経済学は市場で自由な競争が行われることで資源の最適配分が行われると教えています。その前提条件は、競争者が等しい情報を持ち、特定の競争者が市場の支配力を持たないことです。ですが、こうした前近代的な前提条件は現実には存在しません。必ず情報の偏りが生じたり、市場での競争者の間に交渉力に歪みがあるものです。そうしたことは大企業と中小企業、機関投資家と個人投資家などで見られますが、同時に労働市場でも顕著に見られます。個人個人の労働者には賃金交渉力はないのです。どんな安い賃金でも、働かなければ生存できない労働者は受け入れざるを得ないのです。だからこそ、労働組合の団結権と団体交渉権が認められたのです。市場での自由競争のモラルを求めることは不可能なのです。ですからこそ、様々な規制が必要なのです。アメリカに始まった金融自由化は、深刻な金融危機を招きました。その背後には明らかにモラル・ハザードが存在したのです