CFOメッセージIR情報
2019年からの5年間を振り返って
LNGの最大調達国である豪州パースでのタウンホールミーティングで講演する酒入CFO
当期利益(期ずれ除き)
2023年度の当期利益は海外・再エネ発電事業における利益増や石炭等の契約期末評価損益改善があったものの、燃料調達価格や期首燃料在庫単価の影響、燃料事業利益減等により、前年比で516億円減となる1,487億円(期ずれ除き)となりました(期ずれ込み当期利益は、期ずれ影響が差損から差益に転じたことにより、前年比3,817億円増となる3,996億円)。2022年度から減益となりましたが、2021、2022年度はロシア・ウクライナ侵攻による不安定な燃料市況の中で、JERA GMの欧州を中心とした取引拡大等による一時的な増益であると捉えており、2025年度目標連結純利益2,000億円の達成に向けては順調に推移していると評価しております。
過去に設定した利益目標は着実に達成し、2025年度の利益目標も堅持
- 当期利益の目標は、2019~21年度は2019年4月公表の事業計画値、2022年度は2022年10月の公表値、2023~25年度は2022年5月公表の新経営目標値
バランスシートマネジメント
<総資産>
総資産は、ベルギーの大手洋上風力発電事業者Parkwind社の買収や、国内再生可能エネルギー発電事業者であるGPI社への出資による増加等はあるものの、資源価格が低下したことによる「デリバティブ債権・債務」※の大幅減もあり、前年比で約6,000億円の減少となりました。
- JERA GMにおける燃料数量調整の取り組みにおいて両建てで計上している取引の未決済残高
資本市場から評価される財務体質の実現を目指す
- 燃料費調整の期ずれ影響は除く。
<有利子負債・純資産>
2023年度は前年度に比べ燃料市況が良化したことで、大幅な期ずれ差益に転換したこと等により、借入金やコマーシャルペーパーが減少しました。それにより、有利子負債残高は前年度比で約4,000億円の減となる、3.1兆円程度となりました。また、資本については、当期利益の増加や為替換算調整勘定の増加等から、前年度比で約6,000億円増加し、2.6兆円程度となりました。その結果、財務健全性指標であるNet DERも2025年度1.0倍以下という目標を掲げている中、0.6倍まで改善しています。
また、資本効率性を示すROICについては、当期利益(期ずれ除き)の減少等により前年比で悪化しておりますが、2025年度に設定した4.5%の目標達成に向けて、収益性の向上等に取り組んでまいります。
キャピタル・アロケーション
2024年5月に公表した、「2035年までに目指す収支水準・財務戦略」でお示しした、将来のキャピタルアロケーションについて、説明します。2024年から2035年までの累計で、5.5兆円の営業キャッシュ・フロー創出を見込んでおり、それらを原資として、5兆円の投資を予定しております。内訳としては、成長戦略で掲げる3つの戦略的事業領域(LNG/再生可能エネルギー/水素・アンモニア)に、それぞれ1兆~2兆円の投資を行っていきます。なお、2035年度まで長期間にわたる中、3つの領域のバランスについCFOメッセージて、「市場環境」や「技術革新」「政策動向」に応じて柔軟に配分を変更していく方針です。これにより、環境変化や政策変更にかかわらず、持続的に成長できる企業体を実現していきます。同時に、LNG取扱量:3,500万トン以上、再生可能エネルギー累計開発容量:2,000万kW、水素・アンモニア取扱量:700万トン程度の達成を目指します。
- 営業CFを原資として、成長戦略で掲げる3つの戦略的事業領域(SP)に、市場環境/技術革新/政策動向を見ながら柔軟に投資配分
- これにより、環境変化や政策変更にかかわらず、持続的に成長できる企業体を実現する
- 1 2024~2035年度までの概算の累計
- 2 市場環境を見極めながら質の高い案件への規律ある投資判断を前提
- 3 本取り組みは、政策等の前提条件を踏まえて段階的に詳細化。前提が大幅に変更され
財務部門機能強化で企業価値向上、資本コストの低減に貢献
私は、「日本発のグローバル企業」として世界の有力なエネルギー企業の仲間入りを目指すJERAのCFOとして、CEOを補佐しながら企業価値向上に向けた様々な取り組みを進めてまいりました。具体的には、この5年間、当社の成長を支えるため、以下4つの領域で取り組みを進めています。まず、経営の迅速で的確な意思決定を支える業務基盤強化です。当社を取り巻く事業環境が益々複雑さを増す中、多岐にわたる信頼性の高いデータを迅速に入手して、それを分析、シミュレーションできるデータドリブン経営を目指して財務基盤システムの構築を進めています。また、透明性を高め、国内外のステークホルダーの信頼を得ることを目的にIFRS導入を完了させました。これらの取り組みは、業務プロセスの標準化・効率化が進み、社員がより付加価値の高い仕事に集中できることにもつながります。
2つ目は、適切なキャピタルマネジメントとファイナンシャルガバナンスです。事業活動に多額の投資資金を要する当社にとって、調達した資金が当社のミッション、ビジョンや成長戦略に合致し、企業価値を高めるポートフォリオの形成に結びついているか、また、個々の投資が資本コストを上回るリターンを上げているか等の財務リスクをマネジメントしています。
3つ目は、経営や事業部門から信頼されるビジネスパートナーとしての役割です。各事業部門の投融資や事業買収・売却等に対し、会計・税務面や、M&A、プロジェクトファイナンスの専門知識による助言を行っています。また、2023年に立ち上げたJERA Venturesの活動を通じて、技術革新や投資機会の発掘等にも貢献します。最後に、投資家を中心とする外部ステークホルダーとの適切で能動的なエンゲージメントです。対話を通じ、当社の取り組みを、国内外のステークホルダーにより正しく理解いただくとともに、当社への期待や要望をヒアリングし、それらを経営にダイレクトに伝えることで、企業価値向上に資する経営判断に結びつけたいと考えています。
これら4つの領域を、財務経理部門のキャリア採用者、海外拠点のスタッフを含め、多様性に富んだプロフェッショナル人財が支えています。2019年に私が入社した時点の日本の財務・経理部門の人員は40数名でしたが、直近(2024年8月)には、210名を超える陣容となり、うちキャリア・新卒採用者が約7割を占め、女性比率も3割程度と、バックグラウンドの異なる人財が集結しています。また、連結ベースでは、上記210名に加え、国内外の主要子会社を中心に、100名弱の財務経理人財を抱えており、それらのチームとの連携によって、グローバルな一体運営を目指しています。
地政学リスク、気候変動問題や電力市場の自由化など事業環境は目まぐるしく変化していますが、どのような環境変化の下でも、財務経理部門のメンバーは、JERAのミッション・ビジョンを見失うことなく、グローバルな人財・組織、フラットでイノベーティブなカルチャーを武器に、既存の発想・業務フローに囚われない視点で業務に取り組んでいます。
2035年に向けた成長戦略の推進をCFOとしてグローバルに進めていく
私は、当社のCFOとして、上記グローバルな取り組みを、資金面、収支面から支え、健全なバランスシートを維持継続することで、投資家や金融機関の皆さまを含む多くのステークホルダーから信頼を得る会社作りに貢献したいと考えています。同時に、そのことによって、当社グループで働く全ての社員が、当社に誇りを感じ、家族とともに幸せを実感できる会社を作りたいと考えています。
当社のミッション・ビジョンの実現を支える成長戦略の遂行は、当社にとって大きなチャレンジです。当社が過大なリスクを抱えないよう、時にはブレーキを踏むこともCFOである重要な役割であると考えています。これらを念頭に置いて、2035年に向けて設定した財務KPIを常に意識し、財務規律を効かせた会社経営の一助を担い、企業価値の向上に貢献してまいります。