「はやぶさ」とそれまでの探査機との大きな違いは、「毎日が本番の軌道制御」 ということだ。ハレー彗星に向かった「さきがけ」「すいせい」、火星に向かった「のぞみ」などは、目的地に着くまでは、何度か行う軌道修正以外はエンジンを動かすことなく、運動の法則に従って飛行する。だからトラブルさえ起こらなければ途中の運用で行う作業は比較的単純だ。電波を受信して、探査機がどんな状態にあるかというテレメトリ・データを受信し、トラブルが起きていないことを確認し、その他到着までに行わねばならない機器の動作確認などの作業を淡々と実施すればいい。 しかし「はやぶさ」は目的地イトカワに着くはるか手前、2003年の打ち上げ当初からイオンエンジンを噴射し続けてきた。イオンエンジンを噴射し続けるということは、日々軌道が変わっていくということだ。イオンエンジンの状態に常に気を配り、予定の軌道にきちんと乗っているかを計測し、計測