九電やらせ「佐賀知事の意向反映」 第三者委報告書
九州電力の「やらせメール」問題を調べている第三者委員会(委員長・郷原信郎弁護士)は30日、最終報告書をまとめ九電に提出した。報告書は玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)へのプルサーマル導入を巡る2005年12月の同県主催の説明会で、九電が古川康・佐賀県知事の意向に沿って動員や「仕込み質問」をしたと指摘。記者会見した郷原委員長は、こうした県と九電のもたれ合いの構図がやらせメールの「原型」になったとの認識を示した。
知事の意向
報告書は、九電が一連のやらせ行為に手を染めた要因に「佐賀県や古川知事の意向」を挙げた。プルサーマル説明会では「賛成派からの質問・意見も出ることが必要」とする知事の思いに応える形で九電が社員らを動員し、賛成意見や質問も用意したと認定。台本は事前に県側に報告しており、古川知事が仕込み質問を認識していた疑いも払拭できないと指摘した。
今年6月の玄海原発再稼働を巡る佐賀県民向け説明会でのやらせメール投稿も、九電幹部と面談した古川知事の発言が「決定的な影響を与えた」と改めて認定。「知事が再稼働に向けてのシナリオを描き、九電と外形的には距離を保ちつつ、実際には緊密な協力の下に再稼働へのステップを踏んでいこうとしていた」と結論付けた。
郷原委員長は会見で、プルサーマル説明会とやらせメールについて「共通性がある。不透明なやり方で(原発に関する)世論を持っていくのが問題の本質」と強調した。
経営トップの責任
報告書は、一連のやらせ行為という「不透明な企業行動」による信頼失墜の責任が、九電トップにあると明記した。
玄海原発再稼働を巡る国の説明会では、福島原発事故後の急激な環境変化で原発事業に透明性が強く求められていたにもかかわらず、組織的な投稿要請などを阻止できなかったと真部利応社長の責任に言及。問題が表面化した後の対応でも、幹部による資料廃棄などに毅然(きぜん)とした態度を取らず、「公益事業者である九電に対する社会の不信感を一層高めた」と批判した。
また、第三者委が中間報告などで明らかにしてきた認定事実に、九電が反論を繰り返したことについては「異様なまでに古川知事を擁護し続ける姿勢を考慮すると、プルサーマル説明会で九電の経営トップと知事の間に何らかの意思疎通があったと見るのが合理的」と指摘。仕込み質問など一連の社員の行動は「会社トップの方針に沿ったものであった可能性が高い」とし、当時社長だった松尾新吾・現会長の責任にも触れた。
提言
報告書は再発防止に向け、九電に対し、古川知事を含む原発立地自治体の首長との「不透明な関係」を根絶するよう求めた。具体的には会社幹部名義による政治献金や政治家のパーティー券購入のあっせんなどを禁止するよう提言。電気利用者との直接対話の場や、原子力部門の社内監視組織の設置も提案した。
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