先生から「前時代のジャズ」と言われて
森山 千ちゃんのスタジオがブルックリンにあるので、マンハッタンの中心部のホテルから通って。レコーディングが終わると一緒にご飯を食べて、ジャズの理論を千ちゃんから教えてもらったり。あと、ジャズ学校の先生にも習いました。
野宮 ボーカルレッスン?
森山 じゃなくて、一緒に歌って指導してもらうの。マンハッタン・トランスファーのジャニス・シーゲルさんのお宅に行って教えていただいたときは、ぶっ飛んじゃった。ルルリ~ルル、ルルリ~ルルルラ~♪って、あんな声ってある!? みたいな声を間近で。
とにかく、ニューヨークへ行って気づいたのは、私のジャズは古いってこと。私はエラ・フィッツジェラルドとかサラ・ヴォーンとか、そういうのを聴いて育ったんです。父がジャズトランペッターだったから、家ではいつもそういう音楽が流れてて。だから、歌うとどうしてもそっちに偏っちゃう。すると先生が「良子さんのジャズは前時代のジャズです」って全否定(笑)。
女史会 え~っ!!
森山 とにかくきれいに、抑揚なく、喉を使わずに歌う。そして、目をつぶらない。もう目から鱗(笑)。
新しいジャズを勉強することで会得した歌唱法
渡辺 でも、自分の歌い方を否定されて、そこからまた新しいものに挑戦するって、難しくないですか?
森山 やる気満々(笑)。やっぱりいいアルバム作りたいし、古臭い歌い方のままでは、それを「いま」作る意味がない。あと、私は声にすごく興味があるんです。ニューヨークの先生は、喉じゃなくて顔のこのへん(眉間と鼻のあたり)から声を出せって言うの。それがどうしてもよくわからなくて。日本に帰ったときに、声楽の先生に質問したんです。お稽古のときにね。
野宮 ああ、子供の頃から師事していらっしゃる……。
森山 そう、坂上昌子先生。14歳からずっとクラシックの声楽を教えていただいていて。先生はいま88歳なんですけれども。
女史会 えーっ!!