不採用だった。全力は尽くしたが、致し方ないと思った。約一週間後、mixi日記でキャプテン君が住友商事の内定を取ったことがわかった。第一志望だったので、そこに行くらしい。その日記には、いろいろと別世界のことが書いてあった。
・去年の秋、大学に五大商社の人が来て、体育会の部活に挨拶に来た。その時に一緒に食事をして、「ぜひ弊社に!!」とスカウトを受けた(五社中の三社)。
・ほかに受けた化学メーカー(東レ)の最終面接では、「御社は第二志望です。住友商事が第一志望です。そこに落ちたら弊社にお世話になります」とはっきり宣言したうえで内定を獲得。
・三菱商事も、三井物産も、伊藤忠商事も、選考を途中で辞退。自分とは合っていないと感じたため。
この時ほど、人間力というものの差を実感したことはない。アイツはすごかった。俺とはレベルが違う。俺はサッカーしか頑張ってこなかったけど、あいつはサッカーだけじゃなくって、受験勉強だって、人間関係の構築だって頑張れる人だった。
いやアイツは、どんなことにも本気で取り組むことができる。それでいて人間が好きだ。そういうエリートなのだ。当時も今も、俺はキャプテン君が羨ましい。俺もそんな人間になりたかった。なれなかった。
もし、今どこかでキャプテン君が俺の増田日記を観ていたとしたら、匿名でいいからコメントがほしい。誰だとわからないように隠してくれて構わない。
今では俺は、こんなに落ちぶれてしまった。正社員じゃないし、年間収入だって今のキャプテン君の五分の一に満たないだろう。クビになる可能性だってある。毎年、戦々恐々だ。
今でもサッカーが好きだ。自室の中にはサッカーゴールが置いてあるし、試しに蹴ってみることもある。部屋の壁にぶつけないよう、慎重に、慎重に蹴っている。たまに飛び出してしまうこともあるけど。
キャプテン君はどうだろうか。今でもサッカーをやっているのだろうか。とにかく今は、二十年前の思い出が懐かしくて、愛おしい。涙が止まらない。
第一志望の企業を不採用になった後は、坂道を転がるみたいだった。入りたい会社を受けども受けども、内定は得られない。二次面接までは行くのだが、そこではなんというか、明らかにやる気みたいなのが足りてなかった。
春を過ぎた頃だったか。同じ京都にあるITベンチャーを受けに行った。詳しい時期はもう覚えてない。はっきり言ってしまうが、㈱はてなだった。実は大学生の頃からはてなユーザーだったりする。
俺と同じ大学出身の人が面接をしてくれて、縁を感じた。エントリーシートも筆記試験も一次面接も、特に問題なく進んだけど、二次面接で一気に苦しくなった。
志望動機とか、会社を将来どうしたいとか、自分が将来どうなりたいとか、そういうことを喋れなかった。しどろもどろだった。どう考えてもこれは落ちた――そう思った。
相手の面接官は、「自分が入りたい会社というのはね、自分が将来どんなキャリアを描きたいのか、どんな人間になりたいのか、そういうところから逆算して決めていくんですよ」「今のままだと、増田くん、僕らの仲間になれないよ。ほかの会社だって難しいんじゃないかな」「もっと、ゆっくり立ち止まって考え直そう。増田君がどの会社に行くとか関係ない。真剣に考えて」と、人生のアドバイスまでしてくれた。
後日、大学のパソコンにログインすると、二次面接の結果通知がきていた。『合格』だった。次の選考に進めるらしい。これが最後通牒だと思った。「次でなんとかしろ」。そういうメッセージだった。
結局、俺はダメだった。はてなは辞退したし、ほかの選考が続いていた会社も悉く落ちて、ようやく内定を得られたのは夏の終わりだった。烏丸御池の辺りにある小さい広告会社だった。※今は別の場所に引っ越している。
この頃には、千亜子ともあまり会わなくなっていた。就活期間中は、お互いに忙しいから会えなくて当然なんだけど、まさか俺のせいでここまで会えなくなるとは。
千亜子は、その年の初めから一気呵成に就活に励んでいた。それで、俺より四か月も早く内定を決めていた。千亜子がスチュワーデス(CAのこと。当時は呼び方の過渡期だった)に内定したと聞いて、やはり只者じゃないなと感じた。劣等感だった。
この頃の自分というのは、なんかもう、劣等感がすごかった。就職活動でサッカーはできないわ、千亜子には会えないわ、勉強だって最後の単位を取り終えるあたりで躓いていた。
フツーの人生だったけど、それなりに成果を得てきたつもりだった。持ってる側のつもりだった。でも、俺はダメだった。今でいう抑うつみたいな状態になっていた。
秋になると千亜子と会うようになっていたのだが、よそよそしくなっていた。俺が内定した会社を告げると、「あー、よかったね。一緒に東京行けないのは残念」と言っていた。
もうすぐ最後のインカレという時期だった。ある日のアルバイト帰り、千亜子とキャプテン君が働いている河原町通りの飲食店の近くを通ると、千亜子がいた。ほかの大学生数人と一緒だった。私服だったし、おそらく飲み会帰りだろう。
店の近くまで行ったところで、自動ドアが開いた。すると千亜子が中に入って行って、上の階へと小階段を昇ろうとする男子学生(※キャプテン君ではない)の背中を掴んで、ぐいっと引きずり降ろしていた。
ちょっと驚いたけど、別に険悪な雰囲気でもなかった。それで、何やら彼と顔を近づけて話を始めた。この後の段取りとかを話してたんだろうか。俺のすぐ傍にいたほかのアルバイト友達と思しき学生が、こんなやり取りをしていた。
「そういえばキャプテンさん、最近千亜子さんにアタックしてる」
「二人とも一流企業だし。似合ってると思う」
こんな話をしていた。※当時の日記に書いてあった。
惨めな気分だった。俺が千亜子と釣り合ってないのは確かだ。内定した会社のランクが違うから。俺は就職活動に失敗した。インカレだってスタメンに選ばれなかったし、アルバイト先でも俺よりすごいやつは何人もいる。
人生で、ここまで負けまくるのは初めてだった。「畜生」と思ったけど、当時の俺にはどうにもできない。
千亜子にフラれたのは、新年が明けてすぐだった。大学のカフェテリアで、夕方に一緒にコーヒー飲んでる時に、「卒業するし、そろそろ終わりにしない? いい人、いるんでしょ。知ってる」と言われた。
今日、そんな予感はしていた。サッカーの試合勘みたいなもので、雰囲気でなんとなくわかる。今年の初詣は千亜子の予定が合わずにダメだった。おそらくキャプテン君と一緒に行っていたのだろう。
当時、『いい人』はいなかったけど、「そうしよう。お幸せに」って言ったら、「お互い、これからの人生でいい思い出にしていこうね」と千亜子が言った。
当時の日記には、そんなことが書いてあった。記憶や言葉をごまかしてはいないはずだ。当時の俺は、そこまで弱い人間ではない。40を過ぎて今それを読んでいる。やはり涙が止まらない。
これで結びになる。
就職してからの俺は、うまくいかなかった。仕事の才能は平凡のようだった。しかし、大学時代の失敗を引きずっていたせいで使えない人間だった。「あんた、サッカーすごかったんやないん?」みたいなことは何度も言われた。また、同じ会社で「学生サッカー選手権で活躍するところを観た」という同年代の社員もいた。
確かにそうだったかもしれないが、最後に出たインカレだって、負けかけの試合で後半でお情けで出してもらったくらいで、別に凄いわけでもない。アルバイトだって、ずっと居酒屋で頑張っていて、そこで最後に新しい彼女作れるかなって頑張ったけど、五人以上にアタックして全く相手にされなかった。素の自分というのは、モテる方ではなかった。ちょっとサッカーができるくらいで女にモテようなんて傲慢だった。
そんなこんなで、気持ちが沈んだまま新年度の四月を迎えたのだ。でもって、実社会で通用するはずもなく、新卒で入った広告会社は二年で辞めて、後はずっと契約社員とか派遣社員だ。
キャプテン君と千亜子は、俺が広告会社を辞める頃に結婚した。mixiの日記を読んだけど、それはもう凄い結婚式だったらしい。総合商社勤めだけあって、マイミクだったら無条件に結婚式招待OK!! という宣伝をしていた。会場までは知らないが、きっと東京都内のオシャレな会場だったに違いない。
俺は行かなかった。お金がないのもあるが、なんかもう、人生が面倒くさかった。
不惑になった今でも、当時の俺の何が悪かったんだろうと振り返ってる。昨年末も、実家にあった段ボール箱を引っ張り出して、当時の日記を読んだ。大学二回生から付けている日記を、半日かけて読んでいったのだ。この増田日記のベースになってる。
俺の何が悪かったのか? 三点にまとめると、次のようなところか。よくない行動のハットトリックみたいだ。
・就活で失敗した程度で凹んだのはおかしい。どんな会社に入ろうと未来はあった。
・どんな自分でも自分自身なんだって気が付いてなかった。失敗したって、自分という人間の価値が下がるわけじゃない。むしろ、失敗前の自分<失敗後の自分だ。それがわかっていれば卑屈になることもなかった。俺は挑戦したのだ!! そんなメンタルだから、就活もサッカーも恋愛もうまくいかなかった。
・サッカーができるくらいで調子に乗っていたこと。どれだけサッカーができようが、それは実社会で必要とされる力の一部分にすぎない。大事なことはもっとある。
・もっと自分を認めること。生きているだけでもすごいんだと、自分を褒めてやりたかった。人間にはみんな価値があるのだ。
いや、四つあるんかーーーーい!! と、大学時代の俺だったら、陣内智則みたいにツッコミを入れていただろう。今はそんな気力もない。
あの頃に戻れたら、とは思わない。いや、本当は戻ってみたいけど、それは間違いだ。これまで負け犬なりに努力してきた自分を否定したことになる。過去の自分を裏切ってる。だからダメだ。
今の俺は、あの時よりも成長してる。だったら、もっと成長できる!! もっと頑張ったら、幸せになる未来があるのかもしれない。結婚はできそうにないけどな。
ここまで読んでくれた人、ありがとう。何人読んでるかはわかんないけど。
気持ちの整理をつけることができた。また来週からは、しみじみと社会人生活をやっていきたい。
どうすれば幸せになれるんだろうかと考えて、ひとまず、今年の春から地元の草サッカークラブに入ってみた。自分自身が練習してるのもあるけど、子ども達に教えることもある。
ひとまずは、こんなところでいいのだろうか。まあ、ゆっくりやってみよう。幸せでありたい。増田やブックマーカーのみんなも幸せにな。
3. 就職活動のこと 大学四年になる頃、就職活動が本格化した。当時は就職氷河期で厳しい状況だった。講義もレポートもあるし、当然サッカーだってやらないといけない。居酒屋(ど...
先日、不惑(forty years old)を迎えた。今では草臥れたおじさんだけれども、昔はサッカーが大好きで、自他ともに認めるサッカー馬鹿だった。 小学校から始めた。当時は、とにかくドリブ...
わかる
1983年生まれ(06卒)の就職内定率は95.3% ちなみにバブル崩壊後のいわゆる氷河期世代最低値が00卒91.1、リーマンショック後最悪の数値を叩き出した11卒が91.0 あんたが就活失敗したのは氷...
多分ネトラレが全ての元凶だな 俺も同い年だけど不倫托卵で脳がぶっ壊れて以来生きてる死体みたいな人生送ってる
誰も読んでいないんだなとわかる
増田の文面からスポーツ推薦だと同志社大出身でもF蘭クラスの学力しかなさそうと推測できる
なんかサッカー上手いと就職希望先も一流になるんだなって思って自分との違いに絶望した。 Fラン大卒の俺なんて地元のスーパーとかで就活してたよ。 (それも落ちてフリーターにな...
順位 ブクマ タイトル カテゴリー 1 2067 ゲームさんぽの次に見るべきYouTubeの教養コンテンツ 増田 2 2048 家を建てたときのはなし(追記あ...
お疲れ様です
カテゴリー違くね? タグじゃね
カテゴリーで合ってるぞ https://anond.hatelabo.jp/c
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1 1429 ホストやってたけど普通はサイコパスになれんよ 増田 2 1327 東京に住んでいない俺がどこで文化を享受しているか 増田 3 1297 anond:20230927002433 増田文学 ハ...
お疲れ様です!
いつもコメントありがとね その一言にパワーもらってます
いいってことよ
誰だお前は!
名乗るほどのものではござらん
俺の書いたの、一つも入ってなくて草 俺の人生は文学じゃないんだなぁ ちょっとは気の利いたこと書くか
投稿時間帯とか2-3ブクマがつくのを18時頃の人が集まってくる時間帯にするとか工夫してみたら? 曜日は金曜土曜のスマホ触ってそうな人が多そうな曜日にして あとよかったらリンク貼...
ブクマは数100とかは付くけど、ネタ増田とかが多いからかな 自分のネタはもう尽きた 書いた増田↓ おパンツとは言うのにおブラジャーとは言わないのは国難 https://anond.hatelabo.jp/2023112...
ブクマ700の経験あるけど、過去の知見を使ったお役立ち情報増田だったので、 こういうサラッとした短文ネタ増田で支持を得られるのは尊敬するわ おパンツはわざとらしすぎてゴミカス...
売れない芸人の大喜利レベルだよな。もっと役に立つ記事とか勉強になる記事とか書けよ。低学歴か。
増田で役に立つことなんて書くわけないだろ
だから駄目なんだよおまえは
増田文学まとめって2022年だけ抜けてるんだよな 誰かまとめてくれないかな、俺は技術力も読解力も不足してるのでパス
簡単にパスしないでくれ 文句だけ言ってフリーライドするのは今日でやめにするのだ ①スクレイピングツールoctpusで「https://b.hatena.ne.jp/entrylist?url=https%3A%2F%2Fanond.hatelabo.jp%2F2022&sort=coun...
増田検索はここで探すといいよ。概ね人気順で出る はてな匿名ダイアリー全文検索 https://5ch.search2ch.info/masuda ここで「同志社 サッカー」とかで検索するとこれが出てくる サッカ...
FC岐阜なら受かるだろ
サッカーゴール蹴ってんのか…すさんでるな…
自分自身を肯定できるように生きたいね。何かに敗れたとしても、そこで人生が終わるわけじゃない。次の挑戦が待ち受けている。 それは間違いないな。
サッカーゴールでめちゃくちゃ笑った
・就活で失敗した程度で凹んだのはおかしい。どんな会社に入ろうと未来はあった。 ・どんな自分でも自分自身なんだって気が付いてなかった。失敗したって、自分という人間の価...
面白いし、参考になった。 先日のHSPで婚活がうまくいかないと言ってた増田にも、この半生の記録を読んで参考にして欲しいと思ったよ。
マジレスするとサッカーやってる人ならサッカーゴールを持ってるし、蹴ることもあるよ。 むしろ室内でボールを蹴ったらうるさいだろw だからゴールを蹴るのさ。
うん、まあ部活だと対等や格下に見えたかも知れないけど、就活という場だと阪大と同志社は埋め難い差が歴然としてあるよね
ほぼ同い歳だ。この歳になると「これからやってくぞ」というよりは、悪い意味でなく諦めというか人生と折り合いがつき始めるよな。 それなりに幸せというところでひとつ、しっかり...
やはり就活は悪い文明 粉砕しよう 万国の労働者よ、団結せよ!
やっぱ寝取られは良くないよ、容易に人間の脳味噌を破壊する。なによりその回復に時間がかかる。 あとgroup_inouのHEARTのPVみたいやね https://youtu.be/w_os8HqfxHc←コレ 俺からは一歩ずつ...
キャプテン君は取引先に有利な条件を押し付けたり部下に無茶やらせたりするパワハラ力を評価されただけだし 千亜子は容姿に恵まれただけの人を経済力で判断する凡人だし 別に神格化...
デリヘルは出てこなかった
女の自分語りは叩くが おっさんの自分語りには優しいインターネットだな
「これまで負け犬なりに努力してきた自分」を大事にしてください。
サッカーしかできなくても、早稲田いってれば大手商社も受かったかもしれない 勉強で阪大神大受かるより、早稲田のセレクションの方が確率高かっただろう 東京と地方の格差は埋めが...
男性はすぐにAができたらBなのかもみたいなこというけどさ AとBはなんの関係もないのにね BなのはAだったこともあるってトーナメント票をさかさまにしたみたいなだけ トーナメント票...
でも千亜子の処女奪えてたなら恋愛面ではお前の勝ちだよ キャプテンくんが何しようが千亜子にとってはお前とやったことの焼き直し、二番煎じにしか感じれない キャプテンくんの耳...
経験値高い女より処女の方が落としやすい とワイは思う 実際今まで付き合った3人全員処女やったし、本命だった経験豊富な女性は脈無しご臨終やった
処女なわけねーだろ
「セックスがこんな気持ちいいなんて知らなかった」って言われたぜ
創作ではないと仮定して厳しいこと言うけど、キャプテン君も会えば大したことない人間だろうし鬱で商社辞めてるかもしれない。 元増田は彼女をつまらない男に寝取られたと思いたく...
こんなに自慢できる恵まれた経歴のくせに何言ってるんだ?こいつって思ってしまった。 てかなんも自慢するものがないおれが今幸せだなって思って生きてるのっておれがただバカなだ...
世代的には、前葉さんか、後藤さん辺りの時代の人だな…