AIとロボットが生み出してくれる誰もが暮らしやすい社会についてGMO AI&ロボティクス商事株式会社の内田朋宏社長に聞いた。

インターネット革命後半戦へ向けての使命

内田朋宏氏
GMO AI&ロボティクス商事株式会社 代表取締役社長
内田朋宏氏
GMO AI&ロボティクス商事株式会社 代表取締役社長

 1995年、「すべての人にインターネット」をコーポレートキャッチとして、インターネットインフラをはじめ広告、金融、暗号資産事業など、インターネットに関わるあらゆる事業を進めてきたGMOインターネットグループ(以下GMO)。24年6月には「AIとロボットをすべての人へ。」をミッションに掲げて、「GMO   AI&ロボティクス商事」(以下GMO AIR)が誕生した。

「過去、産業革命はおよそ55年周期で進行してきたと我々は考えています。ウインドウズ95が登場した1995年をインターネット革命の始まりと捉えると、その折り返し地点となる2022年11月、生成AIを使ったサービスであるチャットGPTが登場しました。そこから始まったインターネット革命後半戦は、AIとロボットが主役になると確信しています」と語るのは内田朋宏社長。

「ここから迎えるAI・ロボティクス革命にあって、GMOは率先してAI・ロボット事業に取り組むべきだと考えました。AIとロボット、ドローンの普及、拡大によって様々な社会課題を解決することを使命と感じています」

GMOの総合力でAI環境をトータルで提案

 AI関連企業、ロボットメーカー、ドローンメーカー等と顧客をつなぐ商社であることを目指し、社名にはあえて「商事」の文字を入れた。

「AIとロボットの総合商社になると大々的に宣言したのは、日本で初めてではないでしょうか。すぐれた製品を作るロボットメーカーは多いのですが、求められる場所に届きにくいのが現状です。たとえばプラントや工場でロボットを導入する場合、工程に合わせて非常に多くの種類が必要になります。我々は、細かなニーズに対応する製品を組み合わせて、トータルで提案することができるのです」

国内外の最新型ロボットやドローンを多数集結させて、2024年6月に設立記者会見を開いたGMO AI&ロボティクス商事。9月には「Japan Robot Week 2024」にもブース出展した。
国内外の最新型ロボットやドローンを多数集結させて、2024年6月に設立記者会見を開いたGMO AI&ロボティクス商事。9月には「Japan Robot Week 2024」にもブース出展した。

 幅広い解決策を提示できるのは、GMOの総合力によるところも大きい。

「我々にはグループならではの4つの強みがあると考えています。まず、ロボットを安定して稼働させるために必要な通信回線の整備。通信事業はGMOの創業事業であり、得意とする分野です。そしてセキュリティ問題。GMOが誇るホワイトハッカーチームのGMOサイバーセキュリティ byイエラエやFlatt Securityは、世界的なサイバーセキュリティの大会で世界一に輝いた実力者集団です。またロボットから得られる映像などの情報を解析し、有用なデータを得るためのAIシステム開発も得意とするところです。さらに我々のサーバを使ったデータホスティングのサービスにより、データを国内にとどめることが可能です。GMOだからこそ、これらをトータルで提供することができるのです」

 加えて、GMOには金融サービスもあるため、リース、レンタルなどの販売方法に対応することも可能だ。

「普及しつつあるとはいえ、ロボットはまだまだ高額で、一気に導入するのはハードルが高い。それを月額販売することで、お客様も導入しやすくなります。メーカー側も、我々に一括で卸して販売を任せていただくことで、次の開発に資金を回せるようになり、双方にとってメリットが大きいと考えています」

国内外のあらゆるロボット、ドローンメーカーやAI関連企業と協力し、ネットインフラ、AI関連ノウハウを組み合わせて最良のサービスを提案できるのはGMOならではの強み。
国内外のあらゆるロボット、ドローンメーカーやAI関連企業と協力し、ネットインフラ、AI関連ノウハウを組み合わせて最良のサービスを提案できるのはGMOならではの強み。

すべての人がAIロボットの恩恵を受ける未来へ

 このまま日本の人口が減少し続けると、2040年には国内の働き手が1100万人不足するという報告がある。人間の労働力をロボットが代替することへの期待は大きい。

「すでに始動している案件はプラントや工場などがメインです。危険を伴う現場での作業や深夜の作業などは、とくにロボットの導入が待たれる分野です。労働力をAIロボットが代替することで効率化が進めば、地方における人手不足解消の一助にもなるのではないかと考えています」

GMOインターネットグループのデザイナーが生成AIを活用して作成した、GMO AIRの事業イメージ画像。
GMOインターネットグループのデザイナーが生成AIを活用して作成した、GMO AIRの事業イメージ画像。

 AIチャットサービスの進化も著しく、対話もスムーズになってきた。今後は、街中でAIを搭載したロボットを見る機会も増えるだろう。

「たとえば美術館や博物館で対話しながら解説してくれるロボットは、すぐにでも開発されると考えています。1年以内には街中でAIロボットを見かける機会が飛躍的に増え、老若男女、すべての人にその便利さを実感していただけるでしょう。遠からず、AIロボットは生活にあって当たり前の存在になるはずです。我が社が誕生した24年は、ヒューマノイド元年であるとも考えています」

「AIで自律的に考えて動くヒューマノイドの誕生もそう遠い先ではない」と未来を見据える内田社長。「Japan Robot Week 2024」では協力企業のヒューマノイドや四足歩行ロボットなど最先端のモデルを展示して注目を集めた。
「AIで自律的に考えて動くヒューマノイドの誕生もそう遠い先ではない」と未来を見据える内田社長。「Japan Robot Week 2024」では協力企業のヒューマノイドや四足歩行ロボットなど最先端のモデルを展示して注目を集めた。

 こうしたGMO AIRの理念は、SDGs17の目標のうち、9番目の「産業と技術革新の基盤を作ろう」に対応している。社名を「商事」とした意図は、そこにもある。

「我々は、戦後、経済を見事に復興させた旧財閥系商社の功績をリスペクトしています。これから、ロボットとAIが日本に普及する中で、我々が新たな日本経済の成長に寄与することができれば嬉しい。100年後、GMOがそのような存在であったと言ってもらえるようになりたいと願っています」

photo(portrait):Miki Fukano
text:Ayaka Sagasaki
design:Better Days