女性との関係をめぐり提訴され、和解したことが明らかになった大阪府の岸和田市長。12月3日、議会で追及を受けた。
取材を進めると女性が訴えてきた市長からの被害の詳細が少しずつ明らかになってきた。
(※裁判での性被害に関する女性の詳細な陳述内容が含まれますので、フラッシュバックなどの恐れがある方はご注意ください)
■【動画で見る】「もう一人来るから待ってて」性被害で岸和田市長を訴えた女性 市長以外からの被害も女性は訴えていた
この記事の画像(9枚)岸和田市 永野耕平市長:裁判の内容に触れますのでお答えできません。和解後に僕から何か申し上げることはございません。
高比良正明市議:辞職など責任を果たすべきではないでしょうか?
永野耕平市長:反省すべきことはございますので、反省すべきは反省してしっかりと市民のために尽くしていきたい。
3日、岸和田市議会で開かれた全員協議会で、自身の女性問題に対する追及に「話せない」を繰り返した永野耕平市長(46)。
■「私はもう心身ともにボロボロです」と女性
女性の代理人 角崎恭子弁護士:私は本心では和解などしたくはありませんでした。この裁判でも判決をいただく選択肢もありましたが、私はもう心身ともにボロボロです。もうこれ以上被告と関わりたくありませんし、裁判を早く終わらたいという思いが強く湧くようになり、諦めたというのが実情です。
■和解内容を見た専門家「市長に非があったということを言ってますよ」
大阪地裁の和解調書では、市長から女性に対する解決金500万円の支払いや謝罪などについて取り決めがあったほか、次のように言及があった。
和解調書前文より:被告は優越的な立場にあって、両者の間には社会的な上下関係が自ずと形成されていたと認めるのが相当である。被告は公人であるとともに、配偶者を有する身であることも考慮すると、原告と性的関係を持つことはよくよく自制すべきであったとの非難を免れることはできない。
この和解内容について元検察官の亀井弁護士は…。
亀井正貴弁護士:これは市長に非があったということを言ってますよ。ただそれが法的な責任を伴うような行為かどうかについては触れてない」 「市長の要請を拒みにくい状況の下で性交が行われたということまで読み取れるので、そういう意味では、やってはいけない行為とまでは言っている。(一般的に)500万円は解決金としては高すぎるなと思います。市長側が負け側になってくるんだろうとは思います。
法律の専門家が指摘したのは裁判所の判断の“異例”さ。
■「モラルとして秘匿し続けるべきだと思います」と市長
しかし、市長は取材に対して…。
岸和田市 永野耕平市長 11月28日:性加害という事実はございません。僕は自分に非があるとは思っていません。
自分に非はなく、訴訟の内容についてはこれまでの経緯から明らかにすべきではないと主張。
しかし、和解内容についての口外を禁止する条項は裁判所の判断によってつけられていない。
また不貞行為についても…。
(Qこれまで不貞行為をしたことはありますか?不倫関係だったことはありますか?)
岸和田市 永野耕平市長 11月28日:ないです。
はっきりと否定した。
12月2日の会見では記者から、「“市長”という立場だからこそ社会性があり説明する責任があるのでは?」と伝えられると…。
岸和田市 永野耕平市長 12月2日:だからこういう風に対応させてもらっています。秘匿している内容で、裁判として秘匿してきた内容を秘匿し続けているだけですから、僕は。モラルとして秘匿し続けるべきだと思います。「秘匿」という姿勢を貫き続ける市長。
■「もう一人来るから待ってて」「『またしてください』と言わされた」
一方、市長側、女性側双方の取材を進めると、裁判の中で当事者同士が争った「事案の詳細」が明らかになってきた。
原告女性:シャワーのあと、ベッドに横にならされて布団をかぶされた。耳にかける薄いもので目隠しされた。誰かが部屋に入ってくるのが分かったので『いやや』と言った。
代理人弁護士:その人と性行為をさせられた後、被告から何か言われましたか?
原告女性:もう一人来るから待ってて」と言われた。
代理人弁護士:あなたは何か言わされましたか?
原告女性:『またしてください』と言わされた」 市長だけでなく「第三者」からの性被害を訴えた女性側。 この日の裁判を傍聴したジャーナリストは…。
裁判を傍聴したジャーナリスト:声がところどころ震えていたり、声が細くなったりする場面があって。市長は自分との性行為については同意がある行為だったし、交際関係だったというふうに言っていたけど、第三者からの加害行為については、『絶対にない』と強く否認していて、『心外です』というふうに繰り返していた。
3日、市長に直接この件を問うと…。
岸和田市 永野耕平市長:内容については答えられないですけど、そんなこともしあったらひどいですね。
(Qここまではそうだけど、ここは違うという点は?)
岸和田市 永野耕平市長:ここは違うとか、そうやとかいう話は僕の方からはしませんが、今聞いたような話はおぞましい。それは、おぞましいなと今思いますし、そんな内容について聞くのも嫌ですよね。
■『歴史ある岸和田の名に泥を塗った』議員たちから厳しい追及
3日の議会では、議員たちからさまざまな観点での厳しい指摘があった。
海老原友子市議:責任がない、悪いことしていない、なのに和解金500万円を支払った。(女性と)付き合っていた状態だとおっしゃっていますが、それはすごく矛盾することでは?
岸和田市 永野耕平市長:裁判の中身についてはお答えできないです。
海老原友子市議:女性に対して謝罪は?
岸和田市 永野耕平市長:僕に責任があることは認められていませんので、それについて謝罪はしておりません。
井舎英生市議:『歴史ある岸和田の名に泥を塗った』、(市民から)このような反響が多いが?
岸和田市 永野耕平市長:僕は法に触れるような言語道断の行い、そんなことは断じてございませんので。
市長の問題に対する向き合い方を、岸和田市民はどう感じるのか。
■もっとしっかりと説明する責任があるのでは
犬山紙子さん:性被害の詳細の話があったので見てて、しんどくなった方は無理なさらないでほしいなというのを思いました。事実がどうかっていうのは、私には判断できないんですけれども、PTSDのある中でこうやって裁判されることは本当に心身ともにお辛い頑張られたんだなという風に感じました。
(市長は)裁判だから話せないっていう話になってるんですけれども、和解調書の前文もありますし、これをもとに本当なのかっていうのを聞くのは、市民にはそういった権利もあると思いますし、市長という立場ですよね。市長の品性っていうところはもっとしっかりと説明する責任があるんじゃないかという風に感じました。
■これまでの経緯は
このような前文があること自体が異例であるという状況になっているが、改めてこれまでの経緯を振り返っていきたい。
6月に性行為を強要されてから、継続して性的加害行為を受けたということだ。
そして2021年春になり、精神状態の悪化、そして休職に至った。
2021年7月、警察に被害届を提出するが、12月になり不起訴。
2022年6月、およそ2280万円の賠償を求め、提訴。
先月、解決金500万円などで和解をすることになった。
5年以上の間、この問題に女性側は向き合っていたということになる。
一方で、岸和田市長は現在2期目、妻子ある方だ。
性加害はしていない。自分に非があると思っていない。不貞行為もしていないと発言した。
一方で、被害を訴える女性はこのように話している。
被害を訴える女性のコメント:「本心では和解などしたくはありませんでしたが、長い期間戦ってきました。私はもう心身ともにボロボロです。裁判上の和解をしたからと言って、帰国を許したわけではありません。今でも本当に悔しいです」
こういった思いの中で、先月解決金500万円などで和解ということになった。
■「和解調書に前文がつくのは非常に珍しい」
前明石市長 泉房穂さん:ポイントとしては、和解の文書に関しては、双方がそれをよしとしてるわけですから。和解調書に前文がつくのは非常に珍しいと思います。 加えて、和解調書に『優越的な立場』『上下関係』という立場が書かれてるわけですから。『非難を免れることはできない』とまで書かれていて、実質的にはもう敗訴判決に等しいような和解調書だと思います。この文書については、市長さんもこれでよしとした、そこは事実として確定したと思いますから。 500万円という和解金は一般的に見るとかなりの金額ですから。全面敗訴に近い金額だと私は思います。
法的責任がないので説明する必要はないと市長は言っているが、自治体のトップとしてどう感じるか?
前明石市長 泉房穂さん:いわゆる公人、首長という立場ですから、法律違反でなくても政治的責任とか社会的責任がありますから、有権者の信頼なくして、市政運営はできるかという論点は残っていると私は思いますけどね。
関西テレビ・神崎博報道デスク:和解に関することは秘匿という言い分も分かるかもしれないですけども、泉さんがおっしゃるように公職にある市長、妻子ある市長が不貞行為はないって言っていた。そもそも不貞行為の定義っていうのは、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことが定義だと思うんですけど、そこも否定するのかというところを含めて、道義的責任ですね。それは政治家としてあると思いますし、会見を開いて、説明される必要があるのかなと私は思いますけどね。
被害を訴える女性がいて、裁判所から市長に対して厳しい指摘があった。市民の皆さんはどう受け止めるのか。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年12月3日放送)