東京大学教授 加藤陽子 今年も、終戦の日がめぐってきました。68年前のきょう、国民は、政府がポツダム宣言を受諾して降伏したことを、正午のラジオで知らされることになります。真夏の陽射しの中で玉音放送を聞く国民の姿は、この日がお盆の中日にあたっていることもあり、日本人にとって、戦後の原風景となりました。 近代史は教育の現場では時間の関係上軽視されがちですが、近い過去であるがゆえの利点もあります。亡くなってしまった人々の世界と、生きている人間の社会との時間的距離が近いのです。私は、歴史家の最も重要な役割の一つは、この、死者と生者とをつなぐ仲介者としての役割にあると考えています。 8月15日は、1982年に政府がおこなった閣議決定により、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」となりました。この問題で言えば、先の大戦の「戦没者」が何を考え、いかに死んでいったのかを問うことは、死者と生者とを媒介すること