創業した最初の数年間で、僕の一番の悩みの種は、資金でもなく、信用でもありませんでした。実は一番悩んだのは社員の退職でした。人数が少ない中小企業では、1人でも辞めると仕事が完全にストップしてしまう危険が常につきまといます。 創業間もない頃は、自信のない僕の周りに自信のない社員が集まっていたのです。社員が1人でも辞めるとその動揺が社内に伝わり、その余波を沈めるには多くの心労と時間がかかりました。社員の誰かに真剣な顔で「社長、ちょっと相談したいことがあります」と声をかけられると、「『辞めたい』と言わないで」と祈ったものでした。 はかない願いもむなしく、社員はよく辞めていきました。今となって考えてみれば仕方のないことだったと納得できるのですが、当時は本当に辛かったことでした。 警察官になった青年 ある年、非常に気に入ったタイプの営業社員が入社してくれました。就職先はマスコミと警察を志望していたその