頂点取りにも満足なしだ。フィギュアスケートの全日本選手権2日目(21日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)、男子フリーはショートプログラム(SP)首位の鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)が205・68点、合計297・73点で初優勝。父・正和コーチも同大会で3連覇しており、史上2例目の親子Vを成し遂げた。

 演技を終えた新エースは大の字になって喜びを表現した。冒頭の4回転フリップで4・71点のGOE(出来栄え点)を引き出すと、その後も安定した演技で観衆を魅了。「すごく気持ちよかった。寝そべることはどうなのかなと今まで思っていたけど、出し切れたからいいかなと。(宇野)昌磨さんの真似をしてみた。いい演技じゃないとじゃないとああいうことはしない(笑い)」と頬を緩めた。

 2012年大会から23年大会までの12年間は羽生結弦、宇野昌磨が日本一の座に君臨。2強が活躍のステージを移した中で鍵山が新時代の王者に輝いたが、最大の目標は世界の頂だ。「理想の構成としてはまだ80%。ルッツも含めた(4回転ジャンプ)5本を入れるのが最終的な構成。しっかりと体力をつけて、体も鍛えて、いい演技ができるように努力していきたい」と未来像を語った。

 そんな鍵山の向上心はスポンサー企業も感じとっている。移動車両を提供するスズキ社の担当者は「いかなる時においても『挑戦する』『新しいことに触れる』ということに対して前向きであると感じた」と証言。さらに企画用のインタビュー時には「スケートに関してさまざまな可能性を追求することが好き」と語っていたという。

 常に進化のヒントを探る鍵山にとって、今大会はあくまで通過点。

「今までどの試合においても、金メダルがなかなか取れないというような状況が続いていた。この金メダルは次につながるいいスタートになる。これがゴールではない」

 日本一の称号を自信に変え、次は世界一の称号を奪いにいく。