新型コロナウイルスの感染で飲食店の休業が長期化する中、休業手当の金額が少ないとの声が相次いでいる。一般に給料の「6割以上」として知られるが実際は4割程度にとどまり、生活保障の役割を果たせていないからだ。70年以上前の政府通達に基づいた計算方法が原因で、不合理だとの批判が強い。(渥美龍太)
◆会社は「法律通りに計算した」
「この金額では生活できない」。神奈川県内の中華料理店に勤める60代のアルバイト女性は3月以降休業が急に増え、月6万円程度のバイト代が激減する状況が続いた。もともと月5万円程度の年金と合わせてぎりぎりの生活だったが、1日だけ出勤した4月分の休業手当は約1万9000円のみ。携帯を格安に切り替えるなど生活を切り詰めた。
だが、会社側は「法律通り計算した」の一点張り。女性は労働組合に入って交渉し9月に満額補償が決まった。「半年も厳しい状況が続き、限界だった。なぜあんな計算方法なのか」
都内の弁当会社のパート社員男性(49)も、従来週4日勤務で12万円の月給だったのが、ほとんど働けなかった5月は休業手当が4万8000円余りもらえただけ。給料のカバー率は4割にとどまり、「多くの同僚が生活に窮した」。
休業手当が少ないとの声は、労組に相次ぐ。背景には計算方法のカラクリがある。
◆給料の6割でなく平均賃金の6割
「6割以上」とは、労働基準法で定める「平均賃金」の6割であって、給料の6割ではない。1日当たりの平均賃金は、直近の給料3カ月の合計を、土、日など休日も含め3カ月の総日数で割って算出する。休日も含めた総日数で割るためこの額は低くなるが、手当を出すのは休日を除いた勤務日数だけの決まり。さらに6割の水準になるため、月額で計算すると、支給金額は従来の給料の4割まで低下してしまう「数字のマジック」が生じるのだ。
表で示すように給料が月30万円の人が丸々1カ月休業した場合でも、手当は12万円しかもらえない。
◆「休日は休業手当を支給する義務なし」
1949年に出た政府通達で「休日は休業手当を支給する義務はない」とされた。70年余りたった今、長期の休業が続出する前例ない事態が起き、制度の盲点が浮かび上がった。厚生労働省の担当者は「法定の水準はあくまで最低水準。金額は労使で話し合って決めて」と言うにとどまる。
問題を指摘してきた指宿昭一弁護士は「今の計算方式は明らかに不合理で生活保障にならない。...
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