[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

パリ五輪後最初の試合で、なでしこジャパンに見えた変化

スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 川島健司

 サッカーの日本女子代表(なでしこジャパン)は10月26日、国立競技場で韓国と親善試合を行い、4―0で快勝して、今年の活動を終えた。今夏のパリ五輪ではベスト8止まりだったなでしこだが、五輪後に行った初めての試合で、今後につながるような新しい姿は見えたのだろうか。

韓国戦で巧みなボールキープを見せる長谷川唯。ピッチを幅広く動き、試合をコントロールした
韓国戦で巧みなボールキープを見せる長谷川唯。ピッチを幅広く動き、試合をコントロールした

池田太監督の続投ならず

 準々決勝で米国に延長戦の末に敗れたパリ五輪の後、なでしこジャパンの池田太監督が退任した。日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長は、当初は監督の続投も選択肢としていたが、8月21日に退任を発表。その理由として、佐々木委員長は「ベスト4に行って注目を集め、女子サッカーの繁栄につなげる大きな使命がある。そこまで到達するには新たな人選が必要だろうと判断した」と述べた。

 常に大きな注目を集める男子代表と違い、女子代表の場合、ワールドカップ(W杯)と五輪という最高峰を争う大会で結果を出さないと、なかなか関心が高まらない。なかでも五輪では、メダルを争うことになる準決勝以降の注目度は、それ以前の試合に比べて格段に高くなる。今回はそこにあと一歩届かなかった。

 パリでのなでしこは、結果的に金メダルを獲得した米国相手に、組織的な守備で90分間の中では得点を許さない健闘を見せた。ただ、その戦いぶりは、3バックというよりは5バックで米国に攻め込むスペースを与えないという守備的なもの。統率のとれた試合運びは見事だったが、逆に日本が得点を奪えそうな場面がほとんどなかったのも事実だ。延長前半に米国FWロドマンの単独突破からゴールを許し、力尽きた。

パリ五輪・サッカー女子準々決勝、米国-日本。後半、米国の選手のシュートを防ぐ(奥右から)熊谷紗希、長野風花、古賀塔子、守屋都弥、GK山下杏也加(2024年8月3日、パリで)=松本拓也撮影
パリ五輪・サッカー女子準々決勝、米国-日本。後半、米国の選手のシュートを防ぐ(奥右から)熊谷紗希、長野風花、古賀塔子、守屋都弥、GK山下杏也加(2024年8月3日、パリで)=松本拓也撮影

 2021年の東京五輪でも、高倉麻子監督の率いた代表は準々決勝でスウェーデンの前に敗退。その後に就任した池田監督は、3バックと4バックを併用し、昨年のW杯豪州・ニュージーランド大会では、優勝したスペインに1次リーグで4―0で大勝するなど、一定の進歩を見せた。

 ただ、この大会も準々決勝でスウェーデンに敗れて8強止まり。2011年W杯で優勝、翌年のロンドン五輪は銀メダル、15年W杯準優勝という実績があるだけに、どうしても周囲は過去の栄光と比較してしまう。女子サッカーの世界的なレベルが上がる中、再び優勝争いに加われるチームを作るためには新たな指揮官が必要、という日本協会の考え方も理解はできる。

「ヤングなでしこ」4人を選出

 その第一歩となる韓国戦だったが、肝心の新監督は決まらなかった。佐々木委員長は、海外を含めて人選を進めているとしたが、具体的な契約には至らず、結局、「身近で見ていた私が代行するのが現状ではベスト」と自らがこの試合限りで監督代行を務めることを明らかにした。

 代表メンバー23人が発表されたのは10月18日。パリ五輪のメンバー22人からは、GK大場朱羽(米ミシシッピ大)、DF高橋はな(三菱重工浦和)、MF林穂之香(エバートン)、宮沢ひなた(マンチェスター・ユナイテッド)のほか、五輪での大けがで長期離脱中のDF清水梨紗(マンチェスター・シティー)の5人が外れた。

 初選出となったのが、GK大熊茜(INAC神戸)、DF遠藤優(三菱重工浦和)、FW土方麻椰(日テレ東京V)、松窪真心(ノースカロライナ・カレッジ)の4人。大熊、土方、松窪は8~9月にコロンビアで行われたU―20(20歳以下)W杯で準優勝した「ヤングなでしこ」のメンバーだ。

 また、同W杯出場のDF小山史乃観(ユールゴーデン)と、昨年のアジア大会で優勝したMF中島淑乃(広島)、塩越柚歩(三菱重工浦和)が代表に復帰した(土方は故障のため代表辞退)。

 注目されたのは、元男子日本代表で、Jリーグでも指揮を執れるProライセンス(旧S級ライセンス)を取得したばかりの内田篤人氏と、U―20W杯準優勝監督の狩野倫久氏がコーチ陣に加わったこと。長年ドイツでプレーして世界のトップレベルを知り、ウッチーの愛称で知名度抜群の内田氏が、どんな指導を見せるか、興味を集めた。

佐々木監督代行が挙げた数字

 また、この発表の際の佐々木監督代行の話もショックを与えた。パリ五輪を振り返って、日本はボールを奪うまでに平均で約18・5本のパスをつながれていたことを明らかにし、「多すぎる。上位4か国は6~8本でボールを奪っている」と、引いて守るこれまでのやり方に疑問を投げかけた。

 実際、10月21日から始まった練習では、積極的に前からボールを奪いに行く姿勢が目についた。練習のかなりの部分で指示を出したのは、狩野コーチ。内田コーチも一人ひとりに声をかけ、選手からは「ポジショニングを教えてもらった」(遠藤)と、具体的な守備の際の指示などが好評だった。内田コーチはセットプレーのやり方についても担当したという。

 対する韓国も監督が代わったばかりのチーム。海外組が16人を占めるようになった日本に対し、韓国は23人中、INACとスペインのレバンテでプレーする選手を除く21人が国内勢だった。

積極的なプレスからのゴール

 試合が始まると、4バックを採用した日本は、最終ラインを高く保って精力的にプレスをかける。攻撃に関しては、この試合の主将に指名されたGK山下杏也加(マンチェスター・シティー)やDFラインからも長いボールを前線にフィードして、押し気味にゲームを進めた。

 先制点は32分。右CKを得ると、MF長谷川唯(同)がストレート系のボールをゴール前に。ニアサイドに走り込んだDF北川ひかる(ヘッケン)が頭で合わせると、ボールは見事にゴール左隅へ飛び込んだ。

韓国戦で先制ゴールを決めた北川ひかる(左)。CKからの見事なヘッドだった
韓国戦で先制ゴールを決めた北川ひかる(左)。CKからの見事なヘッドだった

 この後、日本は5分間で2ゴールを加える。中でも目指す形が見えたのは34分の2点目。韓国のペナルティーエリア付近まで進出した北川が粘って相手ボールを奪うと、FW田中美南(ロイヤルズ)がクロス。走り込んだMF藤野あおば(マンチェスター・シティー)が左足で蹴り込んだ。勇気を持って高い位置でプレスをかけ、奪ったら手数をかけずにフィニッシュまで持っていった。

日本の2点目を決める藤野あおば(背番号15)。高い位置でのプレスから奪った狙い通りのゴールだった
日本の2点目を決める藤野あおば(背番号15)。高い位置でのプレスから奪った狙い通りのゴールだった

日本の勝利を決定づける4点目を入れて喜ぶ谷川萌々子。大器の片りんを見せた
日本の勝利を決定づける4点目を入れて喜ぶ谷川萌々子。大器の片りんを見せた

 「相手に取られた後のセカンドボール、ボール奪取が速かったので、すごくよかった」とMF長谷川。日本は56分にも、後半から出場した期待の19歳、MF谷川萌々子(ローセンゴール)が、右からのクロスを力強く右足でワンタッチシュート。これがゴール右下に決まる4点目となり、勝利を確実にした。

 終わってみれば、日本のシュート14本に対し、韓国は前後半2本ずつの4本という完勝だった。世界ランキング7位と19位の差が如実に出たともいえる。

 もちろん、反省点もある。後半開始まもなく、DF南萌華(ローマ)が自陣ゴール前で安易な横パスを出し、センターバックでコンビを組む熊谷紗希(同)の対応も遅れて、山下の好セーブでどうにか切り抜けた場面があった。格上が相手だったら、失点につながっているような凡ミスだった。

新監督は誰に

残り:572文字/全文:4242文字
読者会員限定記事です
新規登録ですぐ読む(読売新聞ご購読の方)
スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

使い方
「Webコラム」の最新記事一覧
注目ニュースランキングをみる
記事に関する報告
5993609 0 編集委員の目 2024/11/12 10:00:00 2024/11/12 10:00:00 /media/2024/11/20241108-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

おすすめ特集

読売新聞購読申し込みバナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)