【映画を早送りで観る理由 #4 好きなものをけなされたくない人たち 前編】
映画やドラマやアニメを倍速視聴、もしくは10秒飛ばしで観る習慣に対する違和感を、記事「『映画を早送りで観る人たち』の出現が示す、恐ろしい未来」に書いたところ、大きな反響があった。その内容を深堀りした記事を全4回で配信する本企画、最終回は“視聴者のワガママ化”をテーマに前後編でお届けする。
#1(前編) 映画やドラマを観て「わかんなかった」という感想が増えた理由
#1(後編)『逃げ恥』『シン・エヴァ』…「リテラシーが低い人を差別しない」作品が時代を制する
#2 『オタク』になりたい若者たち。倍速でも映画やドラマの『本数をこなす』理由
#3 失敗したくない若者たち。映画も倍速試聴する「タイパ至上主義」の裏にあるもの
前述の記事を読んだ知り合いの脚本家は、「本来シナリオは、2時間の映画なら2時間かけて観る想定で書かれているのに……」とつぶやいた。当然の嘆きだろう。
同じように嘆いている作り手は多いはずだ。早送り用には撮っていないし、書いていない。それは、漫才師がコンマ1秒単位で“間(ま)”を計算して披露するネタを、倍速で観てほしくはないのと同じだ。
しかし、件の記事にはかなり多くの“反発”も寄せられた。「どう観ようが勝手」「観方を押し付けるな」。作り手が普通に観てほしいと願っても、関係ない。「僕・私にとって、もっとも快適な形で作品を提供しない作り手が悪い」という気分すら見え隠れする。
何か、作品鑑賞というものの根本的な定義が揺らいでいるようにも思える。
視聴者は“ワガママ”になったのか
TwitterをはじめとしたSNSの普及により、視聴者や読者が作者に対して直接、公開でメッセージ・感想・罵詈雑言を届けられるようになった。その中には、ファンを自称する者が、「あのキャラは、そんなこと言いません」「そのラストは違うと思います」といったリプを飛ばしてくることもある。いわゆる“評論”とは違う。ある種の“ワガママ”だ。
昨今聞く、「ハッピーエンドじゃない作品は見たくない」「主人公は清廉潔白であってほしい」も、ワガママの範疇に入れていいのかもしれない。「好きなジャンルはラブロマンス」などとは、これまた異なる嗜好の性質である。
作品に「快適」だけを求める、とでも言おうか。
本シリーズの第1回「映画やドラマを観て『わかんなかった』という感想が増えた理由」で、説明セリフが少ない作品を「不親切」だと怒る観客を、「幼稚になってきている」と評したアニメプロデュース会社・ジェンコの代表取締役社長、真木太郎プロデューサーは、作品に快適だけを求める傾向もまた「観客の幼稚化のひとつでは」と漏らす。
「アニメ界隈というか、ある種のマニア気質のある人たちのあいだには、昔からそういう要素があったけど、それが広がってきてるよね。あとは、仮にそう思っていたとしても、声に出していいかどうかという節度がなくなってる。幼稚化だよ。我慢強さが不足してる。これはもう、全世界的な傾向なんじゃないの」(真木氏)