいはイエロー色系顔料を製造する方法を発明してきた(例えば、特許文献1及び2参照。)。これら方法では、基体粉体が金属である場合はもちろんであるが、非金属である場合にも金属銀膜の下地層として、シリカ膜などの金属酸化物膜を被覆し、それらを被覆後に500〜650℃での焼成を施し、その後に金属銀膜を無電解メッキ法により被覆させてきた。しかし、上記方法では、金属銀膜を被覆させるための下地層であるシリカ膜などの金属酸化物膜の被覆操作が必要であるばかりでなく、それら被覆後の焼成作業が必要であり、かなり手間暇の要する方法であった。
【0003】
一方、これまでに基体粉体あるいは基材上に金属銀膜を被覆させる方法として、基体粉体あるいは基材上に金属銀膜を被覆させるための前処理として、塩化第一錫塩酸酸性溶液の使用(従来例1;例えば、特許文献3及び4参照。)、ニッケルおよび銅の下地層を無電解メッキ法により施す(従来例2;例えば、特許文献5参照。)ことにより、無電解メッキ法により金属銀膜を基体粉体あるいは基材上に直接被覆させることが出来るとしている。
しかしながら、上記従来例1では、前処理液として塩化第一錫を塩酸酸性水溶液に溶解させたものを使用しており、作業性や廃液処理に問題がある。また、上記従来例2の前処理方法では、本発明者らが考案してきたシリカ膜などの金属酸化物膜による下地層を被覆するよりもより複雑な下地層を形成させており、容易な前処理方法というには難がある。
【0004】
更に、前処理としてアルコキシチタニウムエステルを含む前処理液を基材上に塗布乾燥させることにより下地層を形成させ、その上に金属銀膜を無電解メッキ法により被覆させる方法(例えば、特許文献6参照。)が発明されているが、このような方法により下地層を基体粉体上に均一に施すためには、有機溶媒中に基体粉体を懸濁させ、その反応系中でチタニア下地層を形成させなければならないなど、下地層を形成させるための装置を防爆構造としなければならないなど、容易な前処理方法といえない問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−313823号公報
【特許文献2】
特開平11−012488号公報
【特許文献3】
特開2000−8174号公報
【特許文献4】
特開平2−173272号公報
【特許文献5】
特開平11−61424号公報
【特許文献6】
特開2001−40486号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、本発明者らが発明した金属銀膜被覆法による白色粉体の製造方法や、これまでに公開された金属銀膜被覆の前処理方法は、たとえ金属銀膜を平滑に施すことができ、結果として明度(白色度)の高い白色粉体を得ることができるとしても、一概には容易な前処理方法とは言えないものであった。
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、無電解メッキ法による金属銀膜被覆において、簡単で容易な前処理方法により、基体粒子上に直接に金属銀膜を平滑に被覆することができ、明度(白色度)の高い白色粉体およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、鋭意研究を行った結果、酸性無機チタン酸塩含有水溶液中に基体粉体を浸漬させることにより、シリカ膜などの金属酸化物膜などの下地層を必要とせず、基体粉体上に直接無電解メッキ法による金属銀膜被覆ができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の白色粉体およびその製造方法は、以下の通りである。
【0008】
(1) 基体粉体上に無電解メッキ法により金属銀膜を形成する白色粉体の製造方法において、該金属銀膜の形成前に、該基体粉体を酸性無機チタン酸塩含有水溶液で前処理することを特徴とする白色粉体の製造方法。
(2) 前記基体粉体の前処理に用いる酸性無機チタン酸塩含有水溶液中の酸化チタンモル濃度が、基体粉体1gに対して7.70×10−5〜3.50×10−4モル/リットルとすることを特徴とする上記(1)に記載の白色粉体の製造方法。
(3) 前記基体粉体を前処理する前の酸性無機チタン酸塩含有水溶液が、酸性無機チタン酸塩含有溶液の原液を重量比で3〜10倍に希釈されたものであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の白色粉体の製造方法。
(4) 前記基体粉体の酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理を、該基体粉体を酸性無機チタン酸塩含有水溶液に浸漬することによって行うことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
(5) 前記基体粉体の酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理を、攪拌されている基体粉体懸濁液中に酸性無機チタン酸塩含有水溶液を投入し、投入後攪拌を続けることによって行うことを特徴とする上記(4)に記載の白色粉体の製造方法。
(6) 前記酸性無機チタン酸塩含有水溶液投入後の攪拌の継続を20〜60分間行うことを特徴とする上記(5)に記載の白色粉体の製造方法。
(7) 前記酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理の温度を、20〜30℃とすることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法によって製造された白色粉体。
(9) 平均粒径が0.05〜500μmであることを特徴とする上記(8)に記載の白色粉体。
【0009】
本発明の白色粉体およびその製造方法は、基体粉体上の金属銀膜被覆において、簡単で容易な前処理方法により、基体粉体上に直接に金属銀膜を平滑に被覆することができ、明度(白色度)の高い白色粉体およびその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明の白色粉体およびその製造方法が上記のような効果を発現する作用機構としては、基体粉体は酸性無機チタン酸塩含有水溶液中に浸漬される前処理により、その表面が活性化されるようである。このように表面が活性化されたことで、還元析出した銀微粒子は、基体粉体表面上に製膜されやすく(付着しやすく)なる。
また、基体粉体表面が活性化されたことにより、製膜された銀粒子が基体粉体表面をより緻密、平滑に被覆するので、結果として銀被覆した粉体の明度L*が前処理を施さなかった場合よりも高くなることが、推測の域を出ないが、考えられる。
上記のようにして得られた本発明の白色粉体は、基体として磁性体を活用すると、基体粒子の特性(例えば、磁気特性)を高レベルに保持した機能性粉体、例えば、1成分系現像方式でも優れた複合した機能を果たし得る磁性トナーや、優れた磁気特性を発揮することができる。
また、明度(白色度)が高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができる白色粉体を提供できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
上記のように、本発明の白色粉体およびその製造方法は、酸性無機チタン酸塩含有水溶液中に基体粉体を浸漬させ置換洗浄を行った後、無電解メッキ法により金属銀膜被覆操作を行うことにより、シリカ膜などの金属酸化物膜などの下地層を必要とせず、基体粉体上に直接に金属銀膜被覆した、明度(白色度)の高い白色粉体が得られることが特徴である。
また、本発明の製造方法により得られた白色粉体は、平均粒径が0.05〜500μmであることが好ましく、より好ましくは0.10〜50μmである。
【0011】
以下に、本発明の好ましい態様を説明する。
本発明において用いられる酸性無機チタン酸塩含有水溶液は、硫酸チタン(IV)溶液、塩化チタン(IV)溶液、または塩化チタン(III)溶液等から容易に調整することができる。また、これらの溶液から調整した酸性無機チタン酸塩含有水溶液のpHは、5以下の酸性を示す。
本発明においては、上記の酸性無機チタン酸塩を含有する原液を3〜10倍に希釈して酸性無機チタン酸塩含有水溶液を調整することが好ましい。
【0012】
本発明の白色粉体およびその製造方法における基体粉体の前処理である水溶液処理において、基体粉体の酸性無機チタン酸塩含有水溶液中の浸漬時間は、20〜60分の範囲が好ましく、より好ましくは20〜30分の範囲である。浸漬時間が20分に満たない場合には、酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理が十分に行われず、以後の金属銀膜被覆操作を行っても目的の明度(白色度)を有する白色系磁性粉体を得ることが出来ない場合がある。また、浸漬時間が60分を超えると、前処理時間が金属銀膜被覆操作よりも著しく長くなり、容易な前処理操作との趣旨から外れてしまう。
【0013】
次に、基体粉体を浸漬させる酸性無機チタン酸塩含有水溶液中の酸化チタンモル濃度は、基体粉体1グラムに対しての酸化チタンモル濃度が7.70×10−5〜3.50×10−4モル/リットルの範囲が好ましい。
酸化チタンモル濃度が7.70×10−5よりも低い場合には、基体粉体に対しての酸性無機チタン酸塩が僅少のために前処理が不十分であり、以後の金属銀膜被覆操作を行っても、目的の明度(白色度)を有する白色粉体を得ることが出来ない場合がある。一方、基体粉体1グラムに対しての酸化チタンモル濃度が3.50×10−4モル/リットルを超える場合には、浸漬液中のチタンと塩を形成する陰イオン(例えば、硫酸イオンや塩素イオン等)の濃度が過剰となり、酸性無機チタン酸塩による反応を阻害してしまい、逆に前処理層が十分に行われず、目的の明度(白色度)を有する白色粉体を得ることが出来ない場合がある。
【0014】
また、酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理の温度は、20〜30℃の範囲が好ましく、20℃よりも低い場合には、酸性無機チタン酸塩による反応が進まずに前処理の役目を果たさず、逆に前処理の温度が30℃を超える場合には、酸性無機チタン酸塩による反応が非常に早く進行してしまい、遊離の酸化チタン粒子が生成してしまい前処理の役目を果たすことができない場合がある。
【0015】
本発明の白色粉体の製造において、前記酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理した基体粒子の表面に被覆膜金属銀を製膜するためには、金属銀を析出できる溶液反応であれば特に限定されないが、基体粒子を分散した銀液に還元液を添加することによって行うものが好ましい。この銀液としては特に限定されないが、硝酸銀水溶液中の銀イオンをアンモニアで錯イオン化したものであることが好ましい。また、還元液としては特に限定されないが、水にブドウ糖と酒石酸とアルコールを溶解させたものであることが好ましい。
【0016】
次に本発明の白色粉体の製造方法における前記前処理した基体粒子表面に金属銀被覆膜を製膜する一例を説明する。水1000mlにブドウ糖20〜150gと酒石酸1.5〜14gを80〜100℃のウォーターバス中で湯浴させながら順次溶解し10分以上保持する。これを室温まで冷却したあとアルコール50〜2000mlを添加する。この際のアルコール添加量が50mlより少ないと還元反応が起こらないことがあり、2000mlより多すぎると銀を還元するのに必要なブドウ糖および酒石酸イオンの濃度を低くして反応が起こらないことがある。得られた混合物を還元液とする。アルコールはメタノールでもエタノールでも両者の混合物でも使用可能である。
【0017】
次に、硝酸銀100gにアンモニア水溶液(28%)を硝酸銀が完全に溶解するまで加え、その後水1〜4リットルを添加する。この際加える水の量が少ないとpHが下がって銀が再び錯体として沈殿することがあり、多すぎると銀の濃度が下がるため還元液と混ぜたときに充分な厚さの被膜を得られないことがある。このとき硝酸銀を先に水に溶解し、その後でアンモニア水を添加してもよい。次に0.5〜2規定の水酸化ナトリウム水溶液1〜4リットルを添加すると黒あるいは黒褐色の錯体が沈殿する。この黒色の沈殿が無くなるまで十分に撹拌しながらアンモニア水溶液(28%)を添加して銀液とする。
【0018】
上記により得られた銀液に後述の基体粒子を加える。その添加量は形成する金属銀被覆膜の厚みおよび基体粒子の色や粒径に依存するので、硝酸銀100gに対し5〜500gが適当である。基体粒子の量が少なすぎると金属銀被覆膜が厚くなりすぎて基体粒子の特性を小さくしてしまう。逆に多すぎると金属銀被覆膜が薄くなりすぎて暗灰色の粉体となってしまう。
【0019】
基体粒子を添加後十分に撹拌するが、できだけ高速で行い、あるいは超音波洗浄機などを用いて十分に分散させるほうが望ましい。十分、分散させた後、撹拌および超音波印加を続けながら銀液と同容量の程度の還元液を添加し還元反応が終るまで1〜30分、好ましくは3〜15分撹拌し、基体粒子の表面に金属銀被覆膜を形成させる。この際の反応時間が1分より短いと十分な被覆膜が得られないことがあり、30分ぐらい経過すると金属銀の析出が完了してしまう。固形分を濾過し、洗浄を繰返して十分にアンモニアイオンを除去する。この際十分にアンモニアイオンを取除かなければアンモニアと銀が反応し金属銀被覆膜の色の悪化をまねくことがある。次にこの濾過ケーキを真空乾燥し白色粉体を得る。
【0020】
本発明の白色粉体に用いられる基体粒子は、特に限定されず、金属を含む無機物でも、有機物でもよく磁性体、誘電体、導電体および絶縁体等でもよい。基体が金属の場合、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、その磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるものが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁性を有するものであるときには、強磁性合金を使用することが好ましい。また、その粉体の基体が金属化合物の場合には、その代表的なものとして前記した金属の酸化物が挙げられるが、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素等の外、カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物でも良い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩などを挙げることができる。
【0021】
さらに、基体粒子として、金属以外では、半金属、非金属の化合物、特に酸化物、炭化物、窒化物であり、シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。その他の無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、合成雲母、白雲母、など雲母類、カオリン等を用いることができる。
【0022】
有機物としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。但し、樹脂粒子を基体とする場合、乾燥における加熱温度は樹脂の融点以下でなければならない。
【0023】
基体の形状としては、球体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
【0024】
また、基体粒子の比重としては、0.1〜10.5の範囲のものが用いられるが、得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合には、流動性、浮遊性の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2.8、更に、好ましくは0.5〜1.8の範囲である。得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合、基体の比重が0.1未満では液体中の浮力が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があり、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊させるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、もちろん本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(原料基体粉体の前処理)
(1)基体粉体の前処理
基体粉体として18gのマグネタイト粉末(平均粒径0.7μm、比表面積2.06m2/g)を使用した。この基体粉体を、360グラムのイオン交換水を入れた1000ミリリットルビーカーに投入し、攪拌速度700rpmで攪拌した。
ここに、硫酸チタン(IV)溶液(関東化学社製、Ti(SO4)2 24wt%)0.65グラムをイオン交換水3.78グラムで混合希釈した硫酸チタン(IV)水溶液を瞬時に添加した。この前処理液中の酸化チタンモル濃度は、基体粉体1グラムに対して酸化チタンモル濃度1.00×10−4モル/リットルであった。
添加後、同じ攪拌速度にて30分攪拌を続け、所定時間経過後、イオン交換水溶液500グラムにて置換洗浄を3回行った。このようにして、硫酸チタン(IV)水溶液にて前処理された基体粉体スラリーを得た。
【0026】
(2)銀液の調製
イオン交換水720グラムに硝酸銀30.0グラム(関東化学社製試薬)を溶解させた後、アンモニア水21グラム(関東化学社製試薬一級)、アルカリ水375グラム(水酸化ナトリウム(関東化学社製試薬一級)15.0グラムをイオン交換水360グラムに溶解させたもの)、アンモニア水21グラム(関東化学社製試薬一級)の順に添加し、銀イオンを完全に銀アンモニア錯イオンの形にした。
【0027】
(3)還元液の調製
銀の無電解メッキに用いる還元剤としては、グルコースを使用した。この還元液の調整は以下のようにして行った。
まず、イオン交換水500グラムにグルコース(関東化学社製試薬一級)45.0グラムと酒石酸(関東化学社製試薬一級)5.0グラムを溶解し、加熱し、5分間沸騰させた。5分間の沸騰後、十分に冷却させた後、蒸発減量分のイオン交換水とアルコール(関東化学社製試薬一級)80グラムを添加した。上記薬品を投入後、室温にて一晩熟成した。
【0028】
(4)金属銀膜の被覆
前記(2)で得られた銀液に、前記(1)で前処理を行った基体粉体スラリーを投入し、800rpmにて攪拌を行った。攪拌開始5分経過した後、前記(3)で調製した還元液の360グラムを約20秒で、基体粉体懸濁銀液に投入した。還元液投入後、さらに10〜30分の間攪拌を続け、銀の析出反応を続行させた。
所定時間経過後、反応懸濁液を静置沈降させて粉体と反応液を分離させた後、沈降粉体にイオン交換水800グラムを投入して置換洗浄を5回繰り返し、所定回数の置換洗浄終了後、120℃に加温した恒温乾燥機内にて、金属銀膜被覆粉体スラリーを乾燥させ、平均粒径9.5μmの金属銀膜被覆粉体Aを得た。得られた金属銀膜被覆粉体Aを分光光度計(日本分光社製Ubest550)にて分光特性を測定した後に色彩計算を行い、CIE(1976)L*a*b*表色系で表示した。得られた金属銀膜被覆粉体AのCIE(1976) L*a*b*表色系は、L*=68.2、a*=−0.7、b*=4.4と非常に明度(白色度)の高い白色磁性粉であった。テスト結果を表1に示す。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1の前処理液中の硫酸チタン(IV)濃度を、硫酸チタン(IV)溶液(関東化学社製、Ti(SO4)2 24wt%)1.30グラムをイオン交換水7.56グラムで混合希釈した硫酸チタン(IV)水溶液に変えた。この前処理液中の硫酸チタン(IV)モル濃度は、基体粉体1グラムに対して酸化チタンモル濃度2.00×10−4モル/リットルであった。
上記前処理液中の硫酸チタン(IV)濃度を変えた以外は、実施例1と同じ操作を行い、平均粒径9.6μmの金属銀膜被覆粉体Bを得た。得られた金属銀膜被覆粉体BのCIE(1976) L*a*b*表色系は、L*=68.1、a*=−0.4、b*=5.3と非常に明度(白色度)の高い白色磁性粉であった。テスト結果を表1に示す。
【0030】
〔比較例1〕
実施例1の前処理液中に硫酸チタン(IV)溶液を加えなかった以外は、実施例1と同じ操作にて前処理を行った。この前処理液中の酸化チタンモル濃度は、基体粉体1グラムに対して酸化チタンモル濃度0.00モル/リットルであった。以上の前処理液中の硫酸チタン(IV)濃度を変えた以外は、実施例1と同じ操作を行い、平均粒径4.0μmの金属銀膜被覆粉体Cを得た。得られた金属銀膜被覆粉体CのCIE(1976) L*a*b*表色系は、L*=56.2、a*=−0.5、b*=−1.7と明度が上がらず、白色度も低い、暗灰色の磁性粉であった。テスト結果を表1に示す。
【0031】
〔比較例2〕
(原料基体粉体の前処理)
(1)基体粉体の前処理
基体粉体として18gのマグネタイト粉末(平均粒径0.7μm、比表面積2.06m2/g)を使用した。この基体粉体を、塩化第一錫(関東化学社製試薬特級)0.75グラムを、イオン交換水100グラムに濃塩酸(関東化学社製試薬特級)10ミリリットルを加えた塩酸酸性水溶液に懸濁させた。この前処理液中の塩化第一錫濃度は、基体粉体1グラムに対して塩化第一錫モル濃度1.80×10−3モル/リットルであった。この懸濁液を攪拌速度700rpmで30分間攪拌を行い、前処理とした。所定時間経過後、懸濁させた基体粉体をイオン交換水300グラムで5回の置換洗浄を行った。このようにして、塩化第一錫塩酸酸性水溶液にて前処理された基体粉体スラリーを得た。
上記前処理以外は、実施例1と同じ操作を行い、平均粒径4.6μmの金属銀膜被覆粉体Dを得た。
得られた金属銀膜被覆粉体DのCIE(1976) L*a*b*表色系は、L*=55.8、a*=−0.5、b*=−1.2と明度が上がらず、白色度も低い、暗灰色の磁性粉であった。テスト結果を表1に示す。
【0032】
〔実施例3〕
実施例1の硫酸チタン(IV)水溶液による前処理時間を20分に短くした以外
は、前処理、金属銀膜被覆操作共に実施例1と同じ操作を行い、平均粒径8.8μmの金属銀膜被覆粉体Eを得た。
得られた金属銀膜被覆粉体EのCIE(1976) L*a*b*表色系は、L*=67.3、a*=−0.7、b*=4.0と非常に明度(白色度)の高い白色磁性粉であった。テスト結果を表1に示す。
【0033】
〔実施例4〕
基体粉体として18gのマグネタイト粉末(平均粒径0.7μm、比表面積2.06m2/g)を使用した。この基体粉体を、クエン酸0.034gを溶解させたイオン交換水360gを加えた1000ミリリットルビーカーに投入し、攪拌速度700rpmで攪拌した。
ここに、塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬、Ti:16wt%)0.195gをイオン交換水1.85gで混合希釈した塩化チタン(IV)水溶液を瞬時に添加した。この前処理液中の酸化チタンモル濃度は、基体粉体1gに対して酸化チタンモル濃度1.00×10−4モル/リットルであった。
添加後、同じ攪拌速度にて30分攪拌を続け、所定時間経過後、イオン交換水500gにて置換洗浄を3回行った。このようにして、塩化チタン(IV)水溶液にて前処理された基体粉体スラリーを得た。
その後、実施例1の金属銀膜の被覆と同じ操作を行い、平均粒径8.3μmの金属銀膜被覆粉体Fを得た。
得られた金属銀膜被覆粉体FのCIE(1976) L*a*b*表色系は、L*=65.0、a*=−0.90、b*=3.51と非常に明度(白色度)の高い白色磁性粉であった。テスト結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、本発明に係わる各実施例の白色粉体は、それぞれ満足すべき結果を得たが、各比較例の白色粉体は、不満足な結果であった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の白色粉体およびその製造方法は、基体粉体上の金属銀膜被覆において、基体粉体を簡単な酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理を行う方法により、基体粉体上に直接に金属銀膜を平滑に被覆することができ、明度(白色度)の高い白色粉体およびその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
上記のようにして得られた本発明の白色粉体は、基体として磁性体を使用すると、基体粉体の特性(例えば、磁気特性)を高レベルに保持した機能性粉体、例えば、1成分系現像方式でも優れた複合した機能を果たし得る磁性トナーや、優れた磁気特性を発揮することができる。
また、明度(白色度)が高く、粒径が極めて細かく、そのためカラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等に、これら本来の色を阻害することなく混合することができる白色粉体を提供でき、産業界に寄与するところ大である。
Claims (9)
- 基体粉体上に無電解メッキ法により金属銀膜を形成する白色粉体の製造方法において、該金属銀膜の形成前に、該基体粉体を酸性無機チタン酸塩含有水溶液で前処理することを特徴とする白色粉体の製造方法。
- 前記基体粉体の前処理に用いる酸性無機チタン酸塩含有水溶液中の酸化チタンモル濃度が、基体粉体1gに対して7.70×10−5〜3.50×10−4モル/リットルとすることを特徴とする請求項1に記載の白色粉体の製造方法。
- 前記基体粉体を前処理する前の酸性無機チタン酸塩含有水溶液が、酸性無機チタン酸塩含有溶液の原液を重量比で3〜10倍に希釈されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の白色粉体の製造方法。
- 前記基体粉体の酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理を、該基体粉体を酸性無機チタン酸塩含有水溶液に浸漬することによって行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
- 前記基体粉体の酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理を、攪拌されている基体粉体懸濁液中に酸性無機チタン酸塩含有水溶液を投入し、投入後攪拌を続けることによって行うことを特徴とする請求項4に記載の白色粉体の製造方法。
- 前記酸性無機チタン酸塩含有水溶液投入後の攪拌の継続を20〜60分間行うことを特徴とする請求項5記載の白色粉体の製造方法。
- 前記酸性無機チタン酸塩含有水溶液による前処理の温度を、20〜30℃とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の白色粉体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって製造された白色粉体。
- 平均粒径が0.05〜500μmであることを特徴とする請求項8に記載の白色粉体。
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