JP2003060251A - 強誘電体アクチュエータ素子およびその製造方法 - Google Patents
強誘電体アクチュエータ素子およびその製造方法Info
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Abstract
電体に対し、個別の電圧を印加する必要があり、電源が
少なくとも2つ必要であるか、もしくはスイッチ素子な
どを利用して個別の強誘電体へ印加する電圧を分ける必
要がある。これは、素子を高精度に制御する上で2つ以
上の電源を同時に制御する必要があり、高度な制御を必
要とする。 【解決手段】 所定の電圧より低電圧条件の下では第一
の強誘電体1の圧電特性であるd31定数は第二の強誘
電体4のd31定数よりも高い値を示し、高電圧条件の
下では第一の強誘電体1のd31定数より第二の強誘電
体4のd31定数が低い値を示し、所定の電圧条件下で
は、第一および第二の強誘電体1,4のd31定数が同
じ値となるものである。
Description
性を利用して微小な変位を精度良く発生させるための強
誘電体アクチュエータ素子およびその製造方法に関する
ものである。
小な変位を精度良く実現するアクチュエータ素子には次
のようなものがある。たとえば、図13(a)に示すよ
うな、強誘電体膜の一方の面に強誘電体膜30と同じ程
度の膜厚を持つ導電体からなる振動板膜31を、他方の
面に振動板膜よりは遥かに膜厚が小さい導電体膜32を
固着させたユニモルフ構造としたものである。このとき
強誘電体膜の分極軸が図中の矢印にあるように振動板膜
31側に向いているとき、ここで、このようなユニモル
フ構造のアクチュエータ素子の動作について説明する。
振動板膜31と導電体膜32の間に電圧を印加すると、
強誘電体膜の圧電特性により強誘電体膜の面内に伸縮変
位が発生する。このとき、印加する電場強度に対する発
生する伸縮率をd31定数と呼ぶ。たとえば、d31が
−100×10-12(クーロン毎ニュートン)、印加す
る電場強度が107(ボルト毎メートル)だとすると、
強誘電体膜は膜厚と垂直な面内において、およそ1メー
トルあたり1ミリメートルの割合で伸縮変位を起こそう
とする。しかし、このとき振動板膜が強誘電体膜に固着
されているので、強誘電体膜は面内でまっすぐ伸縮運動
することができず、アクチュエータ素子には曲げ応力が
発生するのである。発生する曲げ応力の方向は印加する
電圧の極性によって変えることができ、たとえば、図1
3(b)のように振動体側がプラスになるように電圧を
印加すると強誘電体膜の面内が延びるように変位するの
で、曲げ応力は振動板膜31側に発生する。逆に図13
(c)のように導電体膜32側がプラスになるように電
圧を印加すると曲げ応力は強誘電体膜30側に発生する
のである。これは電場の方向に従い、強誘電体膜の結晶
が歪む方向が変わるからである。つまり、ユニモルフ型
アクチュエータ素子では強誘電体に掛ける電圧の極性を
変えることで歪む方向を変えることができる。
体が図中の矢印のように互いに分極が反対になるような
方向で中間層を介して張り合わされたバイモルフ構造の
アクチュエータも従来より提案されている。バイモルフ
型アクチュエータでは、中間層が共通電極となるように
し、両側の強誘電体の外側に設けられた個別電極にそれ
ぞれ電圧を印加することで、各強誘電体の変位に差を設
けてどちらの側にも曲げ応力を発生させることができ
る。たとえば、図14(b)において下側の強誘電体3
6のみにプラスの電圧を掛けると曲げ応力は下側に発生
し、図14(c)のように上側の強誘電体35のみにプ
ラスの電圧を掛けると曲げ応力は上側に発生するのであ
る。なお37〜39は電極である。
アクチュエータ素子では次のような問題がある。すなわ
ち、歪む方向を変えるために分極軸と逆方向に電場を発
生させると、分極は電場の強さに従って緩和されてい
き、ついには分極方向が反転すると言う問題がある。分
極の緩和・反転が起こると、強誘電体の圧電特性の劣化
となり、所望する特性を得られないことになる。つま
り、分極の緩和・反転を起こさないためには、逆方向へ
の電圧印加はさける方が望ましく、これにより、ユニモ
ルフ構造のアクチュエータ素子ではこれを自由な方向へ
歪ませることに制限がある。
は、電圧はどちらの強誘電体においても分極の順方向に
電圧を印加しているので分極の緩和・反転が起こる心配
がない。よって、自由に歪む方向を変えることができる
のである。しかし、バイモルフ型では次のような問題が
ある。すなわち、自由な方向に歪ませるためには、2つ
の強誘電体に対し、個別の電圧を印加する必要があり、
電源が少なくとも2つ必要であるか、もしくはスイッチ
素子などを利用して個別の強誘電体へ印加する電圧を分
ける必要がある。これは、素子を高精度に制御する上で
2つ以上の電源を同時に制御する必要があり、高度な制
御を必要とする。
は、特に、所定の電圧より低電圧条件の下では第二の強
誘電体の圧電特性であるd31定数は第一の強誘電体の
d31定数よりも低い値を示し、高電圧条件の下では第
二の強誘電体のd31定数が第一の強誘電体特性のd3
1定数より高い値を示し、前記所定の電圧条件下では、
第一および第二の強誘電体のd31定数が同じ値となる
ものであり、第一および第二の強誘電体に単一の電源よ
り同位相の同電圧を印加しても、d31定数の比がこれ
ら強誘電体に印加する電圧の値により変化するので、た
とえば、所定の電圧より低い電圧の場合は、第二の強誘
電体のd31定数が第一の強誘電体のd31定数より低
いので、第一の強誘電体側へ曲げ応力が発生し、所定の
電圧より高い電圧の場合は、逆に第二の強誘電体側へ曲
げ応力が発生するという作用を有する。
電体は結晶構造の大部分が正方相体であるチタン酸ジル
コン酸鉛で、上記第二の強誘電体は結晶構造が正方相体
と菱面相体が混在するチタン酸ジルコン酸鉛であるもの
で、第一の強誘電体が正方相体であるチタン酸ジルコン
酸鉛であることにより、d31定数は電圧に対して依存
性を持たない圧電特性とすることができる、一方第二の
強誘電体が正方相体と菱面相体の混合であるチタン酸ジ
ルコン酸鉛であることにより、d31定数は電圧に対し
て依存性を持つようになり、所定の電圧以下では第一の
強誘電体のd31定数より低い値となり、所定の電圧以
上では第一の強誘電体のd31定数より高い値となる、
請求項1に記載の強誘電体アクチュエータ素子を実現で
きるという作用を有する。
であるもので中間層が導体であることにより、中間層を
共通電極として利用できるという作用を有する。
分が正方相体である第一の強誘電体と、正方相体と菱面
相体が混在する第二の強誘電体を有し、中間層の両面に
上記第一および第二の強誘電体が、それぞれの自発分極
の主なる方向が反対になるように張り合わされているこ
とを特徴とする強誘電体アクチュエータの製造方法であ
って、前記第一の強誘電体としてチタン酸ジルコン酸鉛
は酸化マグネシウム単結晶板上にスパッタ法により形成
してなり、第二の強誘電体としてチタン酸ジルコン酸鉛
はシリコン基板上にスパッタ法で形成してなるもので、
酸化マグネシウム単結晶板の上にスパッタ法により形成
したチタン酸ジルコン酸鉛は、そのほとんどが正方相体
である結晶構造となり、シリコン基板の上にスパッタ法
により形成したチタン酸ジルコン酸鉛は正方相体と菱面
相体が混在した結晶構造となるのである。さらに、酸化
マグネシウム単結晶板とシリコン基板は、それぞれリン
酸溶液によるウエットエッチングや、6弗化硫黄ガス、
2弗化キセノンガスなどを用いたドライエッチングによ
り容易に除去できるので、酸化マグネシウム単結晶板と
シリコン基板に形成したそれぞれのチタン酸ジルコン酸
鉛を張り合わせた後、これら基板部を除去すれば容易に
バイモルフ強誘電体アクチュエータ素子を得ることがで
きるという作用を有する。
て、本発明の強誘電体アクチュエータ素子について詳し
く説明する。図1(a)は本発明による強誘電体アクチ
ュエータ素子の断面拡大図である。図において、1はそ
の結晶構造のほとんどが正方相体であるチタン酸ジルコ
ン酸鉛からなる第一の強誘電体であり、一方の面には白
金からなる第一の電極2が設けられており、一方の面は
金からなる第二の電極3が設けられている。また、4は
その結晶構造が正方相体と菱面相体が混在したチタン酸
ジルコン酸鉛からなる第二の強誘電体であり、一方の面
に白金からなる第三の電極5、もう一方の面に金よりな
る第四の電極6が設けられている。さらに、第二の電極
3と第四の電極6は樹脂よりなる接着層7によって張り
合わせた構造となっている。また、第二の電極と第四の
電極および第一の電極と第三の電極はそれぞれ外部にお
いて短絡された構造である。ここで、第一の強誘電体の
分極軸は図中の矢印で示したように、第二の電極3側に
実質的に向いており、一方、第二の強誘電体の分極軸は
図中の矢印に示すように第四の電極6側に実質的に向い
ている。ここで、分極軸が実質的に向いていると表現し
たのは、実際には各強誘電体の結晶の中には分極軸が他
方を向いている場合も存在するからであるが、このよう
な分極は全体から見ればわずかであり、実質的には一様
に同方向を向いている。
結晶構造について図を用いてさらに詳しく述べる。図2
および図3は正方相体であるチタン酸ジルコン酸鉛と菱
面相体であるチタン酸ジルコン酸鉛の結晶構造を示した
ものであるが、図1における第一の強誘電体1は正方相
体であるチタン酸ジルコン酸鉛であり、その結晶構造
は、図2に示すように鉛11が正方相体(酸素は図示せ
ず)をなし、内部に位置するチタンあるいはジルコン1
2が中心よりわずかに<001>面側(図面では上側)
へずれた位置にある。すなわち、電荷を持ったチタンあ
るいはジルコン12によって結晶内部では分極が生じて
いる。<001>面側とはつまり第一の強誘電体1にお
ける第二の電極3側であり、本発明においてはこのよう
な状態を分極が第二の電極3側へ向いていると呼んでい
る。このような結晶構造を持つ第一の強誘電体におい
て、これに印加する電圧とd31特性との関係を図4に
示したが、電圧の値を変えてもd31定数はほぼ変わら
ないことを実験で確認している。
のような正方相体と図3で示すような菱面相体が混在し
た結晶であり、菱面相体では、分極は<111>面へ向
かって生じていると考えられている。つまり、第二の強
誘電体において、正方晶体の結晶は第四の電極側である
<001>面へ分極が生じており、菱面晶体の結晶は第
四の電極側とは少しずれた方向である<111>面へ向
かって生じている。また、チタン酸ジルコン酸鉛は結晶
構造が正方相体と菱面相体の境界上にあるとき最も高い
圧電特性を示すと言われているが、その理由はまだ明ら
かにされていない。推測によると、菱面相体の結晶では
<111>方向へ分極が生じているため、電荷を持った
チタンあるいはジルコンの可動距離が正方晶体における
<001>面に生じている場合よりも長い。このことに
より、チタンあるいはジルコンは結晶の中を大きく動く
こととなり、よってd31定数は正方相体のチタン酸ジ
ルコン酸鉛よりも大きくなると考えられている。さら
に、印加する電圧はこの<111>方向とは少しずれた
方向であるため、チタンあるいはジルコンは結晶の中を
本来の可動方向<111>とはずれた方向に動こうとす
るので、ねじれが発生する。このことにより印加する電
圧とd31定数の関係は、電圧の値が大きくなるに従っ
て、d31定数の値も大きくなると考えられる。この関
係は実験で確認したので図5に示す。さらに実験による
と、電圧値約10Vを境に第一の強誘電体のd31定数
を超えることがわかった。
加電圧に対する依存性が異なる強誘電体を張り合わせて
なる強誘電体アクチュエータの動作について説明する。
図1(b)および図1(c)に示すように第一の電極と
第三の電極間は外部の配線によって短絡されており、ま
た、第二の電極と第四の電極は張り合わせる際に短絡さ
れている。電圧を印加する際に、境界電圧値10V以上
の電圧では、第二の強誘電体のd31定数の方が大きい
ので、図1(b)に示すように第二の強誘電体側に曲げ
応力が働き、境界電圧値10V以下の電圧では、第二の
強誘電体のd31定数の方が小さいので、図1(c)に
示すように第一の強誘電体側へ曲げ応力が働くのであ
る。なお、印加電圧が境界電圧値にある場合は、第一の
強誘電体1と第二の強誘電体4のd31定数は同じ値を
示すので曲げ応力は発生せず、アクチュエータ素子には
延びが生ずるのみである。
ュエータ素子の製造方法について説明する。図6から図
12は本発明のアクチュエータ素子の製造方法を示すた
めの各工程における断面図である。
グネシウム基板21とシリコン基板22にそれぞれ、白
金23および26とチタン酸ジルコン酸鉛24および2
7をスパッタ法により形成する。この時、白金およびチ
タン酸ジルコン酸鉛を形成する条件としては、特に差を
設ける必要がなく、同条件で形成すればよい。こうする
ことで、酸化マグネシウム単結晶板21上に形成したチ
タン酸ジルコン酸鉛24はその大部分が正方相体の結晶
構造となり、シリコン基板22上に形成したチタン酸ジ
ルコン酸鉛27は正方相体と菱面相体が混在した結晶構
造となる。この理由はまだ明らかにされていないが、形
成する基板の熱膨張係数が関与しているらしいと言われ
ている。
れの基板に金25および28をスパッタ法や蒸着など通
常の手段で形成し、さらに図10に示すように、樹脂層
29によって張り合わせる。本発明のようにこのように
金を形成しておくことで、金25および28は第二およ
び第四の電極として作用するだけでなく、樹脂の密着性
を向上する効果ももたらす。
ム単結晶板をリン酸溶液により除去する。リン酸溶液は
白金を浸食しないので、酸化マグネシウム単結晶板のみ
を除去することが可能である。さらに図12にあるよう
にシリコン基板を六弗化硫黄ガスによるプラズマエッチ
ングにより除去する。ただし、六弗化硫黄ガスによるプ
ラズマエッチングでは白金を侵してしまう可能性もある
ので、その場合は弗化キセノンをエッチングガスとして
使用すると、白金との選択性が増し、シリコン基板のみ
を除去できるのである。
に対するd31定数の依存性が違う2種類の強誘電体を
張り合わせてなるバイモルフ型のアクチュエータ素子を
得ることができる。
対するd31定数の依存性が違う2種類の強誘電体を張
り合わせて得られるバイモルフ型のアクチュエータ素子
は、単一の電源のみでアクチュエータ素子を自由な方向
へ歪みを発生させることができるようになる。また、そ
れぞれの強誘電体において分極の緩和・反転が起こる方
向には電圧を印加しないので、圧電特性が劣化する心配
がないのである。
ュエータの構造と変位の様子を説明する断面図
の様子を説明する断面図
Claims (4)
- 【請求項1】 第一の強誘電体と第二の強誘電体とを有
し、中間層の両面に上記第一および第二の強誘電体が、
それぞれの自発分極の主なる方向が反対になるように張
り合わされているバイモルフ型強誘電体アクチュエータ
素子であって、所定の電圧より低電圧条件の下では第二
の強誘電体の圧電特性であるd31定数は第一の強誘電
体のd31定数よりも低い値を示し、高電圧条件の下で
は第一の強誘電体のd31定数より第二の強誘電体特性
のd31定数が高い値を示し、前記所定の電圧条件下で
は、第一および第二の強誘電体のd31定数が同じ値と
なる強誘電体アクチュエータ素子。 - 【請求項2】 第一の強誘電体は結晶構造の大部分が正
方相体であるチタン酸ジルコン酸鉛で、上記第二の強誘
電体は結晶構造が正方相体と菱面相体が混在するチタン
酸ジルコン酸鉛である請求項1記載の強誘電体アクチュ
エータ素子。 - 【請求項3】 中間層は、導電体である請求項1記載の
強誘電体アクチュエータ素子。 - 【請求項4】 結晶構造の大部分が正方相体である第一
の強誘電体と、正方相体と菱面相体が混在する第二の強
誘電体を有し、中間層の両面に上記第一および第二の強
誘電体が、それぞれの自発分極の主なる方向が反対にな
るように張り合わされているもので、前記第一の強誘電
体としてチタン酸ジルコン酸鉛は酸化マグネシウム単結
晶板上にスパッタ法により形成してなり、第二の強誘電
体としてチタン酸ジルコン酸鉛はシリコン基板上にスパ
ッタ法で形成してなる強誘電体アクチュエータ素子の製
造方法。
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