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JP2000319009A - 非水酸化リチウム固体状物の分離法 - Google Patents

非水酸化リチウム固体状物の分離法

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Publication number
JP2000319009A
JP2000319009A JP2000061412A JP2000061412A JP2000319009A JP 2000319009 A JP2000319009 A JP 2000319009A JP 2000061412 A JP2000061412 A JP 2000061412A JP 2000061412 A JP2000061412 A JP 2000061412A JP 2000319009 A JP2000319009 A JP 2000319009A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lithium
lithium hydroxide
solid
hydrosulfide
hydrogen sulfide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000061412A
Other languages
English (en)
Inventor
Iwao Akiba
巌 秋葉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Idemitsu Petrochemical Co Ltd
Japan Petroleum Energy Center JPEC
Original Assignee
Petroleum Energy Center PEC
Idemitsu Petrochemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Petroleum Energy Center PEC, Idemitsu Petrochemical Co Ltd filed Critical Petroleum Energy Center PEC
Priority to JP2000061412A priority Critical patent/JP2000319009A/ja
Publication of JP2000319009A publication Critical patent/JP2000319009A/ja
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 水酸化リチウムと水酸化リチウム以外の固
体状物(非水酸化リチウム固体状物)を含む非プロトン
性有機溶媒中に硫化水素ガスを吹き込み、固液分離する
ことにより非水酸化リチウム固体状物を分離する方法に
おいて、水硫化リチウムの回収ロスを低減する方法を提
供する。 【解決手段】水酸化リチウムと非水酸化リチウム固体状
物を含む非プロトン性有機溶媒中に硫化水素ガスを吹き
込みながら水酸化リチウムを水硫化し、水硫化リチウム
の脱硫化水素反応が抑制された条件下で、かつ分離する
際の液温が50〜150℃で固液分離し、更に分離され
た結晶ケークを非プロトン性有機溶媒で洗浄することに
より、水硫化リチウムを高度に回収する非水酸化リチウ
ム固体状物の分離方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体状の水酸化リ
チウムと水酸化リチウム以外の固体状物(以下、「非水
酸化リチウム固体状物」という)を含む非プロトン性有
機溶媒中から非水酸化リチウム固体状物を分離する方法
に関する。詳しくは、固体状の水酸化リチウムと非水酸
化リチウム固体状物を含む非プロトン性有機溶媒中に硫
化水素ガスを吹き込み、水酸化リチウムを非プロトン性
有機溶媒に可溶な水硫化リチウムに変換した後、特定の
固液分離方法によつてリチウムの回収ロスを低減する、
非水酸化リチウム固体状物の分離法に関する。
【0002】
【従来の技術】硫化リチウムを用いたポリアリーレンス
ルフィド樹脂(以下、PASという)の製造方法(本出
願人による特開平07−207027号公報)では、高
価なリチウムをリサイクルする必要がある。リチウム
は、PASの重合反応溶液中に塩化リチウムとして溶解
しており、これにリチウムと当モル以上の水酸化ナトリ
ウムを加えることにより、水酸化リチウムの結晶として
回収される。しかしながら、同時に水酸化リチウムと等
モル量の塩化ナトリウムが結晶として析出するため、こ
のまま水酸化リチウムをPASの重合系にリサイクルす
ると非プロトン性有機溶媒に不溶な塩化ナトリウムがP
AS中に取り込まれてしまう。そこで、非プロトン性有
機溶媒中の水酸化リチウムとその他の固体状物(塩化ナ
トリウム等)を分離する必要がある。
【0003】その方法としては、系内に多量の水を投
入し、固体状物の水への溶解度の差を利用して分離する
方法、硫化水素ガスを、水酸化リチウムとその他の固
体状物を含む非プロトン性有機溶媒中に吹き込み、硫化
水素と水酸化リチウムを反応させて非プロトン性有機溶
媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン:NMP)に
可溶な錯体を合成し、分離する方法(特開平07−17
2821号公報)が知られている。
【0004】しかし、の方法では、水酸化リチウムと
塩化ナトリウムの溶解度の差が小さく、極めて分離効率
が悪い。しかも系内に多量の水が残るという問題があ
る。また、の硫化水素ガスを吹き込む方法として具体
的に開示されている実施例においては、硫化水素ガスを
吹き込み後の反応混合物を130℃に保温されたガラス
製フィルターにあけ減圧濾過する固液分離操作、及び1
30℃でNMPを用いてフィルター上の濾過物を洗浄す
る操作が開示されている。しかし、硫化水素ガス吹き込
み後の反応系内のS/Liモル比は0.65とされてい
るため、かなりの量の硫化リチウムが生成していると考
えられる。また、固液分離の際、硫化リチウムが生成す
るおそれのある減圧濾過操作を採用している。硫化リチ
ウムはNMPに不溶なため、上記の固液分離操作、洗浄
操作を実施してもリチウムの回収ロスの問題は完全に解
決したとはいえない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、固体状の水
酸化リチウムと水酸化リチウム以外の固体状物(非水酸
化リチウム固体状物)を含む非プロトン性有機溶媒中に
硫化水素ガスを吹き込み、水酸化リチウムを非プロトン
性有機溶媒に可溶な水硫化リチウムに変換した後、固液
分離することにより非水酸化リチウム固体状物を分離す
る方法において、水硫化リチウムの回収ロスを低減する
方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
ついて鋭意検討した結果、上記非水酸化リチウム固体状
物の分離方法において、硫化水素ガスを用いて水酸化リ
チウムを非プロトン性有機溶媒に可溶な水硫化リチウム
に変換し、固液分離した後、分離された結晶ケークを非
プロトン性有機溶媒で洗浄することにより結晶ケーク中
に含まれる水硫化リチウムを効果的に回収できることを
見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明
の要旨は以下の通りである。
【0007】〔1〕固体状の水酸化リチウムと水酸化リ
チウム以外の固体状物(以下、「非水酸化リチウム固体
状物」という)を含む非プロトン性有機溶媒中に硫化水
素ガスを吹き込み、水酸化リチウムを非プロトン性有機
溶媒に可溶な水硫化リチウムに変換した後、水硫化リチ
ウムの脱硫化水素反応が抑制された条件下で、かつ分離
する液温が50〜150℃で固液分離することにより非
水酸化リチウム固体状物を分離する方法であって、分離
された結晶ケークを非プロトン性有機溶媒で洗浄するこ
とにより、結晶ケーク中に含有される水硫化リチウムを
回収することを特徴とする非水酸化リチウム固体状物の
分離方法。 〔2〕硫化水素ガスの吹き込みを50〜150℃で行う
上記〔1〕に記載の非水酸化リチウム固体状物の分離方
法。 〔3〕水硫化リチウムの脱硫化水素反応を抑制するため
に、減圧および不活性ガスの吹き込みのいずれをもする
ことなく固液分離を行う上記〔1〕または〔2〕に記載
の非水酸化リチウム固体状物の分離方法。 〔4〕分離された結晶ケークの洗浄に用いられた洗浄液
(非プロトン性有機溶媒)の少なくとも一部を水酸化リ
チウムの水硫化工程または結晶ケークの洗浄工程にリサ
イクルする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非水
酸化リチウム固体状物の分離方法。 〔5〕硫化水素ガスに対する水酸化リチウムの使用割合
が0.2〜2.0(モル比)の範囲にある上記〔1〕〜
〔4〕のいずれかに記載の非水酸化リチウム固体状物の
分離方法。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の非水酸化リチウム固体状
物の分離方法を、水酸化リチウムの水硫化工程から水硫
化リチウムの脱硫化水素による硫化リチウムの製造工程
までの流れを示す図1を参照しながら、以下説明する。 〔水硫化工程〕固体状の水酸化リチウムおよび非水酸化
リチウム固体状物を含む非プロトン性有機溶媒中に硫化
水素ガスを吹き込み、水酸化リチウムを非プロトン性有
機溶媒に可溶な水硫化リチウムに変換する工程である。
すなわち、水硫化工程は次の反応式で示される反応を主
とするものである。 Li0H + H2S → LiSH + H2
【0009】(1)反応条件 反応は、通常、圧力3kPa〜0.3MPa、温度0〜
200℃、好ましくは圧力0.lMPa〜0.3MP
a、温度50〜150℃の条件下において行われる。反
応圧力が0.3MPaを超えると、この反応に使用する
圧力容器の仕様が一段と厳しくなるので経済的に不利と
なる。反応温度が0℃より低ければ、水酸化リチウムの
溶解度が低く、また水と共沸する共沸剤を使用する場合
に液相中の共沸剤の濃度が高くなり、水酸化リチウムの
溶解度がさらに低くなるなどにより、水硫化反応が進み
にくくなる。さらに、生成した水硫化リチウム溶液の粘
度が急激に上昇し、水硫化反応が著しく遅くなる。反応
温度が200℃より高くなると、反応系内の圧力も高ま
り好ましくないのみならず、非プロトン性有機溶媒の分
解による悪影響が生ずる恐れがある。また、硫化リチウ
ムの生成量が増大する。硫化リチウムは非プロトン性有
機溶媒に溶解しないため、固形物を形成して、分離・回
収が困難になり、リチウムの回収ロスが大きくなる。
【0010】(2)水酸化リチウム 本発明に用いられる固体状の水酸化リチウムは、無水物
でも水を含むものでもよい。しかし、通常は、PAS重
合反応槽で重合反応に伴い生成する塩化リチウムにNa
OHを添加して得られる水酸化リチウムが用いられる。 (3)非水酸化リチウム固体状物 本発明で分離される非水酸化リチウム固体状物は、ほと
んどが塩化ナトリウムであり、その他僅かにPASポリ
マー及びPASオリゴマー等が含まれる場合がある。通
常、PASの重合工程で使用される硫化リチウムは、ポ
リマー内に硫黄が取り込まれて、自らは塩化リチウムに
転換する。即ち、硫化リチウムは、硫黄キャリヤーとし
て働く。塩化リチウムにNaOHを添加すると水酸化リ
チウムと塩化ナトリウムが生成するが、このいずれもが
非プロトン性有機溶媒に不溶で固体状物を形成する。
【0011】(4)非プロトン性有機溶媒 本発明に用いられる非プロトン性有機溶媒としては、一
般的に、非プロトン性の極性有機化合物(例えば、アミ
ド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機イオウ化
合物、環式有機リン化合物等)を単独溶媒、または、混
合溶媒として好適に使用することができる。これらの非
プロトン性の極性有機化合物のうち、前記アミド化合物
としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、
N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセ
トアミド、N,N一ジエチルアセトアミド、N,N−ジ
プロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミ
ドなどを挙げることができる。
【0012】また、前記ラクタム化合物としては、例え
ば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N一
エチルカプロラクタム、N一イソプロピルカプロラクタ
ム、N一イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロ
ピルカプロラクタム、N一ノルマルブチルカプロラクタ
ム、N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN一アルキ
ルカプロラクタム類、N−メチル−2−ピロリドン(N
MP)、N一エチル−2−ピロリドン、N−イノプロピ
ル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリド
ン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N一ノル
マルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2
−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリド
ン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メ
チル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−
メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリド
ン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−
6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル
−2−ピペリドンなどを挙げることができる。
【0013】さらに、前記有機イオウ化合物としては、
例えば、ジメチルスルホキシド、ジエテルスルホキシ
ド、ジフェニレンスルホン、1−メチル−1−オキソス
ルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フ
ェニル−1−オキソスルホランなどを挙げることができ
る。これら各種の非プロトン性極性有機化合物は、それ
ぞれ一種単独で、または二種以上を混合して、さらには
本発明の目的に支障のない他の溶媒成分と混合して、前
記非プロトン性有機溶媒として使用することができる。
前記各種の非プロトン性有機溶媒の中でも、好ましいの
はN一アルキルカプロラクタムおよびN一アルキルピロ
リドンであり、特に好ましいのはN−メチル−2−ピロ
リドンである。
【0014】(5)硫化水素 本発明に用いられる硫化水素としては特に制限はない。 (6)使用割合 水硫化工程における硫化水素に対する水酸化リチウムの
使用割合は、水酸化リチウム/硫化水素のモル比が、通
常0.2〜3.0、好ましくは0.2〜2.0、より好
ましくは0.3〜1.5、特に好ましくは0.3〜1.
1の範囲である。この範囲内にあれば、水硫化反応が一
層円滑に進むからである。 (7)水硫化リチウムの製造 反応装置は、攪拌翼のついた装置であつて、上部にコン
デンサーがあるものが好適である。反応装置(反応槽)
としては、完全混合槽型、懸濁気泡塔型、充填塔型、棚
段塔型等の単独もしくはこれらの組み合わせで、一段な
いし多段のものを用いることができる。
【0015】上記の反応条件下で、水酸化リチウムと非
水酸化リチウム固体状物を含む非プロトン性有機溶媒中
に硫化水素ガスを吹き込むことにより、水酸化リチウム
を水硫化する。硫化水素ガスの吹き込み圧力や流速、さ
らに吹き込み方法に特に制限はなく、吹き込み時間は前
記した硫化水素の使用割合から算出される必要量を流速
で割つて得られる時間以上、すなわち、原料水酸化リチ
ウムに対して、過剰量を吹き込む必要がる。
【0016】〔固液分離工程〕前工程で製造された水硫
化リチウムは、非プロトン性有機溶媒に可溶であり、そ
の他の固体状物(非水硫化リチウム固体状物)と分離可
能となる。本発明に用いる固液分離装置としては、濾過
器、遠心分離機などを用いることができる。固液分離す
る条件として、好ましくは、水硫化リチウムの脱硫化水
素反応が抑制された条件下で、かつ温度条件として好ま
しくは50〜150℃、特に好ましくは70〜100℃
で行われる。脱硫化水素反応が抑制された条件下で固液
分離するのは、非プロトン性有機溶媒中に溶解している
水硫化リチウムが脱硫化水素して硫化リチウムが生成す
るのを抑制するためである。硫化リチウムが生成すれ
ば、それは非プロトン性有機溶媒に不溶であるため、固
体側に分離され、リチウムの回収ロスにつながる。従つ
て、反応混合物を加温、減圧、不活性ガスの吹き込み等
をすることなく固液分離するのが好ましい。その理由を
以下に説明する。
【0017】水硫化リチウムの脱硫化水素反応は、後記
する脱硫化水素工程でも示すが、次式で表される。 2LiSH → Li2S + H2S 水硫化リチウムの生成反応温度以上に加温すると、硫化
水素の溶媒に対する溶解度が低下し、上記反応が右側に
進みやすくなり、硫化リチウムの生成量が増加する。同
様に、減圧した場合も溶媒に対する硫化水素の溶解度が
低下する。また、不活性ガスの吹き込みは反応器内の硫
化水素ガスの分圧を低下させ、減圧した場合と同様の影
響が生じる。すなわち、水硫化工程終了時に溶媒中に存
在する硫化水素濃度を、固液分離工程でなるべく低下さ
せない操作を行うことが、リチウムの回収ロスを低減さ
せるうえで好ましい。なお、温度条件は、50℃未満の
場合、水硫化リチウムを含む非プロトン性有機溶媒の粘
度が急激に上昇し、濾過や遠心分離が困難になるので好
ましくない。150℃を超える温度では上記のように水
硫化リチウムの脱硫化水素が進行し、硫化リチウムが生
成し、リチウムの回収ロスが増加するので好ましくな
い。
【0018】〔洗浄工程〕通常、固液分離した結晶ケー
クの含液率は50%以上と高く、付着母液(結晶ケーク
に付着した溶媒)に溶解した水硫化リチウム(結晶ケー
クに付着した溶媒)は、未回収のリチウムとなる。そこ
で、本発明においては、分離された結晶ケークを非プロ
トン性有機溶媒で洗浄することにより、結晶ケーク中に
含有される水硫化リチウムを回収する。より具体的に
は、非プロトン性有機溶媒で洗浄しながら固液分離を行
うか、分離された結晶ケークを再度、非プロトン性有機
溶媒でスラリー状態にして洗浄する。洗浄液量や洗浄回
数は、多くすればリチウム回収率は向上するが、特に制
限はない。具体的には、例えば、以下に記載する方法を
採用することができる。
【0019】固液分離工程で回収された結晶ケークに対
して、0.5〜5.0倍量(質量)の非プロトン性有機
溶媒を加え、水硫化工程における反応温度と同じ温度以
下で攪拌することによつて洗浄を行い、上記と同様にし
て再度固液分離を行う。この操作を2〜3回繰り返す。
洗浄時の結晶ケークに対する非プロトン性有機溶媒の添
加量は、上記のように0.5〜5.0倍量(質量)とす
ることが好ましく、特に1.0〜3.0倍量(質量)と
することが好ましい。0.5倍量未満では好ましい洗浄
効果が得られない場合があり、5.0倍量を超えると使
用溶媒量が多くなり、その処理に手間やコストがかか
る。
【0020】洗浄温度は、50〜120℃が好ましく、
特に70〜100℃が好ましい。50℃未満では洗浄系
内の粘度が高く、洗浄効率が悪化する可能性があり、1
20℃を超える温度で洗浄する場合には、上記したよう
に水硫化リチウムの脱硫化水素が進行し、リチウムの回
収ロスが増加する可能性がある。洗浄溶媒(非プロトン
性有機溶媒)と結晶ケークの混合方法は特に限定されな
いが、結晶ケークが洗浄溶媒中に均一に分散するよう混
合して洗浄するのが好ましい。攪拌速度や洗浄時間は特
に限定されず、適宜設定できる。
【0021】洗浄操作は、不活性ガス、あるいは硫化水
素ガス雰囲気下で行うのが好ましい。空気中(酸素存在
下)で洗浄操作を行うと、水硫化リチウムが酸化され、
リチウムの硫黄酸化物が生成し、リチウムの回収ロスが
増加する可能性がある。洗浄後、回収された洗浄液の少
なくとも一部又は全部を水硫化工程や固液分離工程、洗
浄工程にリサイクルすることができる。
【0022】〔脱硫化水素工程〕脱硫化水素工程は、固
液分離工程で回収された水硫化リチウムを硫化リチウム
に変換する工程である。水硫化リチウムを含む非プロト
ン性有機溶媒を加熱して、あるいは加熟しながら不活性
ガスを吹き込むことにより脱硫化水素反応を進行させる
と、硫化リチウムが生成する。
【0023】すなわち、脱硫化工程は次の反応式で示さ
れる反応を主とする。 2LiSH → Li2S + H2S 反応系内に残留する水硫化リチウムの硫化リチウムヘの
転換を一層促進するため、加熱しながら、あるいは加熱
して不活性ガスを吹き込みながら脱硫化水素を進める。
反応温度は、好ましくは150〜250℃、特に好まし
くは170〜220℃である。なお、不活性ガスとして
は、特に制限はなく、通常、窒素ガスを好適に用いるこ
とができる。また、この不活性ガスの吹き込み圧につい
ては、特に制限はなく、常圧でも加圧してもよく、吹き
込み流速も特に制限はない。なお、吹き込み時間あるい
は加熱時間は、未反応の水硫化リチウムの液中濃度を測
定することにより、確認することができるが、通常、反
応時間との関係で把握される。反応終了後、硫化リチウ
ムを含むスラリー溶液が回収され、それは、通常、ポリ
アリーレンスルフィドの重合工程に使用される硫黄キャ
リヤーとして用いられる。
【0024】
【実施例】本発明について、更に、実施例を用いて詳細
に説明する。 〔実施例1〕攪拌機およびコンデンサーのついた500
ミリリットルガラス製セパラブルフラスコにN−メチル
−2−ピロリドン(NMP)120gと、塩化リチウム
のNMP溶液に水酸化ナトリウムを加えて回収した湿つ
たケーク187.68g(含液率56%で水酸化リチウ
ムおよび塩化ナトリウムがそれぞれ1モルである)を入
れ、550rpmで攪拌しながら、130℃に昇温し
た。湿つたケークを乾燥して得た結晶の粒径分布は10
〜100μmであつた。
【0025】130℃に昇温後、硫化水素ガスを400
ミリリットル/分で180分間供給した。硫化水素を吹
き込む間の温度及び攪拌速度はそれぞれ130℃、55
0rpmにコントロールした。経時的に液相をサンプリ
ングし、リチウム化合物を電位差滴定法で分別定量し
た。また、液中のリチウムおよびナトリウムをイオンク
ロマトグラフィー、水分をガスクロマトグラフィーで分
析した。硫化水素ガスの供給を開始すると液はただちに
濃青色に変色し、リチウム錯体の生成が認められた。1
80分経過後も固形物は系内に残つていた。硫化水素ガ
スの吹き込みを開始してから60分後の水酸化リチウム
の転化率は97.8%、水硫化リチウム選択率は100
%、水分は9.8%であつた。また、90分以上経過後
の水酸化リチウム転化率は100%、水硫化リチウム選
択率は95.3%、水分は8.2%で、僅かに硫化リチ
ウムの生成が認められた。
【0026】その後、この反応液を130℃に保温され
たガラス製フィルターを用いて濾過した。湿つたケーク
の含液率は54.8%で、リチウム回収率(塩化リチウ
ムの形でセパラブルフラスコに投入されたリチウムのう
ち、固液分離により、ろ液中に回収されたリチウムの割
合)は85%であつた。フィルター上の濾過物をさらに
130℃にて多量のNMPで洗浄した。洗浄によリケー
クから溶出した洗浄液中のリチウム濃度は24質量pp
mで、NMPで洗浄することによつて、固液分離後のケ
ーク中のリチウムは99%が回収された(全体としての
リチウム回収率は95%)。なお、固液分離後の液中の
ナトリウム濃度は0.74質量%で塩化ナトリウム除去
率は96%であった。洗浄液の一部をケークの洗浄用に
リサイクルした。
【0027】〔実施例2〕攪拌機およびコンデンサーを
備えた500ミリリットルのガラス製セパラブルフラス
コ(単蒸留装置)に、NMP120gと塩化リチウムの
NMP溶液を入れ、リチウムに対して当モルの水酸化ナ
トリウム(48質量%水溶液)を加えて反応させ、水酸
化リチウムと塩化ナトリウム(それぞれ1モル)が析出
した反応混合物を得た。次に、系内を減圧(0.2kP
a)し、温度130℃で脱水を行つた。脱水は、130
℃で塔頂からの留出がなくなるまで行つた。
【0028】脱水したスラリーに100℃で、硫化水素
ガスを水酸化リチウムに対して過剰量吹き込んで水硫化
リチウムの合成を行つた。硫化水素ガス吹き込み前は白
色結晶と透明な上澄み液からなるスラリーであつたが、
吹き込みと同時に液は濃青色に変化した。硫化水素ガス
の吹き込みは、固形物が無くなるまで続行した。この
間、攪拌速度は350rpmで、硫化水素ガスの吹き込
み速度は1000ミリリットル/分であった。60分後
の水酸化リチウムの転化率は100%で水硫化リチウム
選択率は100%であつた。また、120分以上経過後
の水硫化リチウム選択率も100%であつた。また、残
留水分は4.1%であつた。
【0029】そこで、得られた混合物を100℃に保温
したガラス製フィルターを用いて濾過した。濾過により
得られた湿つたケークの含液率は63.2質量%で、こ
の時点のリチウム回収率は67%であつた。フィルター
上の濾過物をさらに100℃にて多量のNMPで洗浄し
た。NMPで洗浄することによつて、固液分離後のケー
ク中のリチウムは99%が回収された(全体としてのリ
チウム回収率は、99.7%)。なお、固液分離後の液
中のナトリウム濃度は0.59質量%で塩化ナトリウム
除去率は97質量%であつた。本実施例において、洗浄
液の一部をケークの洗浄用にリサイクルした。
【0030】〔比較例1〕実施例1と同じ方法で製造し
た、水硫化リチウムを含む混合物を40℃に保温された
ガラス製フィルターを用いて濾過しようとしたところ、
液粘度が高すぎて濾過できなかつた。透過側を減圧に引
いて濾過を行つたが完全に固液分離はできなかった。吸
引濾過を行つている間、透過側のガラスフイルターの表
面から気泡の発生が見られたため、結晶の一部を取り出
し、電位差滴定法で分析した結果、硫化リチウムの生成
が確認された。硫化リチウムの生成原因としては、前記
のように減圧濾過により、溶媒に対する硫化水素の溶解
度が低下したことが考えられる。
【0031】〔比較例2〕実施例1と同様にして硫化水
素吹き込み前の混合物を製造した。実施例1においては
130℃に昇温したが、本実験では158℃に昇温し
た。158℃で硫化水素ガスを吹き込んで水硫化リチウ
ムの合成を行つた。その際の攪拌速度は350rpmと
し、硫化水素ガスの吹き込み速度は1000ミリリット
ル/分とした。硫化水素ガスの吹き込みを開始してから
60分後の水酸化リチウムの転化率は68.8%で水硫
化リチウムの選択率は100%であつた。また、120
分以上経過後の水酸化リチウム転化率は100%、水硫
化リチウム選択率は85.5%、硫化リチウム選択率は
14.5%であった。このように、硫化リチウムの生成
量が実施例1に比べて増加した。
【0032】得られた混合物を158℃に保温したガラ
ス製フィルターを用いて濾過した。湿つたケークの含液
率は62.3質量%で、この時のリチウム回収率は56
%であった。フィルター上の濾過物をさらに、100℃
にて多量のNMPで洗浄した。NMPで洗浄を行つても
全体としてのリチウムの回収率は85%にまでしか向上
しなかつた。洗浄後の結晶を電位差滴定法で分析した結
果、硫化リチウムの存在が確認された。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、固液分離後のケークに
含まれる水硫化リチウムの99%程度を回収できるた
め、全体としてのリチウム回収率を、従来の60%台に
較べ、著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による非水酸化リチウム固体状物の分
離方法を利用した、硫化リチウム製造方法の概略図であ
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固体状の水酸化リチウムと水酸化リチウ
    ム以外の固体状物(以下、「非水酸化リチウム固体状
    物」という)を含む非プロトン性有機溶媒中に硫化水素
    ガスを吹き込み、水酸化リチウムを非プロトン性有機溶
    媒に可溶な水硫化リチウムに変換した後、水硫化リチウ
    ムの脱硫化水素反応が抑制された条件下で、かつ分離す
    る液温が50〜150℃で固液分離することにより非水
    酸化リチウム固体状物を分離する方法であって、分離さ
    れた結晶ケークを非プロトン性有機溶媒で洗浄すること
    により、結晶ケーク中に含有される水硫化リチウムを回
    収することを特徴とする非水酸化リチウム固体状物の分
    離方法。
  2. 【請求項2】 硫化水素ガスの吹き込みを50〜150
    ℃で行う請求項1記載の非水酸化リチウム固体状物の分
    離方法。
  3. 【請求項3】 水硫化リチウムの脱硫化水素反応を抑制
    するために、減圧および不活性ガスの吹き込みのいずれ
    をもすることなく固液分離を行う請求項1または2に記
    載の非水酸化リチウム固体状物の分離方法。
  4. 【請求項4】 分離された結晶ケークの洗浄に用いられ
    た洗浄液(非プロトン性有機溶媒)の少なくとも一部を
    水酸化リチウムの水硫化工程または結晶ケークの洗浄工
    程にリサイクルする請求項1〜3のいずれかに記載の非
    水酸化リチウム固体状物の分離方法。
  5. 【請求項5】 硫化水素ガスに対する水酸化リチウムの
    使用割合が0.2〜2.0(モル比)の範囲にある請求
    項1〜4のいずれかに記載の非水酸化リチウム固体状物
    の分離方法。
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