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ILL BONEとは? わかりやすく解説

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ILL BONE

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/29 06:37 UTC 版)

ILL BONE(イル・ボーン)は日本のパンクバンド。1979年に前身の造反医学(ぞうはんいがく)結成、1982年の終わりにに改名、1986 – 1987年頃消滅。

概要・来歴

1970年代末、立教大学の学生だった中田潤(なかだ・じゅん)は、同大学の主流派音楽サークルと趣味が合わない学生たちで反主流派の音楽サークル「Walkin' Jap」を立ち上げる。サークルメンバーには初代ギタリストのOがいた。その2人に日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)の学生・箕輪政博が加わり1979年、造反医学を結成。バンド名は「造反有理って文化大革命だけど、中国の医者までが「造反」して今までの生き方を捨てたら、病人、けが人が死ぬだろ」(中田)という意味[1]。1982年後半、音楽性の変化に伴いバンド名をILL BONEに改称。韓国・朝鮮語で日本・日本人を意味する일본(イルボン)と英語で「病んだ骨」のダブルミーニング。なお、メンバーに在日韓国・朝鮮人はいない。1986 – 1987年頃のバンド消滅後、中田はフリーライターに、箕輪は鍼灸学者に[2]、石川は音楽活動を継続、石黒は消息不明。

音楽性

日本のフォークやローリング・ストーンズクリーム頭脳警察などの洋邦の初期ロックに影響されていた中田が、セックス・ピストルズ[3][4]に衝撃を受けてパンクに目覚める。そこに音楽サークル「Walkin' Jap」のメンバーであり中田の一学年下の後輩・石黒浩孝が、音楽的には保守的・ロックンロール回帰的だったパンクに見切りを付けて美的・観念的な急進性を示していたポストパンク(たとえばパブリック・イメージ・リミテッドスリッツ[5]レインコーツ[6]ザ・ポップ・グループ[7][8]XTC [9]スクリッティ・ポリッティ[10]など)の革新性を持ち込んだことにより、造反医学はUKポストパンク勢と呼応するような音楽性を獲得。さらにCAN[11]ブリジット・フォンテーヌ[12][13]エルヴィン・ジョーンズ[14]の影響が決定的となって、ジョン・コルトレーンが言う「音楽はコードではなく、モード」を実践[15]することにより、「抒情派パンクス」と呼ばれる[16][17]独自の音楽性へと発展した。

バンドコンセプト・歌詞

「パンクバンドに日本語の屈折した世界を、現代詩とかの世界をのっけたいと思った」(中田)[18]というところから始まる。その歌詞は「政治的」と言われることが多い。実際、造反医学時代の歌詞には政治的アジテーションの要素も濃かったが、アジや明瞭なメッセージ性が後退していくことで、現代詩的なILL BONEの詩世界へと至った。メッセージソングを歌うパンクバンドから、自分たちが投げ込まれている現実=日本を問うものへと変化していった[19]。造反医学時代から一貫しているテーマは「戦後というものへの居心地の悪さ」「祖国、日の丸、天皇、日本共産党、中核派に対する違和感」[20]。中田が影響を受けた詩人は萩原朔太郎寺山修司など[21]

メンバー

「造反医学」時代

(1979 – 1982)

  • 中田JUN – ボーカル、ベース
  • O – ギター[22][23][24]
  • Lym – ギター(Oの後任)
  • 箕輪攻機 – ドラムス
  • TSURU – サックス(『青空』録音に参加)

Lymは石黒浩孝の初期名。箕輪には攻機、政博、扇太郎などいくつか異なる表記があるがいずれも同一人物。

第一期 ILL BONE

(1982 – 1983)

  • 中田潤 – ボーカル、ベース
  • 石黒浩孝 – ギター
  • 箕輪攻機 – ドラムス

第二期 ILL BONE

(1983 – 1984)

  • 中田潤 – ボーカル
  • 石黒浩孝 – ギター
  • 石川佳世子 – ベース
  • 箕輪扇太郎 – ドラムス

このメンバーでEP『死者』が録音された。この録音を最後にギターの石黒が脱退。「扇太郎」の命名者は町田町蔵。石川は元ラビッツ。

第三期 ILL BONE

(1984)

  • 中田潤 – ボーカル
  • 大熊ワタル – ギター
  • 石川佳世子 – ベース
  • 箕輪扇太郎 – ドラムス

第四期 ILL BONE

(1985 – 1986)

  • 中田潤 – ボーカル
  • 弓削聰 – ギター
  • 石川佳世子 – ベース
  • 箕輪扇太郎 – ドラムス

再稼働 ILL BONE

(2015年3月 – 2018?)

  • 中田潤 – ボーカル
  • タカダハルミ – ギター(2015 – 2017)
  • 川上啓之 – ギター(2017 – )
  • 石川佳世子 – ベース
  • 富田俊幸 – ドラムス

オリジナルメンバーの石黒は音信不通、箕輪は鍼灸学者になっていたため代打として、石川のブルースバンドRumble Fishからタカダと富田が加入。

再結成 ILL BONE

(2022年3月 –)

  • 中田潤 – ボーカル
  • 川上啓之 – ギター(2017 – 2024)
  • ヴァイオラ伊藤 – ギター(2023 – 2024)
  • 山崎怠雅 – ベース
  • 箕輪政博 – ドラムス

2022年9月に無観客ライブを行うが、その後沈黙。2023年12月に本格始動。

未発表曲・未スタジオ録音曲

  • 住所
  • 光州
  • 日本晴れ
  • 二月
  • Jinta
  • ダンシング・デイ
  • 一人の男が殺された
  • さようなら昭和
  • Christine
  • Spera

「再稼働」後の新曲(未スタジオ録音)

  • アマテラス
  • 今宵、テレサと
  • 銃と青空

ディスコグラフィ

アルバム、EP

  • 造反医学『青空』(1982年、植民地音楽)自主制作カセットLP
  • ILL BONE『日本』(2024年、SUPER FUJI DISCS)CD
    • 80年代の未発表ライブ音源のコンピレーション
  • ILL BONE『LIVE』(2015年、自主制作)CD-R
    • ファンによる2つのオーディエンス録音、1986年7月4日渋谷Live Inn「『NG』発売記念Live」と1984年12月30日渋谷La Mama「ノンセクトラジカル・パーティー」をカップリングしたもの。「再稼働ILL BONE」のライブ会場限定販売。
  • ILL BONE『LIVE II. Our February』(2016年、自主制作)CD-R
    • ファンによる4つのオーディエンス録音「造反医学 – 1982年10月10日法政大学学生会館大ホール」「1983年4月29日京都大学西部講堂」「1983年11月12日横浜国立大学野外ステージ」「第四期ILL BONE – 録音日時場所不明」から中田潤が選曲し構成したもの[25]。「再稼働ILL BONE」のライブ会場限定販売。

参加作品

  • V.A. – NG(1986年、トランスレコード)LP
    • 第四期メンバーによる「ナンバーレスランド」を収録。
  • V.A. – UGX II(1993年、SSE)CD
    • 「ベイルート(Live)」を収録。

脚注

  1. ^ 80’ 抒情派PUNK「ILL BONE」の血と肉と骨 – 「造反医学」の名前の意味 2014-10-06 05:28:45
  2. ^ 社会鍼灸学会 プロフィール
  3. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月24日 (火)セックスピストルズ!
  4. ^ 中田潤ブログ – 2012年4月11日 (水)すべて明かそう! イルボーンがパクリだった証拠
  5. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月25日 (水)造反医学が恋したサム・ガールズ スリッツ
  6. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月25日 (水)造反医学が恋したサム・ガールズ レインコーツ
  7. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月24日 (火)造反医学、イル・ボーンの作り方 ザ・ポップグループ
  8. ^ 中田潤ブログ – 2012年9月19日 (水)わしが造反医学で歌い始めたころ、一番好きだった歌。ザ・ポップグループ『わしらは全員売春婦』
  9. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月24日 (火)で、造反医学、売れたい、スターになりたいと思う XTC
  10. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月25日 (水)売れたい、とさらに造反医学は思う スクリッティ・ポリッティ
  11. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月26日 (木)イル・ボーンの作り方
  12. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月26日 (木)イル・ボーンの作り方 ブリジット・フォンテーヌ
  13. ^ 中田潤ブログ – 2012年9月19日 (水)わしが造反医学で歌い始めたころ、一番うちでかけてた曲、ブリジット・フォンテーヌ「ラジオのように」
  14. ^ 中田潤ブログ – 2009年11月26日 (木)イル・ボーンの作り方 やっと黒人登場! エルビン・ジョーンズ
  15. ^ 中田潤ブログ – 2011年12月7日 (水) 1983年 インディーズの録音スタジオ
  16. ^ 北村昌士「政治性と抒情性/イル・ボーン」(美術手帖 1984.1月号 特集「ニューウェイヴの旗手たち」)
  17. ^ 文・取材 熊野哲彦「危機を告発する抒情派パンクス イル・ボーン」(『Fool's Mate』No.31 OCTOBER,1983)
  18. ^ 「ILL BONEインタビュー 新たなるコトバと抒情の可能性」(『Fool's Mate』No.52,1986)
  19. ^ 中田潤「民主主義パン喰バンドの教理と声明」(『Fool's Mate』No.43 MARCH 1984)
  20. ^ 中田潤ブログ – 2012年8月13日 (月) 1970年からの言語空間。アルベール・カミュ、サルトル、吉本隆明、村上春樹……
  21. ^ 中田潤ブログ – 2009年9月 4日 (金) 萩原朔太郎 寺山修司 町田康 杉作J太郎
  22. ^ 80’ 抒情派PUNK「ILL BONE」の血と肉と骨 – 「O」 1 (2014-08-28 22:18:32)
  23. ^ 80’ 抒情派PUNK「ILL BONE」の血と肉と骨 – 「O」 2 (2014-08-29 22:21:19)
  24. ^ 80’ 抒情派PUNK「ILL BONE」の血と肉と骨 – 「O」 その3 2014-08-30 12:38:31
  25. ^ 中田潤ブログ – 2016年1月26日 (火)1月30日 池袋バレルハウス CD『ILL BONE LIVE Ⅱ』を発売いたします

外部リンク


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