AI国際指針 安全最優先の規制に取り組め
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犯罪への悪用など様々なリスクが指摘されているAI(人工知能)の規制に向けて、先進7か国(G7)が国際ルールをまとめた意味は重い。
政府は、実効性のある対策を講じる必要がある。
G7首脳がオンライン首脳会議を開き、AIに関する包括的な国際指針を取りまとめた。
高度なAI製品について、専門家が安全性を点検する仕組みを設けることや、人の創作物とAIの生成物を区別する技術を導入する必要性などが盛り込まれた。
米国の大手IT企業は、次々に新しいAIを開発している。多様なAIが市場に投入されれば、その分悪用される危険性も高まる。AIが兵器の作り方を教えたり、差別的な思想を広めたりする恐れが指摘されている。
製品として普及する前に、各国の専門家が責任を持って、AIが社会に混乱をもたらす恐れはないか調査することは重要だ。
欧州では、AIによる生成物の明示を開発者に義務付けるなど、法律で様々な規制を定めようとしている。一方、日本はAIの開発や普及を優先し、開発者や利用者がルールを守ることを前提とした自主規制にとどめる方針だ。
だが、既に日本でも、岸田首相ら政治家本人が語っているかのような巧妙な偽動画が拡散し、社会に波紋を広げている。
政府はこうした事態を放置するつもりなのか。AIの生成物が本物か偽情報かを見分ける技術を確立するとともに、偽情報の流布を法律で規制すべきではないか。
AIで偽動画が容易に作られる背景には、政府が2018年、著作権法を改正し、著作物を許可なくAIに学習させることを認めてしまったことがある。
著作権法を再改正し、権利者の意向によって著作物をAIの学習対象から除外できるよう、新たな制度をつくらねばならない。
会合ではまた、ウクライナや中東情勢も議題となった。
ウクライナのゼレンスキー大統領が支援の継続を訴えたのに対し、岸田首相は、インフラなどの復旧・復興に10億ドルの追加援助を行うと表明した。欧米のような軍事支援ができない日本は、民生分野での協力を続けていきたい。
日本は今年、G7の議長国を務めた。今回の会合でその役割は終わったが、アジアを代表する立場から、国際社会のルール作りを主導していく責務があることに変わりはない。秩序の回復に向け、外交努力を尽くしていくべきだ。