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英国の10代少年、一夏の恋で禁錮1年に直面した理由 ドバイ

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ドバイはUAE最大の都市の一つで、人気観光地だ/Christopher Pike/Bloomberg/Getty Images

ドバイはUAE最大の都市の一つで、人気観光地だ/Christopher Pike/Bloomberg/Getty Images

(CNN) 休暇中の恋愛はラブ・コメや女性向け小説のネタだが、マーカス・ファカナさん(18)にとってはそうではない。ファカナさんは夏の情事で禁錮1年の判決に直面しているのだ。

英ロンドン出身で大工見習いのファカナさんは9月、家族とアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで休暇を過ごしていた際、ホテルで同じ英国人の10代と出会った。ふたりは恋愛関係になり、性的関係を持った。

ふたりはロンドンでも関係を続けるつもりだったが、17歳の少女が英国に戻ると、母親が娘とファカナさんとの関係に気づき、ドバイ警察にファカナさんのことを通報した。

ファカナさんはCNNに寄せた書面で「とても傷ついた。理由も告げられずにホテルから連行された。両親を含め、誰にも電話することを許されなかった」と語った。この書面は、英国を拠点とする法律顧問および人権保護の団体でファカナさんに法的な助言を行う「ディテインド・イン・ドバイ」が共有した。「すべてがアラビア語で、いつ出られるか分からなかった。弁護士や大使館、両親に会うこともできなかった」

UAEの性的同意年齢は18歳。ファカナさんと交際していた当時、少女は未成年に該当した。

ファカナさんは「法律を破るつもりはなかったし、彼女があと1カ月で18歳になることも知らなかった」。同じ学年だったので年齢は気にしなかったという。

「現代的な」観光地

ドバイは西欧の旅行者に人気がある。同国は昨年、過去最高となる1715万人の観光客を海外から迎えた。8700万人の乗客が利用したドバイ国際空港は利用者数で世界第2位にランクインした。

しかし、ほとんどの旅行者は、権威主義国家であるドバイの法制度がどのような違いを持つのかに気づいていない。同国の法制度は民法とシャリーア法の両方に基づいている。

ディテインド・イン・ドバイの最高経営責任者(CEO)兼創設者であるラダ・スターリング氏はドバイについて、「現代的で自由な観光地」として宣伝されているが、あまり知られていない法律やその恣意(しい)的な適用に観光客が遭遇すると「観光客は困惑する」可能性があると話す。

ファカナさんのケースは、この街でトラブルに見舞われた外国人の新たな事例にすぎない。

ドバイで禁錮1年を言い渡されたマーカス・ファカナさん(18)=11日/Detained in Dubai/PA
ドバイで禁錮1年を言い渡されたマーカス・ファカナさん(18)=11日/Detained in Dubai/PA

恋愛関係、アルコール、オンライン活動に関する法律は、観光客が最もよく遭遇する問題の一部だ。ドバイでは認可された会場での飲酒は合法で、パーティー文化は「広く浸透している」が、飲酒していることが公共の場で見つかった場合、公共の場での酩酊(めいてい)または無許可飲酒で起訴される可能性があるという。

「会場を出てタクシーに乗り、家に帰ることが違法だとは誰も思わないだろうが、会場の外にいる間は法律に違反している」(スターリング氏)

混乱を招くもう一つの領域は、ハッキングやテロから、悪意のあるコメントや慈善活動の宣伝までオンライン活動を網羅する包括的なサイバー犯罪法だ。これらの法律は、コミュニケーションが非公開か公開かを問わず、遡及(そきゅう)的かつ国際的に適用されるため、UAEへの渡航前にオンラインで共有したものが入国後の起訴につながる可能性があるという。

スターリング氏は同国を訪れる観光客のほぼ100%が法を犯していると言えると話す。39歳のアイルランド人は今年、「脅迫的な絵文字」を送ったとしてドバイで3カ月間拘束され、北アイルランドの男性は否定的なグーグルレビューを理由に2カ月間拘束された。

「あなたを壊すこともある」

UAEは外国人受刑者の割合が世界でも特に高い国の一つだが、人口の約90%が外国人であることを考えると驚くことではない。スターリング氏によると、UAEで拘束された人のほとんどは刑務所には収監されない。

ドバイを拠点とする法律事務所の幹部アザーン・サラディン氏は、これらの法律の厳格な適用は公共の安全と治安を維持するために必要だと語る。「法律は国民、または国外から来た人々を保護することを意図している」。

サラディン氏はこの国の犯罪率の低さに言及。警察の公式統計によると、ドバイの23年の犯罪件数は10万人当たりわずか24.6件だった。まったく異なる比率で測定されてはいるものの英国の1000人当たり84件という割合よりも大幅に低い。

サラディン氏は「私が訪れた国はすべて法律を施行している」とし、無知は言い訳にはならず、法律を把握するのは各旅行者の責任だと述べた。ファカナさんのケースでは「少女が性的同意年齢を下回っており、両親が告訴したことは明らかだ」と断じた。

一方、スターマー英首相の報道官は、ファカナさん一家にとって非常に苦痛な状況であることを認識しているとし、ファカナさんの家族や法律顧問のチームと定期的に連絡を取っていると述べた。

帰国後にメディアの取材に応じるトリ・トウェイさん=7月11日/David Young/PA
帰国後にメディアの取材に応じるトリ・トウェイさん=7月11日/David Young/PA

UAEの法制度に困惑している外国人は他にもいる。

ドバイを拠点とするエミレーツ航空の客室乗務員でアイルランド人のトリ・トウェイさん(28)は今年7月、自殺未遂と飲酒の罪で禁錮6カ月の判決に直面した。

ドバイに1年間住んでいたトウェイさんは、同棲を始めてからパートナーが暴力を振るうようになったと語る。家庭内暴力を警察に通報したところ、パートナーは報復としてトウェイさんを提訴。その結果、トウェイさんは働くことも出国することもできない渡航禁止処分を受けた。

トウェイさんはCNNの電話取材に対し、「警察は、私が申し立てを取り下げれば渡航禁止は解除されると言っていた」ものの、実現しなかったと語った。行き場を失い、パートナーのもとに戻るほかなかったという。

今年5月に自殺を図った後、トウェイさんは警察署で自殺未遂の罪に問われた。UAEでは2020年に自殺を非犯罪化するとの発表が行われたにもかかわらず、自殺は違法とされている。

トウェイさんは起訴内容を知らされていなかったため、自分で調べなければならなかったうえ、法的代理人を見つけるのにも苦労した。弁護士は前払いで2万ディルハム(約86万円)を払わなければ、相談に乗ることすらしないという。

トウェイさんは最終的にディテインド・イン・ドバイから法的助言を受けた。また、アイルランド政府からの圧力が強まり、メディアからの注目も高まったことで、2カ月の渡航禁止が解除。起訴も取り下げられ、帰国がかなった。

この出来事の前、トウェイさんはドバイで幸せだったと言い、後にした街と文化を今でもとても愛している。「これはただの制度であり、それが引き起こすストレスだ。すべてを失う可能性があるので、あなたを壊すこともある」

不確かな未来

一方、ファカナさんの両親は仕事のため英国に戻らなければならず、ファカナさんはひとりドバイに残され、不安で眠れない日々を過ごしている。

スターリング氏はファカナさんの事案について軽罪を扱う裁判所で審理されるべきだったと考えている。警察が報告書でファカナさんの年齢を19歳、国籍をパキスタンと誤って記載したために、より厳しい判決が下された可能性が高いという。

ファカナさんと弁護団は現在、人権侵害や拷問の記録があるドバイの刑務所での1年の刑期について控訴するかどうかを検討しているが、検察側がさらに厳しい判決を求める可能性もある。

ファカナさんは罰金と国外追放処分の可能性もあると聞き、それを嘆願しているという。

「びっくりした。今が人生で最もストレスに満ちた時期だ」(ファカナさん)

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