このコラムについて ぼくは本を、自分が生きるのに役立つように読む。無能で不器用で余裕がないから、それだけしかできない。今、ぼくは本の紹介文を書こうとしているが、ぼくの読み方には、強いバイアスがかかっている。客観性に欠けている。読みが浅い。あるいは反対に、どうでもいい細部に過剰な読み込みをしている。でも……そんな読み方をしないと、「このぼく」の人生には役立たないのだ。 もしかしたら読者の中にも、ぼく同様の「出来損ない」がいるかもしれない。そして出来損ないに課せられた、日々の愚かしい戦いを、武器もなく戦っているかもしれない。もしそうなら、その人には、この文章は少しは役に立つだろうか。この文章をきっかけに、ぼくが紹介した本を手に取って、ぼくなんかよりももっとうまく活用してくれるとしたら……。 そんな想像をする。勝手な妄想だ、いい気なものだ、と自分でも思う。でも、そんな妄想を信じて、ぼくは、これか