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Weekly北朝鮮『労働新聞』 (106)

重要造船所の艦船建造事業を指導、「核動力戦略誘導弾潜水艦」の建造も「了解」(2025年3月2日~3月8日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年3月10日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
趙春龍党書記、金明食海軍司令官・海軍大将らが同行した[重要造船所を視察する金正恩国務委員長(中央)。具体的な場所は明かされていない=2025年3月8日](C)AFP=時事
観光関連記事が増えており、米朝首脳会談当時の強い関心が戻っている様子が窺える。米原子力空母の韓国釜山入港に対しては「前政権の対朝鮮敵視政策を『継承』している」と非難、トランプ政権の名指しはしなかった。金正恩による重要造船所の指導では「海洋主権の死守」が強調された。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 3月8日付の第2面下段には金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が咸鏡(ハムギョン)北道鏡城(キョンソン)郡で建設中の温堡(オンポ)勤労者休養所を現地指導したとの記事が掲載された。朝鮮労働党中央委員会の「指導幹部」である李煕用(リ・ヒヨン)、金才龍(キム・ジェリョン)が同行した。

 かつては朱乙(チュウル)温泉として知られた場所であり、金正恩は2018年7月に視察して、この休養所を「総合的な文化休息拠点、治療サービス拠点」として新設するよう指示していた。前月にシンガポールでの米朝首脳会談を終えた直後のことであり、経済制裁緩和に対する期待もあった時期である。

 今回の現地指導で金正恩は、建設における「一連の偏向と対策的問題」を指摘し、「優越した社会主義の施策の恵沢の中で(人民が)文明の実体を思う存分に体験」できるようにすべきだと述べた。休養所のほか、咸鏡北道内の塩盆津(ヨンブンジン)海洋旅館の建設についても課題を提示し、「具体的な事業計画及び提議書を現地で決裁」したという。

 この「塩盆津旅館」を金正恩が7年前に訪れた際は、「塩盆津ホテル」と命名されていた。北朝鮮では宿泊施設の名称に「旅館」も「ホテル」も用いられるが、名称変更の理由は不明である。2018年7月17日付は、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が生前に同ホテルの建設を命じ、2011年7月の着工から6年を経て内部工事段階に入ったことを紹介していた。金正恩はなかなか完工しないことに苛立ちを隠さず、翌2019年の党創建記念日(10月10日)までに完成させるよう指示したと報じられていた。

 金正恩は当時、温堡の休養所について「(温泉施設の)管理が良くない」「浴槽が雑然として薄暗く非衛生的で、最近整備された養魚場の水槽よりもひどい」「脱衣室も……不快なにおいがする」などと不満を並べていたが、建設工事に関する報道は長らく途絶えていた。

 ドナルド・トランプ米大統領との首脳会談に臨んだ2018年時点で金正恩は国内各地での観光開発に強い関心を寄せていたが

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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