富裕層申告漏れ、過去最高980億円 海外投資絡み目立つ
2023年6月までの1年間(2022事務年度)の税務調査で、「富裕層」の申告漏れ所得が過去最高の総額980億円に上ったことが22日、国税庁のまとめで分かった。各国税務当局との連携を強化するなか、海外投資に絡む申告漏れが多く発覚したという。インフルエンサーによる広告などインターネット関連取引に対する追徴課税も目立った。
22年度の所得税の調査は63万7823件(前年度比6.3%増)で、申告漏れ所得の総額は9041億円(同25.5%増)、追徴税額は過去最高の1368億円(同29.3%増)だった。新型コロナウイルス感染拡大による制限が緩和され前年度より調査が増えた。
国税庁は有価証券や不動産の大口所有者、所得が継続的に高額な個人などを富裕層と定義している。同庁は富裕層への調査を重点的に実施しており、22年度の調査件数は同32.2%増となる2943件となった。
申告漏れ総額は同16.8%増の980億円に上り、統計を始めた09年度以降で最も高かった。うち514億円(52.4%)が海外投資などを行っている富裕層に対するもので、統計のある14年度以降で最多だった。全体の追徴税額は183億円(同23.1%減)だった。
国税当局は18年から共通報告基準(CRS)情報と呼ばれる金融口座に関する情報を海外税務当局と交換している。22年7〜12月には95カ国・地域から約257万件の情報を得た。国税庁の担当者は「CRS情報が効果的な調査につながっている」と話す。
大阪国税局の調査事例では、CRS情報を通じ日本に居住する男性が東南アジアに多額の預金を保有している事実を把握した。調査により約1億600万円の申告漏れを指摘し、重加算税を含む約3500万円を追徴課税した。
インフルエンサーにも追徴課税
富裕層以外では、ネット広告やオークションなど、インターネットを介して行われる「シェアリングエコノミー」に関わる取引についても重点的に調査した。申告漏れ所得の総額は200億円(前年度比72.4%増)、追徴税額は42億円(同90.9%増)だった。
大阪国税局は企業からの依頼でSNSを活用し商品を宣伝する「インフルエンサー」の女性に対し、計約9500万円の申告漏れを指摘し、重加算税を含む計約4000万円などを追徴課税した。
個人事業主の消費税の申告漏れなどは同10.4%増の約6万1000件、追徴税額は396億円(同26.9%増)で統計開始以降、過去最多だった。