筒井氏起用「脱製造業」映す 経団連、日本の成長へ危機感
十倉雅和経団連会長の後任に、日本生命保険の筒井義信会長が就く人事が固まった。金融界から初となる異例の起用は、長らく製造業、重厚長大産業が主流だった経団連の「脱製造業」を映す人事と言える。十倉氏は17日、筒井氏について「日本の置かれている状況で製造業の果たす役割は非常に大きいが、決してそこにこだわるべきでないという思いから選んだ」と述べた。
少子高齢化を背景に成長力が鈍化する日本の現状に、経団連は危機感を強めている。このため経団連が扱う政策テーマは、製造業振興やエネルギー政策だけではなく、年金・社会保障制度改革、選択的夫婦別姓などへ広がった。十倉氏は後任選びで「社会を総合的に俯瞰(ふかん)してみて、中長期的視点で解決策を提言できる観点を大事にした」と説明。その結果、「筒井氏が最適だと判断した」と強調した。
経団連会長にはこれまで新日本製鉄(現日本製鉄)、トヨタ自動車など日本を代表する製造業のトップが就くのが通例だった。しかし十倉氏は「製造業、非製造業は意識せず、人物本位で選んだ」という筒井氏にバトンを渡す。同氏は昨年5月の経団連副会長就任会見で、「長期の視点を持ち、改革の意識を持ち続け、日本全体を見渡すことだ」と抱負を語っていた。
通例を破った人選について、経済界からは早速「(他人の)話をよく聞く、素晴らしい方が選ばれた」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)と期待の声が上がった。十倉氏は筒井氏に対し「格差や分断の議論を置き去りにして持続的な成長はあり得ない。ぜひそこを引き継いでもらいたい」とエールを送った。