(CNN) ロシアと米国の軍当局者が直接顔を合わせる希少な会談が先週行われ、普段は冷静なロシア側の将軍が感情を「爆発」させる一幕があった。米軍が会談内容をまとめた非公開文書をCNNが確認した。出席した米国側は、ロシア軍が士気の面でより大きな問題を抱えていることを「暴露する瞬間」だったとの見方を示している。
文書には、会談に同席した米国の駐在武官2人の見方やその場で見聞きしたことに対する印象が記されている。ここには、当該のロシア人将軍の振る舞いについて明確な説明となるような記載はない。機密に関わる会談の文書を軍や諜報(ちょうほう)機関が公にすることは決してない。当局者らがそれらを精査し、相手側の思考や意図についての手がかりを探ろうとするためだ。
今回の会談は、モスクワにあるロシア国防省で行われた。2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、ロシアと米国の国防当局者が対面で話し合う珍しい機会となった。文書は会談が緊張感に包まれたものだったと説明。ロシア側には明らかにストレスを感じている兆候が見られたとした。
特筆されていたのはロシア軍のエフゲニー・イリン少将の態度だ。同氏はロシア軍参謀本部の幹部として、長く米国の当局者の対応に当たってきた。
会談が終了する際、米国の駐在武官の1人が、ウクライナにルーツを持つイリン氏の家族について「何気なく尋ねた」ところ、「冷静だった同氏の顔色は突然紅潮し、動揺した表情を浮かべた」という。文書によると、イリン氏は質問に対し、自身がドニプロペトロフスクで生まれたと回答。その後家族とドネツクに移り、現地の学校に通ったと述べた。
続いてイリン氏はウクライナの現在の状況について、「悲惨であり、自分もそのことで大変に意気消沈している」と付け加えた。そのまま握手を交わすことなく立ち去ったと、文書は伝えている。
米国側が感じたところによれば、イリン氏は何とか思いとどまり、自身の家族への残虐行為について米国とウクライナを非難するのをこらえた様子だったという。米国側がそのような結論に至った具体的な理由は不明だが、武官の1人は「燃えるような彼の眼差しと、狼狽(ろうばい)した様子を見て背筋が凍った」と述べた。
文書によれば、両武官とも、ロシア側が公式の会談でこれほど感情を爆発させたのは見たことがないと報告している。
こうした要約からは、イリン氏が上記の反応を示した正確な理由は分からない。それでも駐在武官2人は、ロシア軍の士気に関する問題を示唆している可能性があると分析。それが「前線の兵士に限ったものでないのは明らかだ」と結論付けている。
また米国側は、会談の最中からイリン氏は冷静さを失い始めていたとも報告。きっかけは米国側がウクライナの状況を危機と呼んだ場面で、この時同氏はすかさずこの表現を「修正、撤回させた」としている。
会談中、どんな代償を払ってでも勝つというロシアの戦略から逸脱する見解をイリン氏が示すことはなかった。米側の2人は、こうした同氏の様子から「明らかに現状を嘆いているものの、怒りのやり場がどこにもない。ロシア政府が掲げる言説に沿って行動するしかない」のがうかがえたと語った。
文書はまた、この会談が戦争に対するロシア側の姿勢の硬化や、ロシア軍将校が他に選択肢がないため命令の実行に迫られている様子を強調するものとなった可能性について、米国側は軽視しないとも記述した。
この会談が開かれた理由や背景は不明。CNNは会談内容を伝える追加の文書が存在するのかどうか把握していない。今回の文書には当該の駐在武官らの氏名は含まれておらず、CNNは両者を特定できていない。米国防総省並びに米国務省はコメントを控えた。CNNはロシア国防省にコメントを求めている。