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- Z世代の若者は、まず自分の人生があって、その人生に仕事が合っているかどうかを考えている。
- 上の世代の中にも、同じようにありたいと考える人たちがいる。
- Z世代は、皆が同じようにバランスと充実感を求めるべきだと考えている。
キミ・カネシナさん(24)にはフルタイムの仕事がある —— 自分の人生だ。
9時から5時まで、マーケティングの仕事もしている。ただ、3月にTikTokで5万以上の「いいね」をもらったように、カネシナさんは「フルタイムの仕事が実はパートタイムの仕事で、人生が自分にとってのフルタイムの仕事だと考えている」という。
TikTokのこうしたトレンドを友人から聞いた時、カネシナさんはバーンアウト(燃え尽き)に悩まされていたとInsiderに語った。周りが次々と仕事を辞めていくのを目の当たりにし、カネシナさんは考え方を変えようと決め、それを投稿したのだという。30万人以上が彼女の動画を見た。
現時点で26歳以下のZ世代は、2025年までにアメリカの労働力の約27%を占めるようになると見込まれている。いわゆる"大退職"をリードしているのもこの世代で、彼らは昔ながらの仕事のあり方に幻滅している。仕事は"9時~5時"という形である必要はないと考えているし、仕事は必要な時間内に終わらせて、あとは自分のための時間だと考えている。
そして上の世代は、Z世代がノートパソコンを閉じ、リモートで働くために海外へ移住し、自分の人生をフルタイムの仕事として扱うのを見て、うらやましく思っている。
上の世代は「非常に不健全な働き方」を続けると期待されている?
7年前、X世代のサラ・スチュワートさん(49)はニューヨークのオフィスでの仕事を辞め、フリーランスのライターとしてリモートワークを始めた。スチュワートさんはオフィスでの仕事に常に「すり減らされて」いて、42歳~57歳の自分たちの世代は26歳~41歳のミレニアル世代同様、「非常に不健全な働き方」を続けると期待されているように感じたと話している。
オフィスという仕組みが従業員のメンタルヘルスのプラスにならず、ジムに行くために1日のどこかで1時間外に出ると仕事をさぼっているかのように感じるなんて「バカげている」と思ったと、スチュワートさんは言う。
「もっと健康的なワーク・ライフ・バランスのあり方を模索してみたかったんです」
ただ、Z世代がどのようにして仕事のペースを落とし、メンタルヘルス休暇を取り、上司に仕事を委ねているのか、記事を読み始めるまでスチュワートさんは職場での公私のけじめに関する「具体的な対策」が分からなかったと語った。スチュワートさんはZ世代の仕事に対する価値観にひどく感心し、自分はなぜそれをうらやましく思うのか、CNNに意見記事を書いた。
スチュワートさんは、自分の同世代や上の世代がZ世代のあり方をポジティブな進歩と捉え、自分たちも仕事に対する伝統的な思い込みに対してもっと声をあげればよかったと言っているのを耳にしたと話している。
「嫉妬するX世代」を自称するケイン・レティシアさん(45)もその1人だ。
「学校へ行き、大学へ進み、家族を持ち… と、わたしたちの世代に対する期待は数多くありました。単純に誰もがやらなければならない、クリアしなければならないことだったんです」とレティシアさんは語った。
ただ、中学校の英語教師として教えているうちに、ここ数年、子どもたちの"異変"に気付いたという。大学を卒業すると、彼らは旅行に積極的に出かけたり、自分の興味・関心にあった仕事を探していた。
こうした様子を目の当たりにして、レティシアさんは自分も若い頃にもっといろいろとやれば良かったと感じたという。「ただ、自分は彼らがそうするのを見て、単にサポートしたいと思っているんです」とレティシアさんは話している。
このような議論の多くは確かに、ある一定の働き方をしている人々の間で起きている —— パソコンさえあれば大体の仕事ができるホワイトカラーのいわゆる"知識労働者"と呼ばれる人々だ。ただ、低賃金の労働者も抗議の声を上げている。この1年あまり、彼らは記録的な勢いで仕事を辞め、これまでの労働規範に抵抗している。それが一部企業の深刻な人手不足につながった。
ただ、Insiderでも以前報じたように、こうした人手不足の中には、ホワイトカラーの労働者に与えられているのと同じ福利厚生をブルーカラーの労働者に提供することで緩和できるケースもある。学生ローンの返済やメンタルヘルスの支援といった福利厚生は、Z世代の若者が自分たちの会社に対する忠誠心に大きな影響を与えると答えているものだ。
全てがポジティブな反応ではない
ヤシの木の前で撮影されたエイブリー・マンデーさん(21)のTikTokの投稿には、5万以上の「いいね」がついている。画面上には「ベビーブーム世代は、わたしが天国で仕事ができること、有給休暇が無限にあること、上司はわたしを細かく管理せず、わたしたちのメンタルヘルスを大事にしてくれること、会社はわたしたちのことをちゃんと気にかけてくれること、自宅で仕事ができること、会社がSpotifyやジムの費用を払ってくれることに怒ってる」と書かれている。
エイブリー・マンデーさん。
Courtesy of Avery Monday
「学校を卒業して、わたしは死ぬまでずっとすり減り続けるんだろうなといった感覚を持って就職しました」とインフルエンサー・マーケティングの部長を務めるマンデーさんはInsiderに語った。
「ただ、仕事を通して、わたしの同僚、上司、わたし自身もそれは違う、そうじゃなくていいと気付いたんです」
マンデーさんのTikTokの投稿は"風刺"だったが、X世代やベビーブーム世代からは批判を受けたという。その際、「怠け者」という言葉をしばしばぶつけられたと語った。
これは"ガールボス"や"シリコンバレーの天才"崇拝の全盛期に、恐る恐る仕事に求めるものを増やし始めたミレニアル世代にとっては、聞き覚えがあるかもしれない。彼らはバカにされ、経済的に苦しいのも自己責任だと非難された。
「ミレニアル世代はいわれのない非難を受けたと、わたしは思っています」とレティシアさんは語った。
「常に『ああ、これだからミレニアル世代は!』という感じでした」
ただ、そうした会話も「はっきりと意見を言う」Z世代とともに進化してきたという。
例えばスチュワートさんの場合、友人たちとメールで「Z世代の若者について正直にぼやいたり」、彼らが謳歌している自由や柔軟性について話し合うことがあるという。
「わたしたちが声をひそめて話していたようなこと、仲間内で話していたようなこと、仕事帰りに飲みながら話していたようなことを彼らは職場に持ち込んでいるんです」とスチュワートさんは語った。
上の世代も仲間に入れると、マンデーさんは言う。
「社会として、特にアメリカでは、わたしたちは仕事が人生という考え方にあまりにも慣れ切っています。1日中働いて、食べて、寝て… それを週に5日繰り返しています」とマンデーさんは指摘した。
あらゆる世代で一歩引いて、仕事が全てではないこと、仕事が自分たちに一番の喜びをもたらしてくれるとは限らないことに気付く人が増えてほしいとマンデーさんは考えているという。
「上の世代でもそれを受け入れられれば、もっと充実感が得られるし、趣味を持ったり、仕事以外の何かができるようになるでしょう」
「彼らもいつか仲間に加わって、楽しんでくれることがわたしの願いです。全ての世代が自分に合ったワーク・ライフ・バランスを手に入れてしかるべきなのですから」
[原文:Gen Z treats life as a full-time job and work as a side gig. Other generations are jealous.]
(翻訳、編集:山口佳美)