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JP3490137B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法

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JP3490137B2
JP3490137B2 JP09818294A JP9818294A JP3490137B2 JP 3490137 B2 JP3490137 B2 JP 3490137B2 JP 09818294 A JP09818294 A JP 09818294A JP 9818294 A JP9818294 A JP 9818294A JP 3490137 B2 JP3490137 B2 JP 3490137B2
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lithium
polyarylene sulfide
polymerization
mol
producing
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光治 並木
潔 佐瀬
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Idemitsu Petrochemical Co Ltd
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Idemitsu Petrochemical Co Ltd
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアリーレンスルフ
ィド(PAS)の製造方法に関する。さらに詳しくは電
気、電子分野、高剛性材料分野で特に有用な比較的高分
子量のポリアリーレンスルフィドを製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリアリーレンスルフィド樹脂(PAS
樹脂)、中でも特にポリフェニレンスルフィド樹脂(P
PS樹脂)は、機械的強度、耐熱性等に優れると共に、
特に高い剛性を有するエンジニアリング樹脂として知ら
れており、電子・電気機器部品の素材や各種の高剛性材
料として有用である。これらの樹脂の製造には、従来、
N−メチル−2−ピロリドン(以下において、NMPと
略称することがある。)等の非プロトン性有機溶媒中で
p−ジクロロベンゼン等のジハロゲン化芳香族化合物と
硫化ナトリウム等のナトリウム塩とを反応させるという
方法が一般に用いられてきた。しかし、この場合、副生
する塩化ナトリウムがNMP等の溶媒に不溶であるから
樹脂中に取り込まれてしまい、それを洗浄によって取り
除くことは容易でなかった。
【0003】そこで、ナトリウム塩に代えてリチウム
塩、たとえば水酸化リチウムを用いて重合を行い、塩化
リチウムを副生させると、塩化リチウムはNMP等の多
くの非プロトン性有機溶媒(重合用溶媒)に可溶である
ので、水洗浄工程および排水処理工程が不要となるとと
もに、高純度PASを製造する方法として有効であるこ
とから、リチウム塩を用いる方法が脚光を浴びてきた。
【0004】このようなリチウム塩を用いたPASの製
造方法については、これまで種々の改良がなされてきた
が、本出願人も、非プロトン性有機溶媒中で、N−メチ
ルアミノ酪酸リチウムと硫化水素とジハロゲン化芳香族
化合物とを、ジハロゲン化芳香族化合物の反応率を80
〜99モル%に達するまで予備重合し、次いで本重合を
行うことを特徴とする比較的高分子量のPASを製造す
る方法を提案している(特願平5−32939号)。こ
の方法は、高純度、高分子量のPASを容易に得ること
ができる利点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方法では
比較的高分子量(たとえば、溶液粘度が0.2以上)の
PASが生成した際、重合系でポリマー相が攪拌翼等に
凝集することがあり、冷却後に攪拌翼等にポリマーが付
着したり、製品を抜出す際、抜出しラインの閉塞を招く
ことがあり、また、重合系を連続化した際、ポリマーを
安定して抜出すことが困難な場合があり、必ずしも十分
に満足すべきものとはいえなかった。本発明は、上記問
題に鑑みなされたものであり、ポリマーの攪拌翼等への
付着や製品抜出しラインの閉塞を生ずることなく、比較
的高分子量のPASを容易かつ円滑に製造することがで
きるポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明によれば、非プロトン性有機溶媒中にて、水酸化
リチウムと、液状または気体状のイオウ化合物と、ポリ
ハロゲン化芳香族化合物とを重合させて、ポリアリーレ
ンスルフィドを製造する方法において、重合時のリチウ
ム濃度を、前記非プロトン性有機溶媒1リットル当たり
3.6モル以上に制御することを特徴とするポリアリー
レンスルフィドの製造方法が提供される。
【0007】また、その好ましい態様として、前記非プ
ロトン性有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンであ
ることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方
法が、また、前記液状または気体状のイオウ化合物が、
硫化水素であることを特徴とするポリアリーレンスルフ
ィドの製造方法が、また、前記ポリハロゲン化芳香族化
合物が、パラジクロロベンゼンを50モル%以上含むも
のであることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの
製造方法が、さらに、前記重合が、連続重合であること
を特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法がそ
れぞれ提供される。
【0008】以下、本発明を具体的に説明する。 1.重合原料 本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法において
は、水酸化リチウムおよび/またはN−メチルアミノ酪
酸リチウムと、液状または気体状のイオウ化合物と、ジ
ハロゲン化芳香族化合物とを、非プロトン性有機溶媒中
にて重合させる。
【0009】(1)非プロトン性有機溶媒 本発明に用いられる非プロトン性有機溶媒としては、一
般に、非プロトン性の極性有機化合物(たとえば、アミ
ド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化
合物,環式有機リン化合物等)を、単独溶媒として、ま
たは、混合溶媒として、好適に使用することができる。
【0010】これらの非プロトン性の極性有機化合物の
うち、前記アミド化合物としては、たとえば、N,N−
ジメチルホルムアミド,N,N−ジエチルホルムアミ
ド,N,N−ジメチルアセトアミド,N,N−ジエチル
アセトアミド,N,N−ジプロピルアセトアミド,N,
N−ジメチル安息香酸アミドなとを挙げることができ
る。
【0011】また、前記ラクタム化合物としては、たと
えば、カプロラクタム,N−メチルカプロラクタム,N
−エチルカプロラクタム,N−イソプロピルカプロラク
タム,N−イソブチルカプロラクタム,N−ノルマルプ
ロピルカプロラクタム,N−ノルマルブチルカプロラク
タム,N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN−アル
キルカプロラクタム類,N−メチル−2−ピロリドン
(NMP),N−エチル−2−ピロリドン,N−イソプ
ロピル−2−ピロリドン,N−イソブチル−2−ピロリ
ドン,N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン,N−ノ
ルマルブチル−2−ピロリドン,N−シクロヘキシル−
2−ピロリドン,N−メチル−3−メチル−2−ピロリ
ドン,N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン,N−
メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン,N
−メチル−2−ピペリドン,N−エチル−2−ピペリド
ン,N−イソプロピル−2−ピペリドン,N−メチル−
6−メチル−2−ピペリドン,N−メチル−3−エチル
−2−ピペリドンなどを挙げることができる。
【0012】また、前記尿素化合物としては、たとえ
ば、テトラメチル尿素,N,N’−ジメチルエチレン尿
素,N,N’−ジメチルプロピレン尿素などを挙げるこ
とができる。
【0013】さらに、前記有機イオウ化合物としては、
たとえば、ジメチルスルホキシド,ジエチルスルホキシ
ド,ジフェニルスルホン,1−メチル−1−オキソスル
ホラン,1−エチル−1−オキソスルホラン,1−フェ
ニル−1−オキソスルホランなどを、また、前記環式有
機リン化合物としては、たとえば、1−メチル−1−オ
キソホスホラン,1−ノルマルプロピル−1−オキソホ
スホラン,1−フェニル−1−オキソホスホランなどを
挙げることができる。
【0014】これら各種の非プロトン性極性有機化合物
は、それぞれ一種単独で、または二種以上を混合して、
さらには、本発明の目的に支障のない他の溶媒成分と混
合して、前記非プロトン性有機溶媒として使用すること
ができる。
【0015】前記各種の非プロトン性極性有機溶媒の中
でも、好ましいのはN−アルキルカプロラクタム及びN
−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メ
チル−2−ピロリドンである。
【0016】(2)水酸化リチウムおよび/またはN−
メチルアミノ酪酸リチウム 本発明で用いられる水酸化リチウムおよび/またはN−
メチルアミノ酪酸リチウムとしては、特に制限はなく、
高純度である限り市販の製品を使用することができる。
このN−メチルアミノ酪酸リチウムとしては、出願人が
先に特願平4−183717号で提案した製造方法によ
って製造されたものが好ましい。すなわち、まず、非プ
ロトン性有機溶媒中で、N−メチル−2−ピロリドン
と、リチウムを除くアルカリ金属の水酸化物とを反応さ
せてN−メチルアミノ酪酸のアルカリ金属塩(すなわ
ち、N−メチルアミノ酪酸のリチウム以外のアルカリ金
属塩)を合成する。
【0017】次に、前記N−メチルアミノ酪酸ナトリウ
ム等のN−メチルアミノ酪酸のリチウム以外のアルカリ
金属塩の合成で得られたN−メチルアミノ酪酸ナトリウ
ム等のN−メチルアミノ酪酸のリチウム以外のアルカリ
金属塩を含有する反応混合物から水分濃度を低減すべく
水分を除去する。この水分除去工程は、蒸留等の常法に
従って行うことができる。なお、その際、有機溶媒の一
部が除去されても構わない。合成したN−メチルアミノ
酪酸ナトリウム等のN−メチルアミノ酪酸のリチウム以
外のアルカリ金属塩を一旦単離して、次の工程の原料と
して使用することもできるが、通常は、この水分を除去
した後の反応混合物をそのまま、あるいは必要に応じ
て、溶媒量を適宜に調節する程度で、次の反応工程に供
する方がプロセス上有利になる。
【0018】上記に次いで、前記水分除去の工程で水分
濃度を低減したN−メチルアミノ酪酸ナトリウム等のN
−メチルアミノ酪酸のリチウム以外のアルカリ金属塩の
溶液を塩化リチウムと接触させることにより、このN−
メチルアミノ酪酸のリチウム以外のアルカリ金属塩と塩
化リチウムとを反応させ、所望のN−メチルアミノ酪酸
リチウムを合成する。その際、用いたN−メチルアミノ
酪酸ナトリウム等のN−メチルアミノ酪酸のリチウム以
外のアルカリ金属塩のアルカリ金属成分(すなわち、リ
チウム以外のアルカリ金属成分)の塩化物が副生する
が、これらの副生アルカリ金属塩化物を除去し、リチウ
ム以外のアルカリ金属成分が完全にまたは十分に除去さ
れた所望のN−メチルアミノ酪酸リチウムの溶液を得
る。
【0019】本発明においては、水酸化リチウムおよび
N−メチルアミノ酪酸リチウムの両方を用いてもよく、
またそのいずれか一方のみを用いてもよい。
【0020】(3)液状または気体状のイオウ化合物 本発明に用いられる液状又は気体状のイオウ化合物とし
ては、特に制限はないが、硫化水素を好適に用いること
ができる。
【0021】(4)ポリハロゲン化芳香族化合物 本発明に用いられるポリハロゲン化芳香族化合物として
は、特に制限はなく、一分子中に二個以上のハロゲン原
子を有する芳香族化合物を挙げることができ、具体的に
はポリアリーレンスルフィドの製造に用いられる公知の
化合物を好適例として挙げることができる。
【0022】たとえば、m−ジハロゲンベンゼン、p−
ジハロゲンベンゼン等のジハロゲンベンゼン類;2,3
−ジハロゲントルエン、2,5−ジハロゲントルエン、
2,6−ジハロゲントルエン、3,4−ジハロゲントル
エン、2,5−ジハロゲンキシレン、1−エチル−2,
5−ジハロゲンベンゼン、1,2,4,5−テトラメチ
ル−3,6−ジハロゲンベンゼン、1−ノルマルヘキシ
ル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−シクロヘキシル
−2,5−ジハロゲンベンゼンなどのアルキル置換ジハ
ロゲンベンゼン類またはシクロアルキル置換ジハロゲン
ベンゼン類;1−フェニル−2,5−ジハロゲンベンゼ
ン、1−ベンジル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−
p−トルイル−2,5−ジハロゲンベンゼン等のアリー
ル置換ジハロゲンベンゼン類;4,4’−ジハロビフェ
ニル等のジハロビフェニル類:1,4−ジハロナフタレ
ン、1,6−ジハロナフタレン、2,6−ジハロナフタ
レン等のジハロナフタレン類などを挙げることができ
る。
【0023】これらのジハロゲン化芳香族化合物におけ
る2個のハロゲン元素は、それぞれフッ素、塩素,臭素
またはヨウ素であり、それらは同一であってもよいし、
互いに異なっていてもよい。
【0024】これらの中でも、好ましいのはジハロゲン
ベンゼン類であり、特に好ましいのはp−ジクロロベン
ゼンを50モル%以上含むものである。
【0025】(5)使用割合 重合時のリチウムの使用割合(リチウム濃度)の制御
は、非プロトン性有機溶媒1リットル当たり3.6モル
以上となるようにリチウム化合物と溶媒の仕込み量を調
整して行う。3.6モル/リットル以上であると安定分
散(液滴状でポリマー相が分散する)を得ることができ
る。3.6モル/リットルより小さいとポリマー相が塊
状となり攪拌翼等に付着することがある。イオウ化合物
として硫化水素を用いた場合、その硫化水素に対する、
水酸化リチウムおよび/またはN−メチルアミノ酪酸リ
チウムの使用割合(モル比:水酸化リチウムおよび/ま
たはN−メチルアミノ酪酸リチウム/硫化水素)は、通
常1.80〜3.00、特に1.95〜3.00であ
る。硫化水素に対する水酸化リチウムおよび/またはN
−メチルアミノ酪酸リチウムの使用割合が前記範囲内に
あると、重合反応が一層円滑に進行する。
【0026】同様に、ポリハロゲン化芳香族化合物に対
する硫化水素の使用割合(モル比:硫化水素/ジハロゲ
ン化芳香族化合物)は、通常0.90〜1.30、特に
0.95〜1.25である。ポリハロゲン化芳香族化合
物に対する硫化水素の使用割合が前記範囲にあると、重
合反応が一層円滑に進行する。
【0027】同様に、非プロトン性有機溶媒に対する硫
化水素の使用割合(モル比:硫化水素/非プロトン性有
機溶媒)は、通常0.05〜0.30、特に0.05〜
0.25である。なお、この非プロトン性有機溶媒の量
は、N−メチルアミノ酪酸リチウムを用いる場合、仕込
んだ非プロトン性有機溶媒の量と、このN−メチルアミ
ノ酪酸リチウムと硫化水素との反応により生成した非プ
ロトン性有機溶媒の量との合計量である。非プロトン性
有機溶媒に対する硫化水素の使用割合が前記範囲内にあ
ると、重合反応が円滑に進行し、また、連続重合に適し
たものとなる。
【0028】本発明においては、必要に応じて、活性水
素含有ハロゲン化芳香族化合物、一分子中に3個以上の
ハロゲン原子を有するポリハロゲン化芳香族化合物、お
よびハロゲン化芳香族ニトロ化合物などの分岐剤を適当
に選択して反応系に添加し、これを使用することもでき
る。
【0029】必要に応じて使用される前記分岐剤の使用
割合は、前記硫化水素1モルに対し、通常、0.000
5〜0.05モル、好ましくは0.001〜0.02モ
ルである。
【0030】2.重合操作 本発明においては、前記非プロトン性有機溶媒中にて、
水酸化リチウムおよび/またはN−メチルアミノ酪酸リ
チウムと、液状または気体状のイオウ化合物と、ポリハ
ロゲン化芳香族化合物とを、リチウムの非プロトン性有
機溶媒に対する使用割合を制御しながら重縮合してポリ
アリーレンスルフィドを製造する。以下、本発明を各工
程順に説明する。
【0031】(1)仕込み工程 この工程では、硫化水素、水酸化リチウムおよび/また
はN−メチルアミノ酪酸リチウム、ポリハロゲン化芳香
族化合物および非プロトン性有機溶媒を、たとえば重合
反応器内に仕込む。前記各成分の仕込み量は、前述した
使用割合の範囲内のものとする。
【0032】これら各成分を仕込む際の各成分の添加順
序に特に制限があるわけではないが、以下の三方法を仕
込み処方の好適例として挙げることができる。
【0033】まず、水酸化リチウムおよび/またはN
−メチルアミノ酪酸リチウムとジハロゲン化芳香族化合
物との非プロトン性有機溶媒溶液を調製し、この非プロ
トン性有機溶媒溶液に硫化水素を吹込み、溶解させる。
【0034】あらかじめ硫化水素を吹込み、溶解させ
た非プロトン性溶媒溶液を、水酸化リチウムおよび/ま
たはN−メチルアミノ酪酸リチウムとポリハロゲン化芳
香族化合物とに混合する。
【0035】水酸化リチウムおよび/またはN−メチ
ルアミノ酪酸リチウムの非プロトン性有機溶媒溶液に硫
化水素を吹込み、溶解し、次いでポリハロゲン化芳香族
化合物を添加する。
【0036】なお、液状又は気体状のイオウ化合物を投
入する(吹込む)際の系の温度は、通常、常温であるが
170℃未満とすることが好ましい。さらに好ましくは
150℃未満、中でも130℃未満が最も好ましい。1
50℃以上の場合、固体状の硫化物が析出するおそれが
ある。
【0037】また、硫化水素を用いる場合、その吹き込
む際の圧力は、常圧でも加圧してもよい。吹き込み時間
としては、特に制限はなく、通常は10〜180分程度
とすることが好ましい。吹き込み速度も特に制限はな
く、通常は10〜1000cc/分程度とすることが好
ましい。
【0038】(2)錯体合成工程 この工程では、水酸化リチウムおよび/またはN−メチ
ルアミノ酪酸リチウムと硫化水素とから錯体を合成す
る。
【0039】合成条件として、温度は100〜200℃
であり、130〜150℃が好ましい。この温度範囲
で、反応系を10分〜5時間、好ましくは1時間〜2時
間かけて静置もしくは攪拌する。このような合成条件の
下では特に上記錯体が好適に形成される。
【0040】(3)予備重合工程 本発明においては、必要に応じて非プロトン性有機溶媒
中で、水酸化リチウムおよび/またはN−メチルアミノ
酪酸リチウムと硫化水素とポリハロゲン化芳香族化合物
との予備重合を、このポリハロゲン化芳香族化合物の反
応率が80〜99%、好ましくは80〜95%になるよ
うに、予備重合を行うことが好ましい。
【0041】ポリハロゲン化芳香族化合物の反応率が上
記割合になるように予備重合を行ってから後述する重合
を行うことにより、溶液粘度が0.20以上のポリアリ
ーレンスルフィドを効率良く製造することができる。ポ
リハロゲン化芳香族化合物の反応率が80%未満である
と高分子量のポリアリーレンスルフィドを製造すること
ができないことがある。
【0042】なお、この予備重合におけるポリハロゲン
化芳香族化合物の反応率は、予備重合工程後の脱水工程
中に留出したポリハロゲン化芳香族化合物の量を仕込ん
だポリハロゲン化芳香族化合物の量から引いた値から求
めることができるし、また、脱水を行わない場合には、
予備重合後の反応液中のポリハロゲン化芳香族化合物の
量を仕込んだポリハロゲン化芳香族化合物の量から引い
た値より求めることができる。ポリハロゲン化芳香族化
合物の定量分析は、脱水を行った場合の留出液および脱
水を行わない場合の反応液中のポリハロゲン化芳香族化
合物のガスクロマトグラフィー分析により行うことがで
きる。
【0043】(4)脱水工程 本発明においては、さらに高分子量のポリアリーレンス
ルフィドを製造しようとするときには、必要に応じて脱
水工程を採用するのが好ましい。脱水工程は、前記錯体
合成工程と予備重合工程との間にあっても良く、予備重
合工程と重合工程との間にあっても良く、また、錯体合
成工程と予備重合工程との間および予備重合工程と重合
工程との間の両方にあっても良い。
【0044】脱水条件としては、温度として通常50〜
180℃、好ましくは130〜160℃、圧力としては
減圧であっても加圧であっても良く、通常は1mmHg
〜10kg/cm2 の範囲の中から適宜に選択される。
脱水雰囲気は、通常不活性ガス雰囲気たとえば窒素ガス
雰囲気が採用される。
【0045】脱水の程度として、反応が100%進行し
た場合に生成する水分量に対する水分量として70%以
上、好ましくは1〜2時間をかけて80%以上の水分が
留出するまで脱水を行うのが良い。このように70%以
上の水分が留出するまで脱水を行うと高分子量のポリア
リーレンスルフィドをより確実に製造することができ
る。
【0046】脱水量の確認は、留出液中の水分をガスク
ロマトグラフィー分析により定量することにより行うこ
とができる。
【0047】(5)重合工程 この工程では、まず、必要に応じて上述の脱水工程で得
られた反応液から脱イオウ操作、たとえば脱硫化水素操
作によって硫黄分を調整することが好ましい。すなわ
ち、後述するポリハロゲン化芳香族化合物の反応を行わ
せるためには、系内に存在する硫黄/リチウム比を1/
2(S原子/Li原子モル比)以下にすることが好まし
く、1/2にコントロールすることがさらに好ましい。
1/2より大きい場合、反応が進行しにくいためPAS
樹脂の生成が困難となる。コントロールする方法として
は特に制限はないが、たとえばアルカリ金属塩化物また
はアルカリ土類金属塩化物を分離するために吹き込んだ
硫黄化合物、たとえば、硫化水素を、アルカリ金属塩化
物またはアルカリ土類金属塩化物の分離後、系内の液体
部分に窒素バブリング等を施し除去することにより、系
内に存在する硫黄の合計量を調節することができる。こ
の場合、加温してもよい。また、水酸化リチウムやN−
メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)等のリチウム塩
を系内に加えることによりコントロールしてもよい。
【0048】前記予備重合工程の終了後、または予備重
合工程の終了後等に必要に応じて実施される脱水工程の
後に、重合工程を実施する。
【0049】反応容器としては、たとえば、1リットル
のステンレス製オートクレーブ(攪拌翼として、パドル
翼を備え、回転数300〜700rpm)を挙げること
ができる。重合温度としては、230〜280℃が好ま
しく、重合時間としては0.1〜10時間が好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の投入量としては、前述の
ようにポリハロゲン化芳香族化合物/系内に存在する硫
黄=0.9〜1.3(モル比)の範囲から選択すること
が好ましく、0.95〜1.25がさらに好ましい。
【0050】(6)後処理工程 前記重合反応によって合成したポリアリーレンスルフィ
ドは、たとえば、濾過または遠心分離等による標準的な
方法により、直接に反応容器から分別したり、または、
たとえば水および/または稀釈した酸等の凝集液を添加
したのちに反応溶液から分別して、単離することができ
る。
【0051】単離した重合体は、付着している不純物あ
るいは副反応物などを除去するために、通常、水、NM
P、メタノール、アセトン、ベンゼン、トルエンなどの
洗浄溶剤を用いて洗浄することが望ましい。
【0052】また単離しなくても、反応溶液から溶媒を
留去して回収し、残渣を前述のように洗浄することによ
って重合体を得ることもできる。なお、回収した溶媒は
再使用に供することもできる。
【0053】本発明の方法においては、以上のようにし
て、溶液粘度(ηinh )が0.20以上でありメルトイ
ンデックス(MI)が0〜1,000g/10分である
ところの、十分に高分子量であって、ある場合には、ゲ
ル形成性であると共に、粒径が0.5〜5mmであると
ころの、粒径の制御された粒状のポリアリーレンスルフ
ィドを、簡略化された工程で容易にかつ安定に得ること
ができる。なお、この発明による粒状とは、通常顆粒状
であるがビーズ状であってもよい。また、前記溶液粘度
は、粒状のポリアリーレンスルフィドをα−クロルナフ
タレンに0.4g/dlの濃度になるように溶解し、2
06℃の温度でウベローデ粘度計を使用して測定された
値である。
【0054】また、反応液中にLiClとして存在して
いるLiイオンを回収するため、系内にアルカリ金属の
水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物たとえば水酸化
ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化マグネシウム等を
投入してもよい。中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
その投入量は、リチウムイオン1モルに対し、水酸基が
0.90〜1.1モル、好ましくは0.95〜1.05
モルになるようにする。1.1モルを超えても水酸化リ
チウムの生成には支障はないが、アルカリ金属(土類金
属)水酸化物の原単位の増加や後続の操作との関連で生
成PASの純度の低下を招くことがあるので好ましくな
い。また0.90未満の場合リチウムが塩化物として溶
解したままとなり、リチウムのロスになる。この場合の
反応温度は、特に制限はないが、アルカリ金属水酸化物
またはアルカリ土類金属水酸化物を水溶液状で投入する
場合、通常室温〜230℃、好ましくは65〜150℃
であり、固体状で投入する場合には、通常60〜230
℃、好ましくは90〜150℃である。反応温度が低い
場合、溶解度が低く、反応速度が著しく遅くなる。反応
温度が高い場合NMPの沸点以上になり、加圧下で行わ
なければならずプロセス的に不利になる。また、反応時
間は、特に制限はない。
【0055】このようにして得られたポリアリーレンス
ルフィドは、必要に応じて種々の脱塩処理を行って、重
合体中の塩化リチウムなどの塩含有量をさらに低減して
も良い。
【0056】本発明により得られたポリアリーレンスル
フィドから各種の製品を成形する場合には、ポリアリー
レンスルフィドに必要に応じて他の重合体、顔料、グラ
ファイト、金属粉、ガラス粉、石英粉、タルク、炭酸カ
ルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、各種ウィスカーなど
の充填剤、安定剤、離型剤などを適宜配合することがで
きる。
【0057】本発明により得られたポリアリーレンスル
フィドは、各種成形品の材料、たとえばフィルム、繊
維、機械部品、電気部品、電子部品などの材料として好
適に利用することができる。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的
に説明する。 (1) 水酸化リチウム(LiOH)を用いた場合(i) 水酸化リチウム 関東化学(株)製純度98%のものを用いた。 ii 硫化水素−Li錯体の合成 撹拌翼のついた500mlガラス製セパブルフラスコに
N−メチル−2−ピロリドン415.94g(4.2モ
ル)、前記(i)の無水水酸化リチウム36.79g
(1.5モル)及び脱イオン水27.0g(1.5モ
ル)を入れ、130℃に昇温した。昇温後硫化水素を7
00ml/min.の供給速度で35分間液中に吹き込
んだ。硫化水素を吹き込む間の液温は常に130℃を保
つ様に制御した。硫化水素の供給を停止し、液中のS
(硫黄)量を定量した結果、1.182モル吸収されて
おり従ってS/Li比(モル比)=0.79であった。
また、錯体の合成中若干のNMPの流出が見られた。得
られた錯体を分析した結果、錯体1g当たりのS,L
i,NMP量はそれぞれ、S:2.938×10-3(モ
ル/グラム)、Li:3.730×10-3(モル/グラ
ム)、およびNMP:0.8771(グラム/グラム)
であった。
【0066】[実施例1] 撹拌翼のついた0.3リットルのガラス製オートクレー
ブに、N−メチル−2−ピロリドン22.06g(0.
222モル)、p−ジクロロベンゼン22.05g
(0.150モル)、前記 ii で合成した錯体51.
05g(0.15モル)、及び前記(i)の無水水酸化
リチウム2.87g(0.117モル)、トリクロルベ
ンゼン0.408g(0.0022モル)を入れ、密封
系で240℃に加熱しながら30分かけて撹拌し予備重
合を行った。次いで、260℃に昇温し、260℃を保
ちながら3時間かけて重合を行った。この場合、リチウ
ム濃度(Li/NMP)は4.74モル/リットルであ
った。重合中の分散状態を観察したところ、ポリマー相
は液滴状に均一分散していた。重合反応の終了後に、反
応系を冷却し、得られた固形分を水及びアセトンで順次
洗浄し、乾燥を行うことによりポリアリーレンスルフィ
ドを15.32g(収率93.5%)得た。得られたポ
リアリーレンスルフィドをα−クロルナフタレンに0.
4g/dlの濃度になるように溶解し、206℃の温度
でウベローデ粘度計を使用して粘度測定を行った。その
結果、このポリアリーレンスルフィドの溶液粘度ηinh
は、無限大であった。
【0067】[比較例1] 重合原料としてN−メチル−2−ピロリドン:39.9
2g(0.403モル)、p−ジクロロベンゼン:1
7.28g(0.118モル)、前記 ii で合成した
錯体:40g(0.118モル)、および前記(i)
無水水酸化リチウム:2.20g(0.090モル)を
用意した。上記原料を用い、実施例1と同様の操作を行
った。この場合のリチウム濃度(Li/NMP)は3.
28モル/リットルであった。その結果、ポリアリーレ
ンスルフィド13.71g(収率89.3%)を得た。
なお、この時の重合中の分散状態は、ポリマー相が塊状
であった。得られたポリアリーレンスルフィドの溶液粘
度ηinhを実施例1と同じ操作で測定したところ、0.
345であった。
【0068】
【0069】[表1]
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【発明の効果】以上説明したように本発明のポリアリー
レンスルフィドの製造方法によれば、重合系においてリ
チウム濃度(Li/NMP)を制御することでポリマー
相の分散安定化が可能となり、PAS製造プロセスにお
いてポリマーの翼、バッフル等への付着防止反応液
の抜出しの際の閉塞防止が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリアリーレンスルフィドの製造工程
および重合中の分散状態を模式的に示す流れ図である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非プロトン性有機溶媒中にて、水酸化リ
    チウムと、液状または気体状のイオウ化合物と、ポリハ
    ロゲン化芳香族化合物とを重合させてポリアリーレンス
    ルフィドを製造する方法において、重合時のリチウム濃
    度を、前記非プロトン性有機溶媒1リットル当たり3.
    6モル以上に制御することを特徴とするポリアリーレン
    スルフィドの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記非プロトン性有機溶媒が、N−メチ
    ル−2−ピロリドンであることを特徴とする請求項1記
    載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記液状または気体状のイオウ化合物
    が、硫化水素であることを特徴とする請求項1または2
    記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記ポリハロゲン化芳香族化合物が、パ
    ラジクロロベンゼンを50モル%以上含むものであるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリ
    アリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記重合が、連続重合であることを特徴
    とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアリーレ
    ンスルフィドの製造方法。
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