江戸の昔を語り部のように再現する蕎麦屋があります。ミシュラン一つ星「翁(おきな)」です。その輝きは白色の更科蕎麦の上にきらりと光っています。女将が語り、蕎麦職人が旬の味わいを創り上げます。江戸蕎麦物語にはオーラがありました。 (1)店のオーラ 初代「布屋太兵衛」が現れる 江戸の昔、麻布に3本の滝落ち浄水池があったといいます。 初代「布屋太兵衛」はその一本の浄水池の傍らにつゆの元になる「返し」を保存する庫(くら)を造りました。 蕎麦つゆの素を造る本返しをそこにしばらく寝かすと、醤油は丸く甘味をおびたそうです。 それは絶好の冷蔵状態で保管庫の役割をし、まろやかな熟成を進めたに違いないのです。