要旨 理化学研究所(理研)吉田化学遺伝学研究室の凌楓(リン・フォン)専任研究員、吉田稔主任研究員、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)メディカル・ゲノムセンターの後藤雄一センター長らの共同研究グループは、細胞分裂後にできる娘細胞にミトコンドリアDNA(mtDNA)からなる「線状多量体(コンカテマー)[1]」が送り込まれることでミトコンドリアゲノムの初期化が促進されるという、mtDNA複製と分配の新しいメカニズムを発見しました。 1つの細胞には、数千個ものミトコンドリアが存在します。ミトコンドリアゲノムは加齢に伴い変異が蓄積し、成人の体細胞で変異型mtDNAと正常型mtDNAが混在した「ヘテロプラスミー[2]」という状態になります。さらに、変異型mtDNAの比率が一定以上になるとミトコンドリアの機能が低下し、ミトコンドリア病[3]などを発症することが知られています。一方、新生児のミトコ