彼女は駐車場で枕を見つけた。車がタイヤを接して停めるための部分だ。車の下にからだを潜らせて首だけを出す。布団の中のようにあたたかくはないけれども、何もないよりはるかによかった。彼女はなにかにくるまったり狭いところに入りこむのがことのほか好きだった。いちばん好きな遊びはくるりと丸まって段ボール箱に入り、内側から蓋を閉じて目も閉じるというものだった。 そこは彼女の知らない場所だった。いちばん遠い友だちの家からさらにいくつか角を曲がり、とても長い距離を歩いた。七歳の彼女にとって、そこはお話の中のように遠い場所だった。来た道のことは覚えていなかった。彼女はなにしろぼんやりした子どもで、たいていのことは忘れてしまうのだった。 ここで眠ろうと彼女は思う。でもまだねむたくはなかった。夜更かししたっていいんだと彼女は思う。だって私は家出したんだから、好きなだけ眠っていいんだ。そう思うとなんだかくらくらした
友だちの家のPCの動作がおかしいというので見にいった。だいぶ古くて起動に十分もかかる状態だったので、さしあたり彼女が必要としているDVDの再生ができるようにクリーンインストールすることにした。 彼女の仕事用の携帯電話が鳴り、彼女は私にことわって出た。はい、いつもお世話になっております。いえいえ、はい、なるほど、担当がそのようなことを申しましたか。 彼女は五分ほど電話で話しつづけた。ほとんどは相槌だった。いろいろな種類の、さまざまな重さの、一定以上の温度を保った相槌だ。彼女はそのあと、仕事にしてはいささか親しげに短く笑って、いいえ、いいんですよ、と言ってから電話を切った。 私はBIOSを確認し、それを覗いた彼女はなんだか怖そうな画面、とつぶやく。怖くないよ、これはWindowsの下に入っているソフトなんだよと私は説明する。 ディスクがかりかりと音をたてて書きこみをはじめる。私は彼女の出してく
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