データマネジメントの優先順位は向上の兆しも、人材不足の課題は解消されず―データマネジメントの現在地:第1回
2025年2月20日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)
デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、企業はデータに基づいた意思決定や新たな価値創造を求められている。そして今、生成AIの登場によってデータマネジメントは新たな局面を迎えている。2024年12月刊行の調査レポート『データマネジメントの実態と最新動向2025』(インプレス刊)では、データ品質やマスターデータ管理、データ連携/統合、推進体制/人材育成など、多様な観点から国内企業の取り組みの実態を明らかにした。本連載では、3回にわたって調査結果の一部を紹介し、データマネジメントの現在地を把握するとともに活動のあり方を考察する。
データマネジメントの優先順位は徐々に向上
周知のように、近年、社会が企業に対してコンプライアンスを求める風潮が高まっている。問題が発覚した企業の多くがコンプライアンスの不備を指摘され、ガバナンス体制に疑問を呈される。非難の矛先は当然、経営層や事業責任者のマネジメント不足に向けられるようになる。
この関係性はデータの世界でも同様だ。大ブームとなっている生成AIの活用は、企業の業務効率化や新たな価値創造につながる可能性を持つが、同時に倫理的な問題や著作権侵害のリスクも孕んでいる。これらのリスクを適切に管理し、責任あるAI利用を実現するためには、コンプライアンス体制の整備とともに、データガバナンスの強化が不可欠となる。そのデータガバナンスを実施するために不可欠なのがデータマネジメントへの継続的な取り組みだ。
では、実際に企業がデータマネジメントに対してどれだけ前向きに取り組んでいるのか。IT投資予算に占めるデータマネジメントに関わる投資の割合を聞いたところ、「5%未満」と回答した企業が最も多く36.6%だったが、前年の54.1%からは17.5ポイント減少している。「10%以上、20%未満」は8.5%、「それ以上」は2.0%にとどまっているものの、前年比ではそれぞれ3.6ポイント、0.8ポイント増加している(図1)。
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せっかく投資を増やしたとしても、その効果が見えなければ継続的な投資にはつながらない。データマネジメントに関する投資の効果が、システム投資効果として明確になっているかを聞いたところ、「明確になっている」と回答したのはわずか4.0%だが、前年比では2.1ポイント増加している。一方、最も多かったのが「明確化していない」で53.4%に達したが、前年から4.5ポイント減少している(図2)。
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図3は、データマネジメントを推進することにより、具体的にどのような効果を期待しているかの回答だ。「業務の効率化・生産性の向上」が68.4%で最も高く、 「デジタルトランスフォーメーションの推進」が49.4%、「意思決定の迅速化」が43.9%で続いた。「データドリブン経営の実践」は27.3%、「ビジネス収益への直接的な貢献」は22.8%だった。
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●Next:データマネジメントを専門とする部署や人員は増加傾向
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