実態が伴わないにもかかわらず、環境配慮を印象付けようとする「グリーンウォッシュ」。サステナビリティの情報開示が求められる一方で、グリーンウォッシュに対する取り締まりが厳しくなっている。各国では法整備が進み、訴訟も相次ぐ。(オルタナ副編集長・吉田 広子、北村 佳代子)
「EUでは、グリーンウォッシュに対する規制はこれからますます厳しくなるだろう。ただ、それは悪いことではない。企業はより良い存在になる必要があり、同じルールがあることで、公平な競争環境が保たれるからだ」
こう話すのは、フィンランドの航空会社フィンエアーのエヴェリーナ・フーッレ・サステナビリティ担当シニアバイスプレジデント(SVP)だ。
フィンエアーは24年11月、33年までに炭素排出量を原単位あたり34・5%(23年比)削減するという目標を設定した。SAF(持続可能な航空燃料)利用の増加や燃費効率の向上、機材の更新などで排出量を減らし、カーボンオフセットには頼らない計画だ。
この中期目標は、国際的イニシアティブ「SBTi(サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアティブ)」から、科学的な根拠に基づく目標だと認定された。長期目標としては「2050年までにネットゼロ」を掲げる。
エヴェリーナSVPは、「企業は正しい行動を取り、透明性のある情報開示に努めなければならない。だからこそ、第三者であるSBTの認定を受けたことに意味がある」と語った。
■客観的根拠ない 環境主張禁止へ
「グリーンウォッシュ/グリーンウォッシング」とは、英語で「ごまかす」「欠点を隠して良く見せる」という意味の「ホワイトウォッシュ」と、「グリーン」(環境)を組み合わせた造語だ。
グリーンウォッシュの問題点は、消費者や投資家などが環境に配慮されていると思い込み、適切な選択肢を選べず、結果的に環境問題が深刻化してしまうことにある。
欧州連合(EU)は、世界に先行してグリーンウォッシュを取り締まるための法整備を進める。グリーンウォッシュを禁止する「EUグリーンクレーム(環境主張)指令案」は24年2月、EU理事会で採択された。
EUグリーンクレーム指令案は、「グリーン移行に向けた消費者のエンパワーメントに関する指令案」を補完するものとして、欧州委員会が23年3月に発表した。これら指令案を実行するために、不公正取引方法指令や消費者権利指令などを改正する。
施行後、加盟国で国内法化を経て、各国で適用される。27年から順次、適用が開始する見込みだ。
これにより、客観的な根拠がないまま、「環境に優しい」「グリーン」といった環境訴求を行うことを禁止する。
カーボンオフセットによって、製品が環境に与える影響について、「中立的」「低減」「良い影響を与える」といった主張をすることも禁ずる。
EU域外の企業でも、域内の年間売上高4億5千万ユーロ(約710億円)超の企業は対象になる。オーストラリアや韓国でも、グリーンウォッシュで消費者を欺いた企業に罰金を科す法制度化が進む。
世界では、グリーンウォッシュを巡る訴訟も相次ぐ。
米カリフォルニア州の消費者らは23年5月、米デルタ航空の「世界初のカーボンニュートラルの航空会社になる」という表現がグリーンウォッシュに当たるとして、集団訴訟を起こした。
豪州連邦裁判所は24年8月、豪マーサー年金基金に対し、約740万ドル(約11億円)の罰金の支払いを命じた。サステナブルを謳う投資商品が化石燃料を除外していないとして、グリーンウォッシュだと認定した。
オランダの裁判所は24年3月、「サステナブルなフライト」と謳ったKLMオランダ航空の主張は違法との判決を下した。
欧州委員会は24年4月、航空会社20社に対して、グリーンウォッシュに対する調査を開始した。具体的な航空会社名は挙げていないが、ベルギー、オランダ、ノルウェー、スペインの規制当局が動いた。
イタリア競争当局は24年10月、中国発のファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」にグリーンウォッシュの疑いがあるとして調査を開始した。
ウェブサイトで「資源循環」などのサステナビリティに関する取り組みを紹介する。しかし、イタリア競争当局は、これらを裏付ける情報が欠けていることなどから、消費者を欺く可能性があるとした。
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