四捨五入して四十ともなると親の介護が話題にのぼる。女ばかりでかこんだテーブルの、見慣れた顔のひとつが言う。みんな、まだまだ先だって思ってるでしょう、うちの親はまだ若いから、元気だからって。むしろ子育ての戦力に数えてたりしてね。親もその気で、事実、元気なんでしょう。でもねえ、六十過ぎたらガタは来るのよ。確実に来る。人間は年をとって、とるごとに弱って、それで死ぬのよ。みんなしんとしてそれを聞き、はーっとため息をついた。 私はその顔のなかにひとつだけ平然とした顔をみつける。そうかと私は思う。彼女は家出人なのだった。介護もなにも、生家と音信不通で、結婚もしていないから義理の親というものもいない。事情を知っているもうひとりが言う。そうはいってもいざ実の親が介護が必要な状態になって、それでも放っておくのは、けっこうきついんじゃないかな。私は、子どもにろくなことしなかった親にまで孝行しろとは思わないけど