東京都写真美術館で「幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界」が開催され、同名の書籍も発売された。一般的には写真集『カメラ・眼×鉄・構成』(1932年)での機械的な構成美からなるモダニストとしての堀野正雄の姿が有名であるが、本展覧会ではそれだけに留まらない写真家・堀野正雄の豊かな全体像が俯瞰できるようになっている。 私が個人的に興味深かったのは、「グラフ・モンタージュ」という写真実験と、植民地支配下の朝鮮や中国大陸での彼の眼差しであった。 まず、「グラフ・モンタージュ」は、都市の姿をあるテーマによってモンタージュすることで表象しようとしたものだ。これは、1931年11月から1932年9月までの間に雑誌「中央公論」「犯罪科学」に掲載された。展覧会と同名の書籍による解説では「「グラフ・モンタージュ」とは、「複数の写真をあるテーマにそって有機的にレイアウトし、それを印刷術と結びつけることによってメデ