「知り合いは指を喰われた」
もしいるのであれば、従来の棲み分けの構図は崩れたことになる。新たな種としてハイブリッド個体の調査や対策などが急務となるのだ。
そこでハイブリッド個体を追いかけて山で仕事をする、複数の人たちに事情を聞いてみた。すると前出の男性以外にも、秋田県内で土木関係の会社を経営している男性がさらなる詳細を話してくれた。
「俺も好きで山には入るけれど、ここ数年は怖くてよく入らね。今回、人が喰われたところのクマは、他のとは違うんだよ。何年か前に何人もやられた(2016年に4人の男女を襲って喰ったクマ『スーパーK』のこと)山(熊取平)から四角岳、それから今回の発荷峠は地続きなんだ。
あのあたりには沢も多くて、人を怖がらないクマが何頭もいるんだよ。熊の餌場なんだよ。特に今回の場所はいいタケノコが採れることで知られていて、それだけクマも多いということだ。タケノコは今の時期の主食だからな。
実は、内々で処理されているけれど、2年前にもあそこでクマにやられた人がいる。別の場所だけど、知り合いは指先を喰われたよ。タケノコを入れたコンテナをクマと引っ張り合いした仲間もいた。そんなことがあっても、役所になんか面倒だから届けねえ。知っている人間は気味悪いから、あのあたりには入らね」