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妻が図書館でどうも名作らしいといって蜜の味を借りてきたので一緒に観た。
当然、蜜の味(一風堂のカバーしか知らんが、と思ったら一風堂はカバーしてなさそうだから、別のバージョンのようだ)が主題歌かと思ったら全然違って船の童謡で始まる。
孤立した(というのは、母親がすぐに家賃滞納するために一か所に留まることができないからだ)少女、多分17歳くらいが、酒場の歌手の母(多分同年齢で出産と考えると30後半だが、アラフォーらしい。妻は60代だと思ったらしい)とあまり楽しくない生活を送っている。
引っ越し先までのバスで知り合った青年と愛し合うのだが、彼は出航してしまう。だが、別に彼女はどうでも良さそうだ。孤立が続いているため、他者とコミュニケーションが取れないし、理解ができないように見える。
母親はファンか、または興行仲間か、の青年(とはいえ30代)から求婚されて結婚することにするのだが、娘が(他者とコミュニケーションが取れないゆえに)常に不愉快なことしか口にせず、態度も悪過ぎるので、青年は娘とは一緒に暮らせないと言う。
一方、娘は良い機会とばかりに学校をやめてそのまま家出する。
靴屋で働いていると、おしゃれな青年(こちらは良くて20代、10代後半かも)が靴を買いに来る。パレードを観に行ったところで再会し、家を追い出されて(男を連れ込んだので家主から追い出された)行く当てが無い青年と同棲することにする。
・最初の母娘の引っ越しは、母親が男を連れ込んだことが家主を怒らせる原因で、どうも、逆のパターン(男が女を連れ込む)であれば、家主は気にしないのかなぁ? と思った。
二人の楽しい生活が始まる。初めて、彼女は他人とのコミュニケーションを学び始める。
青年は天使のようなやつで、料理も作れて工作もできるので、だだっ広いスタジオのような部屋が少しずつ住みやすくなっていく。
・彼女は近所の子供たちとはコミュニケーションが取れるのが象徴的。
妊娠発覚。
動揺しまくる彼女に対して、青年は保健所(?)に行って赤ちゃん訓練のための人形を借りてきたり、一生懸命になる。ついには子供のために結婚しようとまで言い出す。
・赤ちゃん訓練の人形といえば、保健所の研修で風呂から上げたあと、つい水をきろうと振って怒られたのを思い出した。
彼女は黒人の子供が生まれることや、その他もろもろから情緒が安定せず借りてきた人形を投げ捨てたり荒れるのだが、胎児に蹴られて初めて実感する。この墓地(死と誕生の合わせ技を見せたかったのかな)での一連のシーンは美しい。
その後二人はうまくやれそうなのだが、自分だけで良いのか?と不安になった青年は、彼女の母親の元を訪れて手助けを頼む。夫は頑として娘のことを拒み、青年のことをお嬢さんと呼び続けて侮辱しまくる。
結局、母親は夫が運転する車で家にやってくる。
当然のように喧嘩別れになるのだが、一方、母親の結婚相手はさらに不愉快を爆発させる。
二人に戻ると、青年は単肌着の型紙を作ったりして、仲良し生活が戻る。
最後、青年が焼きあがったケーキを用意しているところに、母親が娘の家に転がり込んでくる。夫が浮気したから出てきたと言う。
ゆりかご(コットと言っていた)は買ったの? と母親が訪ねる。娘が青年と買ったゆりかごを見せると、そんなのだめだと頭から否定する。
娘がいないところで青年に対して、ゆりかごを持って家から出て行けと命令する。
そもそも自分が母親を呼んだのが原因だからか、そのほうが良いという判断なのか、青年は置手紙を残して、ゆりかごを持ち荷物をまとめて立ち去る。
ガイフォークスナイトで子供たちがドラム缶の炎を囲んで歌って踊るのを物陰から青年は眺める。行く当てないよな。
母親が追い出したことを知った娘が出て来て呼ぶ。
物陰から出て行こうかと迷っていると母親がやってきて彼女を家へ連れ戻す。
劇終
船員(コック)とのデートシーンや、青年との生活シーンが実に楽しそうで可愛らしく微笑ましく、一方の母親(この人が娘を愛しているのは端々からわからせるのだが、娘と同じくそれを表現することができない)とのぎくしゃく、母親の婚約者ー結婚相手に対する実に不愉快な態度、ほとんど素人(大学で演劇を学んで一通りシェークスピアをやったタイプではなく、どうも当時の英国では画期的な単なる労働者階級)同然らしいのだが、主役のリタ・トゥシンハムが良い味を出している。
それにしても、青年(テキスタイルデザイン勉強中の学生)が良い人過ぎる。苦労しまくったのだなぁ(と、書かれていないコンテキストの見通しの良さは良い映画)。
靴屋で働いている一連のシーンも良い。最初の客は散々靴をとっかえひっかえした挙句に品揃えが悪いと捨て台詞を吐いて去って行く。ああいう客もいるよと店主が彼女を慰めると、でも売れなかったし……と言う。店主は所用があって出かける。そこに青年がショーウィンドウ越しにこちらを見ている(が、彼女は気付かない)。青年が店に入って来る。なんか煮え切らないのだが、彼女はイタリア製の18シリング(今ならお得)を勧めて売ることに成功する。その靴をパレードの人込みの中で見つけて声をかける。
冒頭の街の紹介のようなシーン(引っ越しのためバスで移動中)が、銅像中心に複数のショットから構成されているにも関わらず、大人はわかってくれないの冒頭のような雰囲気を感じた。
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この作家は最初ナックの監督かと思ったが、女優はナックに出て来たらしいが監督は違った。それで初見かと思ったら、公開時に観たホテルニューハンプシャーもこの人の作品だった。
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