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レガシーなITインフラ運用管理をどう変える? ガートナー「2024年版ハイプ・サイクル」

ITインフラのモダナイズや、AIなどの新技術の活用が進む中で、ITインフラ運用管理はどうあるべきか。レガシーなITインフラ運用管理のモダナイズの在り方について、ガートナーの最新版ハイプ・サイクルを見てみよう。

» 2024年12月25日 12時50分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業のITインフラ運用管理(ITオペレーション)はどうあるべきか。ガートナージャパン(以下、ガートナー)による「日本におけるITオペレーションのハイプ・サイクル:2024年」からヒントを探ろう。

レガシーなITシステム管理をどうモダナイズする?

 ガートナーによると、日本企業のI&O部門は、ビジネススピードの向上や競争の激化によってレガシーITオペレーションの見直しを求められている。ITオペレーションをモダナイズすることで人的ミスの低減や、属人化の排除や内製化、アウトソーシングを含む運用コストの削減、最適化が図れる。

 では、どのようにモダナイズすべきなのか。

 ガートナーは、クラウドネイティブの技術やDevOpsアプローチによる高度な自動化の実現、監視から可観測性への移行、チーム体制の転換や役割の再定義などを通じたサービスデリバリーのボトルネックにならない運用トランスフォーメーションが求められているとしている。ITインフラの変革が進む中で新興テクノロジーを活用するためには、人に依存しがちなオペレーションのモダナイズが避けて通れない課題だというのが同社の主張だ。

 こうしたトレンドを受けて、「日本におけるITオペレーションのハイプ・サイクル:2024年」では、「プラットフォーム・エンジニアリング」が新しく取り上げられた。

 2024年版で「過度な期待」のピーク期に位置付けられたのは、「サイト・リライアビリティ・エンジニアリング」「可観測性(オブザーバビリティ)」「インフラ自動化」「AIOps(AI for IT Operations)プラットフォーム」「DEM」(デジタル・エクスペリエンス監視)の5つだ。

日本におけるITオペレーションのハイプ・サイクル:2024年(出典:ガートナージャパンのプレスリリース)

 ここでは、「プラットフォーム・エンジニアリング」「可観測性」「インフラ自動化」の3点について、ガートナーの定義とそれらを導入した際のメリットを見てみよう。

プラットフォーム・エンジニアリング

 プラットフォーム・エンジニアリングについてガートナーは、ソフトウェアのデリバリーとライフサイクル管理を実現するセルフサービス型の社内開発者プラットフォーム(IDP)を構築、運用するための一連の規律(考え方やアプローチ)と定義している。

 従来型のI&Oチームの構造や手法のままでは、ビジネスの状況が変化するスピードに即応できない。I&Oリーダーは、アジャイルなインフラストラクチャプラットフォームをサービスとして提供するために、運用と開発を分離するアプローチや、展開手法の再考を迫られている。

 プラットフォーム・エンジニアリングによって、アプリケーションチームやインフラチームがソフトウェアの価値をより迅速に提供できるようになると期待される。基盤インフラの構築とメンテナンスの負担が軽減され、顧客価値の実現と学習により時間が費せるようになったチームは能力が向上する。

 IDPを使用すると、コンプライアンスと管理の一貫性が高まり、ソフトウェアの提供に使用されるツールの無秩序な増加が抑えられる。プラットフォームエンジニアリングによって開発者のエクスペリエンスが向上し、従業員のフラストレーションが軽減され、離職が回避されることが期待される。

可観測性

 可観測性についてガートナーは、出力データやメトリクスを基にソフトウェアやシステムの内部状態を理解し、その挙動と事象、結果を説明可能にするためのソフトウェアやシステムの特性を指すとしている。クラウドネイティブでは必須要件となっている。

 大量のコンテナや「Kubernetes」環境、複雑なマルチクラウド環境を時流に則した形でモニタリングし、必要なアクションをスマートに実践するために可観測性の考え方とアプローチが不可欠だ。

 スケーラブルかつ変化対応型のインフラプラットフォームを運営するには、従来の監視の考え方とアプローチでは対応できない。2024年時点での日本は英語圏と比較するとまだ初期のステージにあるが、可観測性採用の具体的な事例も増えつつある。

インフラ自動化

 インフラ自動化についてガートナーは、オンプレミスやクラウド環境、またはそれらをまたいで自動的なインフラによるサービスデリバリーを実現するテクノロジーと定義している。

 インフラ自動化によって、DevOpsチームとI&Oチームは、インフラサービスの作成から構成、運用、廃止までのライフサイクルを管理できる。主にデータセンターやクラウドで利用される。スケーラブルであり、インフラの展開、管理のスピードやその品質を改善して、ユーザーが必要な時に必要なものを使えるようにする。

 ガートナーは、今回のハイプ・サイクルで取り上げたテクノロジーやメソドロジー(方法論)の3割が成熟するまでに5〜10年以上かかると見込んでおり、その理由について「内製化やスキル強化、組織の変革に時間がかかるため」としている。ITオペレーションの変革には、クラウドネイティブな運用アプローチや手法、スキルの獲得が欠かせない。これらの成熟度は、ユーザー企業自身の成熟度によって左右されるという。

 ガートナーの青山浩子氏(ディレクター アナリスト)は、「今回のハイプ・サイクルで『過度な期待』のピーク期に位置付けられているテクノロジーのうち、可観測性とインフラ自動化については今後急速に幻滅期に向かう。プレーヤー側の変化(買収など)も発生しやすいと考えられるため、注視する必要がある。I&Oリーダーは、AIや高度な自動化などの新しいテクノロジーによるIT部門への影響だけでなく、それによって引き起こされるビジネス上の変化を正しく理解して変革の一歩を踏み出すべきだ」と説明する。

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