大竹敦人《水面/拾集》(多摩川)2006年府中市美術館蔵 地理的な視点、しかも川という視点からまとめた展覧会というのも珍しいが、個人的には、まずこの展覧会に中村宏が含まれていることに興味を引かれて足を運んだ。 東京都現代美術館で開催された「図画事件 1953-2007」展以来、強烈な印象で脳裏に焼き付いていた一つ目の女子学生の絵を描いた画家は、謎めいていて気になる存在だった。本展覧会では、中村宏が立石紘一と一緒に1964~66年の2年間ほど活動していた「観光芸術研究所」にスポットが当てられている。 「観光芸術研究所」とは、実体があるのかないのか不可解ながらも存在感を醸し出す名称だ。「観光とは光を見ること」という主張のもとに、同時期の反芸術活動が絵画・彫刻といった従来の美術の形式に反抗する表現を行っていたのに対し、あえて絵画という平面による表現活動にこだわり、「見る」という視覚的表現を追求し