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僕は発展途上技術者

iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その4

追記


前回までの記事


» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その1

» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その2

» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その3


「かなぶん」のページはこちら ↓

» ひらがなゲーム「かなぶん」


その3を書いてからだいぶ間があいてしまった。あまり引っ張ると、意欲が萎えて途中で尻切れトンボになりそうなので、特にこれから iPhone アプリを開発しようという人のために、失敗談も入れながら参考になりそうなポイントを列挙して、このシリーズを終わりにしようと思う。


かなぶん苦難


開発者の KCLAB さんが精力的に宣伝してくれたり、まわりでもご祝儀で買ってくれる人がいて、リリース直後はいくつか売れた。その後は大したことはないながらもなぜか週に数個は売れていったのは、評価が常に平均で★4個を維持していたから、また似たゲームのないオリジナルなものだったからと自分では思っている。


そのくらいの売れ行きでもゲーム > 教育のカテゴリ別のランキングで2ページ目(さらに25件...を一回押したページという意味)くらいには載っていたので、ランキングを見てインストールしてくれた人もいたのだろうと推測している。


そうこうするうちに、一年ごと更新の Developer Program の期限が近づいてきた。案内のメールがきて、更新の手続きを取ったと思っていたのが、実は最後の確認のステップがあることに気付かず忘れてしまうという大失態を犯してしまう。


更新日がやってきて、突然かなぶんが App Store から姿を消してしまった。App Store のランキングがおそらく過去数日のアプリのダウンロード数で決まると思われるので、更新の手続きをあわてておこなって App Store に復活した時には、はるか圏外に落ちてしまっていた。幸い、まだダウンロード数が大したことがなかった時だったので影響は大きくはなかったが、これがある程度ダウンロード数が増えてきたときに起こっていたらと思うと恐ろしい。Developer Program の更新には要注意である。


かなぶん単打


そしてかなぶんの現在へと続く。


2月末好調で一時はゲーム > 教育で一位になったけれども、いまはだいぶ順位を落としてしまった。単打(シングルヒット)がやっとでたくらいと位置づけている。まだまだこれからいろいろと手を打っていこうとは思っているが、題名を「そこそこ売れるようになった訳」としているので、2月末までに具体的におこなったことを列挙してみる。


■ 無料版のリリース

BMI健康録という体重などの健康パラメーターを記録・管理できるアプリを出している minolasoft さんに、「無料版を出したら?」というアドバイスをもらった。


» BMI健康録

icon

BMI健康録は無料版と有料版があり、無料版のダウンロード数は有料版と比べて桁が変わる、気に入った人は有料版へという導線をうまく使えば有料版の売上を伸ばすことができると聞き、やってみようと思った。


配慮した点がいくつか。


海外では Lite 版という名称が良く使われているが、日本人にはなんのことだかわからない人もいると思い Free 版という名称にした。


無料版はスーパーの試食と同じだと思っている。試食では実際に売っているものとまったく同じものを少しだけ出す。味には自信があるから、ちょっと食べてもらえば、何人かのお客さんは気に入ってくれて買うだろうということだ。それと同じように、かなぶんではできるだけ有料版と同じ体験をしてもらおうと思い、無料版では、ランダムに変わる盤面を固定にし、得点の登録ができないというゲームの本質にはあまり関係ない部分に制限をかけるようにした。固定の盤面とは言え、ルールとインターフェースはまったく同じ、ゲームの楽しさは有料版と変わらないものを提供できるようにしている。


■ 値段の話

僕はいままでおもにウェブサービスを作ってきて、あわよくばそれで食っていこうと思っているのだけれど、iPhone アプリは値段を自分で付けて売ることができるという点でウェブサービスと大きく違って面白い。ウェブサービスは無料が基本、マネタイズするのに手っ取り早い方法は Adsense などの広告のタグをつけることだが、これってある意味怠慢だと思っている。「無料だからクオリティ悪くても文句言わないでね」「無料だからサービス止まってもいいでしょ」という逃げが心のどこかにはあると思う。


iPhone アプリを有料で売ろうという場合にはその逃げは通用しない。100円でも200円でも、買ってくれた人からお金をもらうのだから、それ相応のものを提供しなくてはいけないし、対応もちゃんとしないといけない。


値段をつけることによってアプリを売るためにできることの幅が広がる。たとえばキャンペーン価格とかいって、値下げすることによってお得感をだし、ダウンロード数を伸ばすとか、〇〇してくれた方には値下げしますよー、なんてことができる。まだやったことはないけれど、たとえばブログにもっと取り上げてもらおうと思ったら、ブログに書いてくれたら無料にします、みたいなキャンペーンをやることができる。始めから無料で提供しているサービスだとこんなことはできない。


面白いのはユーザーからのレビューなど、ユーザーからのレスポンスも有料と無料とでは大きく違う。無料版の App Store でのレビューは今200件を超えているけれどもコメントは2件ほどしかついていない(アンインストールのときに星の評価だけを求められるからというのはあると思うけど)。それに比べて有料版のレビューの方は、無料版に比べて数は少ないけれど、ちゃんとテキストで書いてくれている方が多く、また内容も非常に参考になる。自分に置き換えてみたら当たり前なのだけれど、お金を出して買ったものに関しては、不満があれば文句も言うしこうしてほしいという要望もちゃんとすると思う。無料の場合は、面倒だからまあいいか、で済ませてしまうことが多いと思う。


App Store では115円が最低の値段。次が230円、その次が350円と続く。ものにもよるとは思うのだが、個人的には230円が最適な値段ではないかと思っている。かなぶんは最初115円で売っていたが、それ相応の価値があるだろうと思い230円に値上げした。無料版をだしたときと同じタイミングなので正確な影響はわからないのだけれど、230円にしてもほとんどダウンロード数に影響はないんじゃないかという印象だ。これも自分の印象だけが頼りなのだけれど、僕は App Store で115円のアプリはポチっと買ってしまう。230円も「まあ、いいか」と思って抵抗なく買ってしまう値段だと思っている。しかし350円となると、「うーむ」とちょっと考えて躊躇する。230円と350円の間にはなにか心理的に大きな壁があるように思っている。値段が230円だと、実際には115円に設定したときと比べてダウンロード数は落ちるとは思うが、半分まで落ちることはないんじゃないかと、もし70%くらいにとどまっていると考えれば、1個売れたときの売上が倍になる230円の方がトータルでは得、というのが僕の考えだ。


■ 販促について

販促については以下のまとめ記事が非常に参考になった。


» iPhoneアプリの販促活動に関してまとめてみた - A Day In The Life


この中で最も効果があったのは AppBank への掲載だ。掲載されたのを機にたくさんの方にダウンロードしていただいた。


AppBank へは、「開発者からの寄稿も受け付けます」とあったので、自分でスクリーンショットをたくさん撮って気合入れて記事を書き投稿した。それがこちらの記事 ↓


» かなぶん Free版: 大人からこどもまで楽しめるひらがなゲーム。無料。474


掲載率はだんだんと厳しくなっているという噂を聞いているが、寄稿しないと始まらないので、トライするにこしたことはないと思う。


次に効果があったと思われるのは、ことあるごとに Twitter に「かなぶん」のことをつぶやいていたことだ。


Twitter のユーザーが最近徐々に増えていると思われ、フォローしてくれる人も徐々に増えている。Twitter をやっている人の iPhone 所有率は高い。つまり、「かなぶん」のことをつぶやき続けていると、つねに新しいユーザーの目に触れる機会がある。でも、単に「かなぶん」のことをつぶやいていたらしつこいスパムになってしまうから、これからいろいろと機能を増やしていったりして、つぶやくネタを作り続けることが大事だと思っている。


■ かなぶん Android 版

三鷹プログラマーズカフェで知り合った itog さんが かなぶん Android版 を開発してくれた。


Android 版「かなぶん」をみて、iPhone 版もあることを知りダウンロードしてくれたユーザーもなかにはいるかもしれない。


Android 版には iPhone 版にはない英語版があるのだが、これが結構ダウンロードされていると聞き、外国の方でも「かなぶん」を楽しめるということを教えてもらった。


ほかのプラットフォーム版を用意することで、こうした良い相乗効果が生まれている。


おわりに


実は「かなぶん」はリリースした昨年6月以来、新しい機能をまったく追加していない。機能の追加は、ほかのことでできることをいろいろとやり尽くしたあとにやるべきだと思っているし、一番最初の web 版がでたときにすでにこうあるべきだという姿が僕の頭にあり、それがまだ達成されてはいないので、その姿にはない機能についてはあとまわしにしようと思っている。


ユーザーや周りの人の意見はもちろん大事だ。Twitter やブログを巡回し「かなぶん」について書かれている意見はほぼすべて読んでいると思う。それらを全部聞いた上で、でも「かなぶん」については僕が世界中で一番多くの時間をかけて考えているから、最終的な決断は僕がする。


そういうブレないスタンスも、そこそこ売れるようになった訳のひとつだったんじゃないかな、とえらそうなことを書いてこのシリーズを終わりにしようと思う。


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Libron が博報堂の雑誌「広告」に掲載されました

といってもほんのちょこっとだけですが、「ひとりで作るネットサービス」「百式」の田口さんの紹介記事のところに Libron のロゴと一言コメントが掲載されております。



» 広告 | KOHKOKU


「人はなぜ、再びものをつくりはじめたのか?」と題し、ウェブサービスに限らず様々な形のものづくりをおこなう個人に焦点をあてた特集になっていて、他の記事も興味深い。


「ものづくり」って自動車だとか家電といったハードのイメージが強いのですが、それはこれまでの形であって、ウェブサービスだって「ものづくり」、新しい形の「ものづくり」なんだと、勝手に元気づけられました。


» Libron - 無料で本が読めるライフハック


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iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その3

追記:「かなぶん」そこそこ... シリーズの記事


» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その1

» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その2

» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その3

» iPhoneアプリ「かなぶん」がそこそこ売れるようになった訳 その4


かなぶん再生


» ひらがなゲーム「かなぶん」


前回、Web版かなぶんが復活したところまでを書いた。


「いろんな人が協力してくれるんですね」と Twitter でコメントをいただいたが、本当にその通り。前回、書き忘れてしまったが、最初のWeb版にはかわいいかなぶんのキャラクターが登場し、このキャラクターは KCLAB さんの奥様にデザインしていただいた。また iPhone 版の方は KCLAB さんの弟さんのデザインだ。


ポチポチ盤面を押していくというゲームの性格上、iPhone アプリとして出したらいけるんじゃないかということで、引き続き KCLAB さんが iPhone 版を開発してくれることになった。


おととしの暮れ頃から空き時間を利用して開発してもらい、昨年3月頃にはクローズドベータ版ができあがった。何人か iPhone を持っている知人に Adhoc 版を配布して遊んでもらったが、なかなかの好評価だったので自信がついた。


特にうれしかったのは、この頃まだ四歳だった次男でもタッチパネルをポチポチ押しながら遊んでくれたこと。まだ覚えたてで一部しか読めないひらがなを駆使しながらも、ランダムに2文字押していけば点数を取れることを自然と学んだり、高得点をめざすために読めなかったひらがなも少しずつ僕や妻に聞きながら読めるようになっていった。


そんな様子を録ったのが以下の動画だ。


長男のときにはかなわなかった「ゲームを通してひらがなを覚えてもらいたい」という願いは、次男のときにかなえることができた。



かなぶん難産


リリースできる準備が整い、Apple に申請をしたのだが、この後、悪名高い Pending Contract の仕打ちをくらうこととなる。


Apple 本社に送付する W-8BEN の名前が表示されていなかったり、県名の部分には ??? と印刷されていて、嫌な予感はしていた。


アプリの審査自体は一週間くらいで終わりとても喜んでいたのだが、なかなか App Store に並ぶ Ready for Sale という状態にならない。結局2ヶ月間待たされることとなり、6月の終わりにようやくリリース。いつの間にかひっそりと App Store に並んでいた。


申請のプロセスは今はもう少し改善されているのかもしれないが、これから iPhone アプリを開発しようという方へアドバイスするとしたら、本命アプリの前に練習アプリとして簡単なものをサクっと作ってしまい、早めに申請・審査を一通り経験してしまうのがいいと思う。


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プロフィール

株式会社まちクエスト代表、つくる社LLC代表。

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