大河『べらぼう』実らなかった禁断の初恋…蔦屋重三郎(横浜流星)と瀬川(小芝風花)の関係は史実?
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」皆さんも楽しんでいますか?
第9回放送「玉菊燈籠(たまぎくどうろう)恋の地獄」では、20年越しに初めて自分の想いに気づくも、あまりにみっともなさ過ぎた蔦屋重三郎(横浜流星)の苦演に胸が痛みます。
※第9回放送の解説記事↓
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瀬川が鳥山検校(市原隼人)に身請けされる。その結果は最初から分かっていても、視聴者に「まさか」「そうなるかも」と思わせ、いつしか「そうなって欲しい」と願わせずにいられない見事な脚本でした。
結局は老獪な松葉屋夫婦の術中にハマり、自身の恋よりも遊女たちの希望となる使命を選んだ瀬川。史実どおりに回収された形ですが、内に悲愴感を秘めた瀬川の凛然たる決断が、二人の悲劇を一層引き立てています。
ところで蔦屋重三郎と五代目瀬川が幼なじみで、恋仲となりながら引き裂かれたのは史実なのでしょうか。
今回は史料を確認できる限りで二人の関係に迫ってみたいと思います。
フィクションでよかった?二人の悲恋
結論から先に言うと、蔦屋重三郎と五代目瀬川が恋仲であったというのは、大河ドラマの創作でしょう。
二人が幼馴染であったという設定にも、史料的な裏付けはありません。
そもそも蔦屋重三郎は茶屋の養子(後に本屋)、瀬川は松葉屋の遊女。劇中でも触れられている通り、吉原者と遊女の恋仲はご法度でした。
もし露顕すればタダでは済まされなかったはずです。だからこそ「歴史の表には出て来ないけど、だからこそ実は……」というアイディアがひらめいたのでしょう。
遊女となった幼馴染。彼女への想いに気づいた朴念仁が、禁断の初恋に身を焦がす……少なくない視聴者が、固唾を呑んで見守ったことと思います。
しかし突きつけられた遊女の現実。忘八夫婦がその気になれば、愛する瀬川を年季明け前に殺すことなど造作もありません。
しがない本屋風情が年季明けに身請けしたところで、その金額はタカが知れています。誰もが(それこそ駿河屋の親爺様でさえ)勘づくほど、誰もが知っていた二人の絆。なればこそ、いざ恋に落ちてしまえば、その結末は余りにも見え透いていました。
まったく哀れと言うよりなく、これがフィクションであったのが、せめてもの救いと言えるのではないでしょうか。