世界2.2%成長に減速 OECDの23年予測、物価高重く
経済協力開発機構(OECD)は26日公表した経済見通しで、2023年の世界の実質成長率を2.2%とした。ウクライナ危機で加速した物価高が長引くとみており、前回6月の予測を0.6ポイント下方修正した。21年12月時点の見通しからの下振れ幅は1.0ポイントに拡大した。各国がインフレ対応で急ぐ利上げも重荷となり、世界景気の回復シナリオは軌道修正を迫られている。
ロシアのウクライナ侵攻はエネルギーや食料の供給不安を強め、価格高騰に拍車をかけた。欧州はガス価格が過去1年で3倍超になり、10~19年平均の約10倍に達する。
インフレ圧力は和らぎながらも低下ペースは鈍いというのがOECDの見方だ。21年に3.8%だった20カ国・地域(G20)の物価上昇率は22年に8.2%まで高まり、23年も6.6%と高水準が続くと予測する。
世界の実質成長率は23年に2.2%まで落ち込むとみる。巡航速度といえる3%程度の水準を大きく下回る数字だ。新型コロナウイルス禍前の19年まで10年間の平均は3%を超えていた。
23年の世界の実質所得は21年12月時点の見通しより2.8兆ドル(約400兆円)少なくなる。各国の生活水準を反映した購買力平価ベースの国内総生産(GDP)の2%強にあたるマイナスだ。
国・地域別にみると、コロナ後の回復をけん引してきた先進国に急ブレーキがかかっているのがわかる。成長率は米国が0.5%、ユーロ圏が0.3%に急減速する。それぞれ3カ月前の予測から0.7ポイント、1.3ポイントの下方修正となった。日本は0.4ポイントの下振れで1.4%にとどまる。
とりわけ深刻なのはドイツだ。2.4ポイントの大幅な下方修正で、マイナス0.7%に沈む。主要なエネルギー源であるガスの供給をロシアに頼ってきたツケが大きい。
インフレ退治の急ピッチの利上げが景気を過度に冷やす懸念も強まる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者による23年末の米政策金利の見通しは9月の会合で中央値が4.6%となった。侵攻前の21年12月時点の1.6%、侵攻後の22年3月時点の2.8%などと比べ大幅に上振れしている。実現すればリーマン危機前の07年10月以来の水準になる。米金利先物市場では5%に達するとの見方もある。
こうした状況でOECDは、今回の経済見通しについて下方リスクが大きいと明記した。23年は多くの国が景気後退に陥る恐れがあるという。
企業の間でも世界経済の減速懸念は強まっている。主要半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)は8月、23年の市場規模の見通しを前年比4.6%増と、2カ月前から0.5ポイント下方修正した。
各国の政策対応は難しさを増す。OECDは物価高の痛みを和らげる対策については脆弱な層に対象を絞り、期間を限定するのが望ましいとの考え方を示した。財政支出はインフレ圧力を高めかねず、金融引き締めにも逆行しかねないからだ。
「債務救済に関する強力な国際協力」の必要性も強調した。世界的な金利上昇やドル高によって経済基盤の脆弱な債務国のリスクが高まっていることが念頭にある。
エネルギー危機を巡っては気候変動対策との調和を図るよう促した。「化石燃料からの移行を加速することがロシアからの供給減に対する最善の方法だ」と強調した。
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