- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2009/02/20
- メディア: DVD
- 購入: 5人 クリック: 26回
- この商品を含むブログ (98件) を見る
『アウトレイジ』がよかったので、これまで観てない北野武映画を観ておこうシリーズその1。
この数年ロクな評判を聞かなかった彼の映画では悪くないという評価をいくつか聞いた『アウトレイジ』の前作にあたる本作をば。
本作は、裕福な家に生まれ、芸術について見識はないが理解はある父を持ち、なまじ素養があったために芸術にとりつかれてしまった男の物語である。
予告編映像から受ける印象と異なり、主人公の子供時代が半分近くしめるのだが、編集が良いのかだれない。『3-4X10月』以来の主役を演じる柳憂怜の青年時代もよかった。ビートたけし演じる中年期となるとコントの連続になるのだが、樋口可南子演じる妻の存在が、コントの相方というだけでなく物語を(興行的な意味でも)つなぎとめていると思う。
本作はまぎれもない芸術家残酷物語なのだが、その過程であっさりと人が死んでいく酷薄さがこの監督らしい。彼が本作を手がけた動機として、誰もが夢を持つことを善とする風潮に対する苛立ちがあったと語っているが、それは「何を撮れば良いのか分からない」という北野武自身の迷いと重なって見えるのを果たして本人は意識していたか。
あと、本作のラストをもって「そしてアキレスは亀に追いついた」というのは正直よく分からなかった。