日本製鉄(以下:日鉄)が中国の鉄鋼最大手である宝山鉄鋼とトヨタ自動車を「無方向性電磁鋼板」絡みで提訴した。宝山に対しては特許権の侵害、トヨタに対しては特許権に抵触する電磁鋼板を使った車両を販売したことが提訴の理由だ。方向性電磁鋼板は変圧器や電動モーターなど広い用途で使われているが、「無方向性」という製品は非常に特殊であり、しかも日鉄が製造する高級品は効率を重視する高性能電動車両用モーター以外にはあまり使われていない。いったい、日鉄の無方向性電磁鋼板は何がスゴいのか。 TEXT◎牧野茂雄 電磁鋼板(Electrical Steel Sheet)とは、その名のとおり「電気を流して強い磁力を得るための鋼板」であり、一般的な鋼板とは比較にならない強力な磁力を得られるように成分と製法が工夫された素材だ。BEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)もPHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック