アメリカン航空、英電動旅客機を最大350機購入へ
【ニューヨーク=大島有美子】米アメリカン航空は10日、英電動旅客機ベンチャー、バーティカル・エアロスペースから最大350機の電動旅客機の予約注文で合意したと発表した。バーティカル社に2500万ドル(約27億円)の出資もする。将来の温暖化ガスの排出量削減につなげる。
バーティカル社は2016年創業で、電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発している。開発中の旅客機はパイロットを入れて5人乗り。排出ガスはゼロで、距離100マイル(約160キロメートル)超を時速約320キロメートルで飛行する。今年後半に初の試験飛行を実施し、24年の認証を見据えている。
アメリカンは10億ドルを投じて最大250機の予約注文をしたほか、100機の追加注文枠もつけた。デレック・ケール最高財務責任者(CFO)は「温暖化ガスの削減競争において、新興技術は欠かせない」と述べ、投資の意義を強調した。米国内で近距離の都市間の移動を想定している。
バーティカル社は10日、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて今年後半にもニューヨーク証券取引所への上場を目指すと発表した。合併会社の評価額は22億ドルになる見通し。
バーティカル社の資料によると、同社にはアメリカンのほか英航空大手ヴァージン・アトランティックが最大150機、中国企業傘下でオリックスも出資する航空機リース大手、アボロン・ホールディングス(アイルランド)が最大500機をそれぞれ予約発注している。米マイクロソフトや航空機エンジンの英ロールス・ロイスとも提携している。
米航空業界団体「エアラインズ・フォー・アメリカ(A4A)」は3月、2050年の温暖化ガス排出ゼロの達成に向けて、連邦政府や州政府と連携することを約束した。アメリカンは加盟する航空連合「ワンワールド」の一員として50年の排出ゼロを掲げている。
米大手航空会社の排出ガスの99%は石油を使ったジェット燃料によるものだ。バイオ燃料などを使いガス排出を最大8割減らすSAF(持続可能な航空燃料)への切り替えや、電動旅客機の利用拡大は航空業界における具体的な脱炭素手段として注目を集める。
ユナイテッド航空は2月、米電動旅客機ベンチャーのアーチャー・アビエーションと提携した。アーチャー社は24年の商用化を目指しており、ユナイテッドが最大200機購入する。航空大手とベンチャーの提携が進めば、電動旅客機の商用化が現実味を帯びる。
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