渡り鳥「ハチクマ」北九州市の高炉の上昇気流で巧みに飛行…野鳥の会の女性が生態解明
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北九州市でタカの一種の渡り鳥「ハチクマ」を長年、観察してきた日本野鳥の会北九州支部の荒井充子さん(58)が、公益財団法人「日本鳥類保護連盟」(東京)から野生生物保護の功労者として表彰された。工業地帯の高炉から生じる上昇気流を巧みに捉える生態を明らかにした点が評価されたもので、荒井さんは「北九州ならではの迫力あるハチクマの渡りを知ってほしい」と語る。(中尾健)
タカに魅せられ
「あの高炉の上で、多いときには一度に数百羽のハチクマが舞い上がるんですよ」。今月5日、荒井さんは臨海部の同市若松区にある高さ120メートルあまりの高塔山の展望台から、北東側を望む工業地帯を指さした。
介護施設の職員として働いていた荒井さんは15年ほど前、魚を捕食するタカの仲間「ミサゴ」が大きな翼を広げて海中から勢いよく飛び立つ姿を市内の若戸大橋で見かけ、その雄大な姿に魅了された。以来、日本野鳥の会にも参加してタカなどの観察を続けてきた。
市内を渡るハチクマの存在を知り、2010年からひとりで調査を始めた。渡りの時期を迎える9月には双眼鏡などの機材を抱えて山へ毎日登り、空を飛ぶハチクマの数やコースを風向きや気温とともに記録した。
当初は昼に出勤するまでの時間を充てていたが、14年に仕事を辞めて調査に専念するように。すると、工業地帯にそびえる高炉の上空で、ハチクマの群れが渦巻くように舞い上がる様子を何度も確認した。