妻を殺害した罪に問われている元長野県議・丸山大輔被告の裁判員裁判。12月23日、長野地裁は「被告以外の他者であるというのは空想的、偶然の一致は考えがたい。被告人が犯人でないならば、合理的に説明できない」などとして、丸山被告に「懲役19年」の実刑判決を言い渡しました。
2021年9月に長野県塩尻市の自宅兼酒蔵で、妻・希美さん(当時47)の首を何らかの方法で圧迫し、殺害した罪に問われていたのは元長野県議の丸山大輔被告(50)です。
10月16日の初公判では「妻を殺害したのは私ではありません」と起訴内容を否認し、無罪を主張しました。
裁判の争点は、被告が犯人であるかどうかの「犯人性」。犯行を裏付ける直接的な証拠がない中、裁判は、被告の車が映ったとされる防犯カメラの映像など間接的な証拠をもとに、4つのテーマに分けて進められ、出廷した証人は21人に上り、18日間に渡り審理が行われました。
テーマ1「被告の所在・移動の状況」では、防犯カメラに映った車両が被告の車かどうかについて、検察側は「傷の特徴などから被告の車である」とした一方、弁護側は「ナンバーが読み取れず、断定できない」と反論。
テーマ2「動機」では、検察側が不倫相手の存在や妻の実家からの借金などを理由に「妻を殺害するしかない状況だった」と主張。
一方、弁護側は「当時、夫婦間にトラブルはなく動機はない」と主張しました。
テーマ3「現場の状況と痕跡」では、事務所の金庫が荒らされていたことについて、検察側は「鍵の場所を知っている被告が物取り犯の犯行に見せかけた」と主張。
弁護側は、希美さんの着ていた服から家族以外のDNAが検出されたとして「第三者の犯行と考えるのが自然」としました。
テーマ4「事件前後の被告の言動」では、被告が事件前夜に議員会館(長野市)の自室のパソコンにUSBを差したまま7時間半にわたって操作しなかったことについて、検察側は「原稿作成をしたように見せかけるアリバイ工作」とした一方、弁護側は「パソコンは立ち上げたが、構想がまとまり就寝した」としました。
4つのテーマの審理を終え、検察側は「被告が犯人でないと合理的説明がつかず、犯人でないことはあり得ない」などとして懲役20年を求刑。
弁護側は「直接的な証拠はなく、犯人であることを合理的な疑いが残らない程度に証明できていない」として改めて無罪を主張しました。
丸山被告は最後に、「逮捕されて私は怒りと混乱と、そんな気持ちの中にいた。私が希美を殺すわけがない」などと話し、11月26日に結審しました。
12月23日の判決公判。
長野地裁は丸山被告に「懲役19年」の実刑判決を言い渡しました。
坂田正史裁判長は「被告以外の他者であるというのは空想的、偶然の一致は考えがたい。被告人が犯人でないならば、合理的に説明できない」「物盗り犯の犯行に見せたり、関係者の犯行に見せかけようとしたりしたもので、被告が犯人でないと認めるものではない」「不明瞭な経緯は被告人が犯人であるとすると合理的、間接的ではあるが被告人が犯人であるとすると評価できる」としました。
また量刑の理由について、裁判長は「不倫の女性と復縁を遂げようと被害者の殺人に及んだもので、身勝手な思惑に基づく冷酷かつ凶悪な犯行として相当厳しい非難に値する」「犯行後にも女性と密会していたことから、復縁交際をすることにためらったり、後悔した様子もない」「遺族は厳しい処罰感情を求めている」などとして、懲役19年と判断としたと説明しました。