闇の中で目を覚まして、自分が死んでいることに気がついた。いつもなら目覚めたときにまず感じるまぶたの重さがどこにもなかった。目がどこかにあるという感じもしなかった。見えないし、聞こえない。においもない。空気も重力も感じない。肉体も、その延長にある感覚も、どうやら完全に消え失せていた。なぜだかわからないが思考だけが残っていた。重大な疾患でこのような状態に陥っているのではないかとも疑ったが、わたしは直感にしたがって自分は死んでいるのだと考えた。恐怖はなかった。不安もなかった。恐怖も不安も、その根源はおそらく肉体にあった。 死んでいることがわかったので、今度は死んだ理由について考えた。すぐさま記憶をたどろうとして、なにも思い出せないことに気がついた。自分の名前すら思い出すことができなかった。男か女か、老いていたのか、若かったのか、どんな姿をして、どこでどんなことをしていたのか。家族はあったのか、そ