陸上・日本選手権第3日(29日、新潟・デンカビッグスワンスタジアム)今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねて行われ、男子100メートル準決勝は桐生祥秀(28)=日本生命=が、10秒20(追い風0・1メートル)の組2着で、残り2枠を争う30日の決勝に進出した。
完全復活を遂げてパリへ─。桐生が100メートル準決勝3組の2着で決勝に進み、うなずいた。
「予選と準決で10秒2台を出せたのはよかった」
この日は幼稚園児の長男の運動会。愛息はフライングをして、ゴール前で転んでしまい、試合前には妻から「フライングはしないで」と連絡が入った。予選は10秒21(追い風0・3メートル)。約4時間後の準決勝は10秒20(追い風0・1メートル)で、しっかりとスタートも決め「子供が運動会で頑張っているので、大人が大きい運動会で頑張ろうという気持ちだった」と笑った。
京都・洛南高時代から日本のトップを走り続けてきた28歳。2022年6月に難病の「潰瘍性大腸炎」を患っていたことを公表した。実戦復帰は23年3月。以降は同年5月の木南記念で10秒03をマーク、今年2月に室内60㍍では当時の日本記録を更新(6秒53)するなど、復調の兆しを見せている。
今大会は、ともに短距離界を引っ張ってきた山縣亮太(32)=セイコーと多田修平(28)=住友電工=が欠場。「(五輪の)権利をもらう勝負のスタートに出られないのは、出て取れなかったときの悔しさよりもある」と話し、「何かを背負うのではなく、明日は『1着でゴールしたい』という初心で臨みたい」と気合を入れた。
「家族がいて、息子に『頑張れ』と言われるから、またトップに立ちたいという気持ちがある」
運命の決勝は30日。五輪参加標準記録(10秒00)を突破して優勝すれば、代表に即内定となる。「9秒台じゃないと勝負できない。何も考えずに、一本ガツンといきたい」。家族の存在も力に変え、ラスト100メートルに全てをぶつける。