自動販売機とは、店員による対面販売を伴うことなく消費者に商品の販売を行う、その名のとおり「自動化された店舗」として稼働する機械のことである。また、販売・サービス提供に特化したロボットとみなすこともできる。
省略して「自販機」とも呼ばれる。タグ検索「自販機」。情報量が多いため端的に理解したい人は文頭の「三行で説明」を参照のこと。
コンビニ、温泉と並んで日本で広く普及しているものであり、海外からの観光客に人気のあるものの一つである。飲料だけでも缶・ペットボトル・紙コップと種類があり、飲料以外にも様々なものを販売している。
概要
三行で説明
詳細説明
その歴史は古く、紀元前の古代エジプトにおける聖水の自販機が最古のものであるとされている。
これは、てこの原理を利用し、金貨の重みで聖水を瓶に注ぐという仕組みであった。
日本においては、1888年の煙草の自動販売機が最初であるとされている。その後、1960年代以降から自動販売機の普及は広く進み、2009年時点では全国で520万台以上設置されているという。ただし、21世紀からは普及台数の増加は止まり、おおよそ横ばいの傾向が続いている。
普及台数が最も多い国はアメリカ(2008年末時点で748万台)であるが、国土面積や人口などから考えた場合、最も普及が進んでいるのは日本であるといえる。また、治安の問題などから、日本のように屋外に自動販売機が設置されているような国はむしろ珍しい例である。自動販売機同様に公衆浴場も海外においては恒常的な成立が難しいといわれ日本固有の社会要素として屋外自販機、公衆浴場をわざわざ観光対象にする旅行者もいる。
日本国内における自販金額(日本自動販売機工業会の補足値:2011年)は5兆3,023億円であり3兆6,300億円程度のアメリカに大きく差をつけている。以上のように設置密度の高さやバリエーションの多さなどから日本の自動販売機郡はユニークであるといわれており、自動販売機そのものを観光する外国人も多い。
なお、自販機は道端でよく見かける印象があるが、厳密には公道で物品を販売する行為は禁止されているため、設置場所は必ず店舗やマンションの前などの私有地内である。
種類
種別的には飲料・煙草などに代表される物品販売の物品等自販機と、デジタルカメラプリントなどのサービス情報自動販売機に分かれている。 また、ジュークボックス・アーケードゲーム機・公衆電話などといったサービスを提供するものは自動サービス機と定義され、日本標準商品分類では自動販売機と同じカテゴリに入っている(広義における自動販売機(サービスの販売)とされている)。 そのため自動改札機や両替機も広義での自販機(サービス)である。規模的には大規模な工事を伴うことなく設置できる、筐体として完結しているものに限られていると言え、例えばセルフ式のガソリンスタンドなどは定義的には自動販売機であるが、一般的にはそのように認識されていない(ガソリンスタンドの場合は、防災上の都合で完全な無人にはならない関係もあるものと思われるが)。
変わった所では、ゲームセンターに配置されている、いわゆるトレーディングカードゲームの筐体は、法的な定義は自動販売機である。これは風俗営業法の関係であり、同法にて「ゲームの結果によって景品の提供が行われるゲーム機」は、賭博と見做されて設置が禁止されるためである(なので、排出されるカードの内容はゲームの結果に対応してはならない)。
余談であるが、いわゆる「プライズゲーム」は自販機ではないのか? あるいは厳密には賭博ではないのか? と疑問に思われた方もおられると思われるが、これは「景品市価が粗品程度のもので、取得したものをそのまま提供する場合は、賭博とは見做さない」という、警視庁によるお墨付きを得た特例であり、限りなく法規制に近い自主規制である。
機能・運用
近年では高機能化も進み、ポイントカードに対応したものや、電子マネーに対応したもの、映像による広告を流すためのディスプレイを装備しているものなども存在する。給湯装置を内蔵したカップラーメンの自販機は古くから比較的よく見られたものであるが、電子レンジを内蔵し、冷凍食品を購入後すぐ喫食可能な状態まで加熱して提供する自販機などもある。
運用面での工夫として、専用の容器を使用することで、缶ジュース用の自販機にて菓子などを提供している例や、敢えて販売される商品のサンプルを提示せず、格納される商品も複数種を混ぜ込んで、何が手に入るか分からない形にした、いわゆる「ミステリー自販機」という例もある。ミステリー自販機は商品を選べない代わりに、1本50~100円といった格安価格で販売されているのが通常である。
購入に対して、抽選的なゲーム要素を加えるものとしては、一定確率で無償でもう一つ商品を提供する「当たり付き」が最もポピュラーである。また、より実用的な機能として、大規模災害が発生した場合に無償で飲料を提供するようになっているものや、AEDの格納ケースを兼ねているものなどがある。
また関西を中心に格安自販機が設置されているケースも見られる。主に賞味期限が迫っている売れ残りの飲料や、中堅・中小メーカー等の売れ筋でない飲料を1本50~100円程度で販売しているものである。利益率は低いが、賞味期限が切れてタダで処分するよりはマシということであろう。場所によっては賞味期限が切れた商品を「賞味期限切れです」と堂々と書いて1本10~20円で売っている自販機も実際にあったりする…
電光掲示板を内蔵し、ニュースや広告メッセージを流すようになっている自販機もあるが、これがポケベルを内蔵していたことは意外と知られていない。
資本実装による資本装置主体による産業を装置産業と呼ぶが、自動販売機は文字通り装置産業の代表といえる。
日本においては自動販売機は上記のように生活の端々にまで浸透し、日本を支える社会装置の一つとして動作している。たとえば鉄道の駅などでは自動販売機の一種である券売機が設置され同じく自動サービス機に該当する自動改札があり、構内には飲料物の自動販売機が設置されていることが珍しくない。
今後、日本の少子高齢化が進展し労働力が貴重になればなるほど、待機型販売・サービス作業における廉価な労働資産である自動販売機の重要性は増していくことが想定される。故に(海外と比較して)平和な日本である限り自動販売機が完全になくなることは考えにくいとされる。
詳細については自動販売機の今後を参照。
東北地方太平洋沖地震において
2011年3月11日に発生した大震災において大規模停電のため自販機は沈黙した。その後、通電地域が順次回復するに伴い自動販売機は(当然のごとく自動的に)順次販売を再開。物流が途絶えていた地震地域における貴重な飲料物の供給源となった。
なお、被災者も当然ではあるがきちんとお金を払って自動販売機より飲料物を購入している。
自動販売機が非常時における貯蓄となった事例である。
オートレストラン
オートレストランの記事も参照。
自動販売機によって食品等が売られている(原則は)無人のレストランのこと。食品の提供に使用される自動調理式の自動販売機は、2010年代以降「レトロ自販機」として親しまれるようになった。
自販機コンビニ
ファミリーマートは自動販売機でおにぎりやサンドイッチを販売する「自販機コンビニ」を増やしている。これは事実上のオートレストランのコンビニ版(無人)である。かつてオートレストランを駆逐したコンビニが今度はオートレストランの業態を模倣するのはある種皮肉めいた因縁とも言える。
アクセスポイント
自動販売機を無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントとして提供するサービスが複数存在する。
- FreeMobile
- ホテルなどの内部に設置した自販機にて提供している。
- アサヒ飲料(アサヒカルピスビバレッジ)
- 外部設置型も含めてネットに無料で無線接続できるWi-Fi(無線LAN)が搭載されている。
ピークシフト自販機
簡単に説明すると深夜に冷やしてその分、昼は電力を使わない自動販売機である。
7時から23時までの最長16時間、冷却用電力を「ゼロ」にするもので真空断熱(魔法瓶などのあれ)を利用している。今までも存在したが「ゾーン冷却」はピークシフト自販機においては「全体冷却」に発想転換しており、商品そものもを蓄冷剤とすることで冷却効果をあげている。コカコーラではすでに設置台数が6万台を超えており、2020年までに設置台数の半分が入れ替わる見込みとなている。
自動販売機の今後
自動販売機の設置台数は年々減少を続けている。
大きな理由としては地方都市の人口減少により維持できなくなった例や、一時期の電力不足に伴う売上げ減少による撤去なども大きい。しかしながら外食産業での食券自販機(券類自販機)や自動改札(自動サービス機)なども自動販売機と同じ商品分類から含まれることからわかるように、自動販売機の本質は販売・サービス提供に特化した固定設置型ロボットである為、少子高齢化の進む日本において希少化する人間の変わりに作業を行う自動販売機がなくなることはないと思われる。また、大都市圏においては今まで見たこともないようなレアリティ(希少度)の高い物販・サービスを行う自動販売機が誕生する可能性は今後ますます高まっていくと思われる。またピークカット機能や防犯機能を備えた自動販売機なども出現しており今後も自動販売機の変化は緩やかではあるが続いていくものと見られる。
自動販売機の分類
- 自販機
- 自動サービス機
主な自動販売機
飲料 | 缶・瓶・ペットボトル | 紙パック | 紙カップ | 酒 | |
食べ物 |
お菓子 | アイス | ホットスナック | カップラーメン | おでん缶・ラーメン缶・パン缶 |
冷凍食品 | 野菜 | 卵 | しょうゆ | ポップコーン | |
その他 |
たばこ | ガチャガチャ | 新聞 | 乾電池 | ビデオ |
お守り | LEGO | はんこ | 問題集 | 文庫本 | |
各種チケット・券・カード(入場券・切符・食券・格安券・テレホンカード・テレビカード)・おみくじ・折り紙 | |||||
サービス |
デジタルカメラプリント | おしぼり | 携帯電話充電 | 証明写真 | 精米機 |
コインランドリー | コインロッカー | コインシャワー | コイン洗車 | パチンコ玉貸出 | |
自動改札機 | 駐車場精算機 | コインテレビ | 自動両替機 |
その他
敷地に置き場所さえあれば個人で自動販売機を設置することもできる。電気代や補充の手間はあるが、補充に関しては業者に頼むことで利益は減るが勝手にやってくれる。メニューや値段も好きなものを入れられ、自分で買う分にはタダといえなくもない。(黒字になれば)
自動販売機のようにお金を入れる必要がなく、コップをセットしボタンを押すなど簡単な操作で飲料が出てくるものはドリンクバーと呼ばれる。もちろん無料という訳ではなく、別料金またはサービス料金に含まれているものが多い。お金と広さ・設備があれば個人でも購入可能。(→ドリンクバー)
富士山など山頂や道中にあるものは高価(一本500円など)。ぼったくりではなく運搬費用がかかるのだから仕方ない。「ヘリコプターで山頂まで運べよ」なんて意見も見たことがあるが、全部売れても大赤字なので不可能である。
ただし、一部の遊園地や娯楽施設などにおける自動販売機はぼったくりな価格になりがち。
関連動画
関連静画
関連項目
- 自動販売機の中の人
- 自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う(作品名)
- 1000円自販機
- 料理の一覧
- ニコニコグルメナビ
- 懐かし自販機
- IJOOZ(アイジュース)…シンガポール共和国発祥のオレンジジュースの自販機。
- 飲料の一覧
- 東北地方太平洋沖地震
- ファミリーマート
- ハッピードリンクショップ
- セブンティーンアイス
- あったか~い・つめた~い
- コンビニ
- 仮面ライダーオーズ
- ロボット
- 総務省
- 装置産業
- 駅
- 道の駅
- 海の駅
- ドリンクバー
外部リンク
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