TPP交渉参加へ 民主調整決着、首相きょう表明
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を巡る民主党内の調整が9日、決着した。党政策調査会のプロジェクトチーム(PT)は同日夜の総会で、政府に「慎重な判断」を求める提言を全会一致で了承した。党内の強い反対論を映した内容だが、党として交渉入りを認めない表現にもならなかった。野田佳彦首相は10日夕に記者会見し、TPP交渉への参加を表明する。
TPPは米国やシンガポールなど9カ国が協議している経済連携の枠組み。物品の関税撤廃のほか、投資や金融サービスなども含め全部で21分野での共通ルール作りを目指している。日本にとっては主要農産物の市場開放が課題となる事実上、初めての本格協定。今後は野田政権の交渉力が問われる。
民主党PTは9日、総会と役員会を断続的に開きながら議論。前日にまとめた提言案は、党内の慎重な立場に立つ発言を「十分踏まえたうえでの判断を提言する」との表現だった。9日の総会で異論が相次ぎ「政府には慎重に判断することを提言する」と修正した。
提言はこのほか交渉参加の判断には(1)国民に十分な情報提供をする(2)幅広い国民的議論――が必要だと指摘した。民主党執行部は「この表現なら首相の判断を縛らない」との見解だ。
民主党は10日、政調役員会でTPPに関する提言を正式に決めて政府側に提示する。これを受け政府・民主三役会議や関係閣僚委員会を相次いで開催。その後、首相が記者会見する。首相は12日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に予定する日米首脳会談などで、交渉参加の意向を伝える見通しだ。
前原誠司政調会長は総会終了後、記者団に提言について「文言通り首相に伝える。最終判断するのは首相だ」と強調。党内対立から離党者が出る可能性について「あり得ない。党が割れることはない」と語った。
PT総会に先立ち、超党派の「TPPを慎重に考える会」会長の山田正彦前農相は首相官邸に藤村修官房長官を訪ね、首相が12日からのAPEC首脳会議の際に交渉参加を表明しないよう重ねて要請。反対派議員224人の名簿を渡した。藤村長官は「重く受け止める」と応じた。